夢物語

神谷和希

第1話

あなたがわたしの事を忘れればいいのにな

わたしは月の裏側なんかで寄り添った夢を思い出して寝るの


きっと夢なの

そう言い聞かせて眠った

だって


だってあの家はもうないし

揺れる椅子もない

一段飛ばしで駆け上った石階段も

見下ろした海も

もうどこなのかわからない

あなたを置いて行ったわたしも

窓の外を見ていたあなたも

誰なのかわからない


わからないって事は

ないって事なんじゃない?


空を流れる星に乗って消えちゃっても

黒い雲の中に潜り込んでそのまま消えちゃっても

そんなのもいいんじゃない?

なんて




そんな

夢を

見てた


貴方の柔らかい手を握ってみる

温かい胸が私の中の何かを思い出させる

ような

眠っている貴方の背中に子どものように甘えたくなる

ような

そんな


そんな夢物語

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夢物語 神谷和希 @aki0124

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