光合成

カゲトモ

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「あれ、桃子ちゃん?」

 特に和菓子が食べたかったわけではないけれど、吸い込まれるように店内に足を踏み入れていた。だってそこに桃子ちゃんがいたから。

「こんにちは、スカイさん」

 そう言ってにっこりと笑うのは京谷和菓子店の一人娘、桃子ちゃんだ。優しげな笑顔と柔らかい声は変わらないのに、この前に見たときとは少し変わっている。彼女はこの春から洋菓子の専門学生だ。

「雰囲気変わったね」

「え、そうですか?」

「うん、なんだかお姉さんぽくなった」

 そう言うと、えへへ、と丸い瞳を細めて笑う。黒髪の良く似合う大和撫子って感じだったけれど、今のすこし茶色い髪も纏う空気が柔らかくなったようで良く似合う。しかもちょっとメイクまでしてある。ノーメイクでも凄く可愛かったのに。

でもこれはこれで断然あり。何て言うのかな、ちょっと近寄りがたかった美少女から、取っ付きやすい美人になった、みたいな? もともと彼女は愛想のいい子だったけれど。

「あんまり明るい色には染められないんですけれど、専門に入ったら絶対染めようと思っていたんで」

「へぇ、良く似合ってるよ」

 美人で頭が良くて品行方正でとてもまじめな印象だった桃子ちゃん。専門学生になっても超が付く真面目ちゃんかと思ったら、予想以上にエンジョイしているみたいでちょっと驚く。いや、これが普通か。

「髪を染めるって言った時はお父さんに止められましたけどね」

「でも染めたんだ?」

「お母さんが良いって言ったから。洋菓子の学校に行くって行った時は反対したのに、髪を染める時は即オッケーだったんですよ。逆になんでそんなに暗い色なのって言われてくらいで」

「え、そうなんだ?」

 あのお淑やかな女将が? マジで?

「店の手伝いもあるし髪が明るすぎたらこの服だって似合わないって思ったからなのに、面白いでしょ?」

 そう言って襟元を触って見せる。京谷和菓子店の制服は簡易着物のようなものだ。

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