第26話 選挙ウォーズ その2
市長選と言うお祭り状態なアストレアシティ、現職が勝つか?
はたまた新たな市長が誕生するのか? まだ結果はわからない。
「選挙ダービーでござるか?」
スタジャンにジーンズとラフな格好をして前髪で瞳を隠した茶髪の少年。
名はハンスケ・カッパーフィールド、テンバツナイトと言う名で活動しているダークヒーローである。
『鉄板ベーク』のカウンター席でコーラとハンバーグランチを楽しんでいた彼に
コックコートを着た黒いサイボーグ、シュナイダーが語り掛ける。
「ああ、ヴィラン共が候補者を馬代わりに賭けをしているらしい」
シュナイダーが二枚目のハンバーグを焼いて提供する。
「それと同時に、候補者殺害ゲームもあるようでござる」
ハンスケがスマホを見せる。
「悪いがグロ画像は止めてくれ」
シュナイダーが手でスマホの画面を覆うように止める、対立候補であったミスターピッケルやハートキャッチャーが無残に殺害された写真がアップされていた。
「申し訳ない、しかしこれでエドワード氏が続投となるのはこの街にとっては
悪くないのが皮肉なものでござる」
ハンバーグを平らげるハンスケ。
「……気に食わんがそうだな、ヴィランの奴らが良い事した気になっているのが
気に食わん」
片づけをしながら愚痴るシュナイダーに、ハンスケは金を払って店を出た。
「気に食わん、ダークヒーローが動くには十分な理由でござる」
ハンスケは瞬時に黒い忍び装束姿に変身し空へと舞い上がった。
やって来たのは廃棄された工事現場、ミスターピッケルの殺害現場だ。
「さて、警察の取りこぼしはどこかにあるはず?」
テンバツナイトとなったハンスケは、片づけられた現場から手掛かりを探そうとしていた。
現場検証をした警察が見つけられなかったものが見つかるか?
その答えはすぐに見つかった、テンバツナイトの脇を銃弾がかすめると同時に
近くのビルの屋上から額に手裏剣が刺さったスナイパーが落ちてくる。
テンバツナイトは落下する死体がシートパイルで切断されると面倒なので
跳躍してスナイパーの死体を空中で受け止める。
そして、二弾ジャンプでスナイパーがいたビルの屋上へと侵入した。
「やれやれ、話を聞く前に片づけてしまったでござる」
この街では銃で撃ってきたらやり返されても文句は言えない、正当防衛だ。
ヴィランとダークヒーローの対決なら司法はノータッチである。
ヒーローに殺されたヴィランが悪い、ヴィランに殺されるようなヒーローが悪い。
それが、アストレアシティのみならずヒーローとヴィランが対立している国スター合衆国の掟。
「とはいえ、こいつから誰が依頼人かなどはダークレディ殿に依頼するでござる」
遺体を抱えたまま、テンバツナイトは忍者らしく竜巻を起こしながら消えた。
「そんなつまらない頼み事をしに来ないでよ」
黑いゴシックロリータドレス姿の吸血鬼少女は嫌そうに顔をゆがめる。
場所は街外れの庭付きの洋館、マクスウェル邸。
ダークレディこと、ミナ・マクスウェルは庭でティータイム中にテンバツナイトの来訪を受けた。
死にたての死体などを持ち込まれては紅茶の味が台無しである。
「火急の要件でござる、ご容赦を」
「こちらはプライベートよ、後で調べるからそこらに放っておいて」
「承知、では次はテミヤゲを持参し参上仕る」
「はいはい、お菓子で良いわ」
庭の隅に遺体を置いて消え去るテンバツナイトに手を振るダークレディ。
テンバツナイトが帰ると、人差し指の爪を伸ばしスナイパーの遺体のこめかみへと突き刺した。
情報がダークレディの目に映像と文章で流れて来る。
「あ~、やっぱりつまらないわ」
指を引き抜き、打ち鳴らして蝙蝠達を呼びスナイパーの遺体を骨も衣服も残さず食わせるダークレディ。
「後でメールで伝えれば良いわね、お茶の続きをしましょう♪」
一仕事を終えたダークレディは、指をハンカチでふき取りティータイムを再開した。
翌日、ハンスケの下にメールが届いた。
「ミナ殿からでござる、昨日の結果はヴィラン倶楽部の仕業なりと」
ダークレディことミナからのメールには、スナイパーはヴィラン倶楽部の一員
でディーラーが仕掛けたゲームの参加者。
ミスターピッケルを銃殺したのはこいつ、ハートキャッチャーは別のヴィラン。
という事が書かれていた。
「……はあ、またヴィラン倶楽部とディーラーでござるか」
ヴィランの手の上で踊らされているという事実にため息をつくハンスケだった。
この後、他の街でも模倣犯が事件を起こし地元のヒーローが解決に奔走する事態が起こる事となる。
ヒーローとヴィランのいたちごっこはまだまだおわらない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます