三、夏 その2

 夏の暑くて寝苦しい夜は広河原へ行くといい。美山まで行けたらもっといい。


 京都の夏は夜でも暑いです。三方を山に囲まれてるので熱が逃げないですね。特に南風の日は最悪です。


 なかなか寝付けない暑い夜は、涼を求めて山へ行きます。ただ夜なので充分に気を付けて走りましょう。

 今日は少し大きめのバイクがいいかな。オフロードのバイクも良いかも。きつい勾配のコーナーが結構あるので、私はトルクのあるVFR800Fで行きますね。


 集合場所は、京都市北区の地質学的にも生物学的にも貴重な深泥池の児童公園前にします。

 もうここへ来るだけで本当は涼しくなります。幽霊が出るとか見たとか、池の中から誰かが覗いてるだとか、池から手が出てたとか、いろんな噂を聞きます。

 怖いので直ぐに出発したいのですが、今日はちょっと長い距離を走りますので公園のトイレを借りて用をたしておきましょう。

 因みに深泥池の行き方は、北山通りを「京都府立総合資料館」や「京都コンサートホール」がある交差点(地下鉄北山駅)を北に700メートル程行くと着きます。


 では出発です。公園前から西に進み、交差点(五叉路)の「愛宕大明神」の灯籠前を右(北)に狭い府道40号線を走って行きます。この辺は住宅地なので静かに走ります。

 北に進んで大きな府道106号線とのT字路に出たら左です。京都産業大学の裏手のT字路に出たら、今度は右です。どんどん北へ北へ進みます。

 下鴨警察署の市原交番を過ぎたら、信号のある大きな交差点を鞍馬方面へ右折します。ここからは、「二、夏 その1」で走った道です。道なりにひと先ず花背峠まで行って下さい。


 花背峠で休憩です。夜ですが夜景も何も見えません。夜景は後で見ましょう。ただ、星が若干綺麗に見えます。

 休憩が終わったら次は下りです。大布施の桂川の橋を越えたT字路まで進みます。「二、夏 その1」では左に曲りましたが、今回は右折します。ここからが今回のメインステージの府道38号線の走行になります。


 花背駐在所の横を過ぎ、道なりにどんどん進みます。橋を3つ渡り右カーブを過ぎると、この辺から「広河原」になります。標高は450メートル位ですが、周りは山と森林と川ですので空気もかなりひんやりしてきます。

 左手の桂川は水も綺麗ですし河原に下りられる所もあって、そこで足を浸けると結構冷たいです。


 桂川に沿った道は夜中では殆ど交通量がありませんが、慎重に走りましょう。突然、動物が飛び出して来るからです。イタチの様な動物を私は何度か引きそうになりました。闇夜に光る動物の目でびっくりして操作を誤り、転倒ということもありえます。涼しい風を感じながらゆっくり走りたいですね。


 京都バスの「広河原バス待機場」という空き地が右に見え、暫く行くと左手に広河原スキー場(隠れてて判りにくい)が見えてきたら、ここからは連続する登りの急なコーナーになります。落ち葉や落石に気を付けワインディングを楽しみます。


 標高を200メートル程一気に上げると、右手に桂川の源流の一つ「尾花谷の湧水」(見つけ難いかも)があります。ここで休憩をしても良いのですが、あと100メートル進むと標高735メートルの佐々里峠に着きます。道路の右側に駐車スペースがあるので、ここに停めて休憩しましょう。石室があって中にお地蔵さんがいらっしゃいます。


 夜なので景色は楽しめませんが、ここまで来ると星も綺麗に見えます。峠を吹き抜ける風も爽やか。因みにこの峠から北は、京都府南丹市美山町になります。

 この稜線が分水嶺で北側に流れた水は遠く日本海に注ぎ、南側は大阪湾を経て太平洋に注ぎます。なんだかワクワクしませんか?


 休憩が終わったら先へ進みましょう。峠からは一気に高度を下げますから慎重に。途中集落の手前で右手に何ヶ所か川に下りられる所があります。水も澄んでて冷たいです。まさに清流です。

 集落に出たら佐々里川沿いに進みます。


 由良川の大きな橋を渡ったら左に曲ります。右に曲がると原生林で有名な「芦生」に行けますが、夜なのでやめましょう。何が出るかわかりません。


 そこから12km程走ると、美山の「かやぶきの里」に着きます。この区間は狭い道と広い道が交互に出てきます。しかもRがきついですから充分に気を付けて走行して下さい。


 茅葺きの家は夜なので見にくいですが、月明かりでもあると幻想的な日本の原風景が見えるかも知れません。

 川沿いには公衆トイレもありますから、冷えすぎた方はどうぞ。

 手前の小さな橋を渡って河原に降りてもいいですね。河原に寝そべって星を見ましょう。京都市内と違ってめっちゃ綺麗に見えますよ。


 以前コンロを持ってきて、コーヒーを飲んだりラーメンを食べながら朝まで星を見て過ごした事がありました。そのまま寝てしまい、夏なのに朝方に寒くて目を覚ました記憶があります。


 さぁ、ここまで来たら大分疲れてきたでしょう。帰ったら直ぐに寝られそうですか?


 ここからは帰路です。もう暫く頑張りましょう。川沿いに進むと大きな集落に入り、「安掛」と言う交差点にでます。左折して国道162号線を南下します。この道は、京都と日本海の福井県小浜市を結ぶ周山街道と呼ばれています。


 交差点から100メートル程行くと、右手に道の駅があります。そこの自動販売機には地元の「美山牛乳」が売られています。結構美味しいですよ。


 先へ急ぎます。赤い鉄橋を過ぎ、暫く緩いカーブの道を進むと上りの深見トンネルに入ります。これを抜けると京都市右京区になります。トンネルからはどんどん下って行きますのでスピードの出し過ぎに注意です。


 道の駅「ウッディ京北」を越えるとトンネルがあります。1つ目は短くて、2つ目は長い京北トンネルです。


 今は自転車しか行けませんが、その京北トンネルの手前を左に入って旧道の坂道を登って行くと栗尾峠に出ます。かなりのワインディングロードです。峠を越えて坂道を下り切ると駐在所のあるT字路に出ます。そこを左折して500メートル行くとトンネルを抜けた国道162号線に合流しますので右折して下さい。

 昔はコーナリングの腕を競いに走りに行ったもんですが、今の栗尾峠は自転車・歩行者専用道路になってます。


 更に話は横道に逸れますが、この辺を夜中に走ると奇妙なものに出会うと言う噂があります。

 例えば、スピードを出して走ってると、後ろから更に速いバイクに抜かれる。そのバイクはスズキのKATANAで、乗ってる奴を見ると首から上が無かったとか……。

 また、猛スピードでおばあさんが追っかけてきて、追いつかれると殺されるとか……。

 更には、検問があって止まってみると、警察官ではなく江戸時代の岡っ引きみたいな格好をした人に囲まれて、「なんでぃ、この鉄の馬は。なんでぃ、なんでぃ」と問い詰められるとか。

 それは地元の人が、夜中にバイクで走ってる迷惑な奴らを懲らしめる為に変装してやってたとか、山から降りてきた猿と見間違えたとか、いろんな噂がありましたが、私は一度も見たことがありません。


 話を戻します……。


 ここからは「一、初夏」で走ったコースを途中まで戻る形になります。

 次の笠トンネルを抜けて、そこから4キロ半ほど走ると左側に橋がある交差点に来ます。ここはもう京都市北区です。

 そこを左に曲がって杉坂へ向かいます。中川トンネルまで行ってしまうと行き過ぎです。


 そこからは府道31号線で、次第に道も細くなりますから気を付けて走行して下さい。

 杉坂の集落を抜けて暫く行くと右手に「杉坂の船水」という湧き水があります。小さな祠に大日如来さんがいらっしゃるので分かると思いますが、峠まで行ったら行き過ぎです。


 峠は京見峠(標高446メートル)といい、「太平記」にも記述がある古い街道の峠です。北からやって来ると初めて京都市内の街並みが見える所です。杉が大きくなって見にくいこともありますが、夜景を楽しめますね。カップルが乗ってる車が停まってる事もあります。くそー!


