第67話 グーン国攻城戦

 攻城戦に移行したハシバ国軍だが、攻城兵器ははしご程度しか持ってこなかった。


「しかし閣下、破城鎚はじょうついも無しに城を落とせるでしょうか?」

「安心しろ。ジャックたちがこの日のために覚えた必殺技がある。そいつを使えばあの程度の門、すぐに落ちるさ。全軍、進撃を開始せよ!」


 グーン国は乱世の中旗上げされた新興国で、現在はハシバ国と同じように木製の城壁で守られている(建国当初はそもそも城壁が無かったらしい)。

 木製のものとはいえ城壁を攻略するには破城鎚は必須だと思われているものだが、今回はなぜか持ってこなかったが、(おかげで荷物が少ない分行軍は早かった)その理由はすぐにわかった。


「全軍進撃! 城壁を落とせ!」


 攻城はしごがかかり兵たちが登っていく中、ジャック・オー・ランタンたち32名が1組となって魔法陣の上に立ち円陣を組む。


「ハァアアア……」


彼らが魔力を魔法陣に送り込む。すると陣の中央に赤い塊が現れ始める。それは次第に大きくなり太い槍、というよりは丸太の先端をとがらせただけという、ある種荒々しい形状になり、錐もみのように回転を始める。


「フレア・バリスタ!」


その炎で出来た赤く輝く大槍はグーン国城壁の門に向かって勢いよく撃ち出された。高速で錐もみ回転するそれは城にドリルのように食い付き、ダメージを与えていく。やがて力を失ったのか燃料が尽きた炎のように消えていった。


「おお……すげえ!」

「こんな手を隠し持っていたとは!」


 カボチャ達による攻城魔法「フレア・バリスタ」という新兵器のお披露目に立ち会った兵士たちはその威力を称賛する。


「ハァ……ハァ……ふう、疲れた。交代だ」

「おっしゃ、任せろ兄弟」


 この作戦のためにジャック・オー・ランタンを100名ほど連れていた。3チーム交代で撃ち続ければ城門は突破できるはずだとマコトは踏んでいる。彼の表情には緊迫感などかけらも無く、かなりの余裕があった。




「ハァ、ハァ、ハァ……」

「大丈夫か?」

「持ちこたえましたが大分傷ついています。あと2~3発来たら正直かなり厳しいかと」


 門番の兵からは気弱なセリフが漏れる。


「大丈夫だ! 援軍が来ればまだ戦況は分からない。とにかく耐えるんだ!」


 グーン国王ギーシュが部下をそう励ます。援軍が来るまで耐えられればいい。計算上では今日の日没、遅くても明日の朝までにはこの城にたどり着くはずだ。そう踏んでいたが……絶望的なメッセージを持った伝令兵が彼の元へとやってくる。


「伝令! 閣下。あまり大きな声では言えないのですが……援軍が、敵の別働隊に押し負けて退却するもようです」

「!! 何だと!? 援軍が来ないというのか!?」


 頼みの綱である援軍が……来ない。その事実に王は激しく動揺する。


「閣下、もはや我々だけでハシバ国を倒さなくてはなりません。いかがいたしましょうか!?」

「……」


 答えは、出ない。




「オイ聞いたか? 援軍が来ないらしいぜ」

「エエッ!? マジかよ!?」

「もうだめだぁ……おしまいだぁ……」


 援軍が来ない。その悲報は瞬く間にグーン国全軍に広がり、圧倒的な絶望となって士気を地の底にまで叩き落とす。



「閣下! 援軍が来ないという噂が兵たちに広がって、もう戦うどころではありません!」

「……ここまでか」


 打つ手なし。ギーシュがそう思うと同時に、3発目のフレア・バリスタが城壁の門を直撃すると抵抗虚しく開城し、グーン国は陥落した。


「……お前がハシバ国王のマコトか。お前たちハシバ国は攻め落とした国相手でも住民の奴隷化や圧政を敷くことはしないと聞く。本当か?」

「ああ本当だ。奴隷化も改宗も無しだ。税金制度も本国と同じで、差別はしない。まぁ必要な時には徴兵はするけどな」

「ずいぶんと寛大かんだいな処置じゃないか。わかった、民を守ってくれるのならそれでいい。お前の元に下ろう」

「んじゃあ忠誠を誓ってもらおうか?」


 マコトはスマホを取り出す。


「私は元グーン国王ギーシュ。今後はハシバ国の1官僚として尽力しよう」


 胸から青色の光が飛び出し、マコトのスマホの中に入る。それには


「グーン国がハシバ国に攻め込まれ滅亡しました」


 という無機質なメッセージも表示されていた。




【次回予告】

グーン国を攻略し順調に領土を拡大していくマコトの国ハシバ国。

なぜそうまでして領土拡大を進めるのか?

それには大きな理由があった。


第68話 「領土拡大の真意」

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