03 お姉様編 おまけ


 華子は今、目の前にいるこの義姉の命令で、コーヒーを淹れに行ってしまった。

 最悪だ。


「幸人くん」

「何でしょう」


 義姉の口からは今度はどんな言葉が出てくるだろうか。



「華に手を出したら、殺すわよ?」




 ほら、またいつもの忠告だ。




 両親が海外におり、長い間姉妹二人で生活してきたせいか、この義姉は結構なシスコンである。しかも、それを華子自身には気付かせないようにしている。そして周りからガードしていくのだ。


「あちらから手を出してきた場合は?」

「あの子がそんなことするはずないわよ」


 華子のことは全てわかっているといった口調だ。

 中々手強い。


「まあ、いいわ。それよりも――」


 義姉――恵子は目を細めた。


「華子に変な虫付けるんじゃないわよ」


 それは、幸人に虫除け役をしろ、という意味だ。

 しっかり者だな、と幸人はため息を吐く。


「コーヒー淹れたけど」


 いいときに華子が帰ってきた。助かった。これ以上この義姉の相手をするのはごめんだ。

 恵子ももう用が済んだのだろう。立ち上がってさっさと玄関へ行く。


「また来るわね」


 一瞬だけこちらをにやりと見て、華子へとけるような笑みを贈る。







 とりあえず、目下の敵はこの義姉らしい。



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