 以前は峠から少し下った所にお茶屋さんがあって、昼間なら団子やお茶を頂けたのですが、どうやら廃業になったみたいです。

 また、この辺の山奥には昔の氷室があります。それからも分かるようにここまでは涼を楽しめます。ここからはまた暑い街中に戻るのですが、これだけ走ったら疲れて直ぐに眠れると思います。


 この京見峠から消えゆく街の明かりを眺めてるだけでもアクビが出て眠たくなってきますが、そこで気を緩めずもう少し頑張って下さい。

 ここから一気に約300メートルも標高を下げます。狭い道で、ヘアピンカーブもあり、脇には落ち葉がいっぱいありますから気を付けて走って下さい。

 道幅が広くなってるところもありますが、直ぐに狭くなるのでスピードは控えめに。最後に事故ると嫌な思いをしますから……。


 坂を下り終えるとT字路ですので左へ進みます。100メートル程で光悦寺の前を通ります。そのまま進み、鷹峯の信号を右に行くと千本通り、北山通り今宮通りの交差点(仏教大学付近)に出ます。今日はここで解散しましょう。


 如何でしたか。結構な距離を夜に走るので気合を入れて行ってくださいね。

 学生の頃、後輩に「ちょっと走りに行こかぁ」と言って連れて行き、「何がちょっとですか! めっちゃ遠いですやん」と文句を言われた事が何度かあったのを思い出しました。


 このコースは天然のクーラーと、数々の噂が身も心も冷やしてくれると思います。暑くて眠れない夜には、是非涼みに行っておくれやす。



※走行データ

深泥池(京都市北区)-花背峠(京都市左京区) 約14km

花背峠-佐々里峠(京都府南丹市美山町)    約22km

佐々里峠-かやぶきの里・駐車場        約22km

かやぶきの里・駐車場-京見峠(京都市北区)  約42km

京見峠-光悦寺(京都市北区鷹峯)       約 3km

                   合計 約103km


※気温データ(ある日の実際のデータ)

 深泥池    34度

 鞍馬寺    31度

 花背峠    25度

 佐々里峠   24度

 美山     28度

 深見トンネル 26度

 京北トンネル 25度

 京見峠    26度



★2018年7月20日現在、以下の【通行止】は解除されましたが、迂回ルートとして残しておきますね。


【通行止】2018年7月9日現在

 「平成30年7月豪雨」の影響で、本文のルート上の下記区間で通行止めが発生してます。


(1)「鞍馬寺-百井別れ」(京都市左京区) 府道38号線 約4km


 ※迂回ルートはありますがスーパー酷道を走るので余りお薦めはできませんが、一応書いておきます。

 市原交番を過ぎたら信号のある大きな交差点を鞍馬方面へ右折し、二ノ瀬トンネルの手前を右折して府道40号線を走ります。江文峠を越えると、T字路に当たるので左折です。大原駐在所の交差点を右折して突き当りを左折して国道367号線を進みます。因みに大原駐在所の前をそのまま真っ直ぐ行っても途中で国道367号線に合流しますが道は狭いです。

 大黒山北寺を過ぎると交差点がありますので、そこを左折して国道477号線に入ります。暫くはいいのですが、登りがきつくなると道は細くなりヘアピンコーナーが続きます。酷道ですが、生活道路なのでたまに対向車も来ますから要注意です。

 大原百井の集落を過ぎて、百井峠を過ぎると急な下りになります。急ブレーキを掛けると転倒の恐れがありますから、ゆっくりとエンジンブレーキも併用して下りましょう。道を湧き水が流れてたり落ち葉や苔もありますので、まさにスーパー酷道です。

 百井別れで府道38号線に合流したら、ヘアピン気味に右折です。余談ですが、普通車以上で切り返さないと曲がれないカーブがあるのは、国道ではここが唯一のカーブだそうです。

 そのまま国道477号線を進めば花背峠に行けます。

 ※この迂回ルートは約21kmです。


(2)「京都広河原スキー場付近-佐々里峠」(京都市左京区-京都府南丹市美山町) 府道38号線 約3.5km


 ※迂回路はありません。

 ※ショートカットコースとして(美山までは行けませんが)、大布施(京都市左京区花背)の桂川の橋を渡ったT字路で「二、夏 その1」と同じ様に左折し、国道477号線を進みます。途中、直角コーナ等もありますからスピードは控えめに。

 ひたすら国道477号線を進むと道の駅「ウッディ京北」がある交差点に出ます。

 その交差点を左折すると国道162号線で、暫く走ると京北トンネルに入り本文のルートに途中から合流します。因みに右折すると美山に行けます。

 ※大布施-道の駅間の距離は約19kmです。

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