第3話 盗賊の討伐
「3人組の盗賊討伐、報酬1000G、か」
スマホの画面を操作しながら今日の仕事の内容を決めていく。
この世界に持ち込めたスマホではギルドからの依頼や周辺国の情報を見る事が出来た。充電もしないのになぜか充電率は常に100%で1ヵ月使っていても電池切れが起こることは無かった。
なぜ充電しなくてもいいのかは全く分からないがとりあえず情報収集ツールとして使えるので存分に利用している。
「よしお前ら、仕事だ。盗賊退治だ。相手は人間だから油断は禁物だ。いくぞ!」
「へい!」
「よし、任せな」
マコト達はギルドで正式に依頼を請け負った際、被害届に書かれてあった盗賊の出没場所を行商を装い道を歩く。
3人ともローブを羽織り、身なりから盗賊討伐の為に来た冒険者であることを悟られないようにしている。しばらく辺りで休息するフリをしていると……
「おっと待ちな。先を行きたきゃ通行料を払ってもらおうか?」
予想通り、奴らが現れた。明らかに顔つきや身なりが悪く、ナタやマキ割り用の斧、あるいは包丁で武装した盗賊3名がマコト達の前に立ちふさがった。
通行料を払え、と来たから要は行商相手に「勝手に定めた通行料」を取るという商売なのだろう。
「通行料ねぇ。いくらだい?」
お虎が尋ねると盗賊は少しだけ考えて答えを出す。
「3000ゴールドだ」
「そうか、分かった」
彼女はそう言うと自分の得物である並の人間なら両手でないと扱えない程の大太刀を片手で振るい、盗賊の一人の首を斬り飛ばした。
「ゴブー!」
「分かってますぜ姐さん!」
続いてゴブーが引き絞っていた弓から矢を放つ。狙い通り首を斬り飛ばされた者ではない別の盗賊の左目に突き刺さった。彼は図体に似合わない情けない悲鳴をあげながら地面にうずくまる。
「いやぁすまないねぇ。持ち合わせがほんの少し足りなくてね。アンタら3人組で通行料が3000ゴールドって事は1人につき1000ゴールドの払いって事だろ? 1人いなくなったからこれで2000ゴールドで済むから、今なら払ってやれるよ」
「こ、この野郎! ふざけやがって!」
お虎が盗賊たちに彼らにも勝るとも劣らない位下種さにあふれる声を吐き捨てる。残りの1人が戦闘態勢に入った瞬間、急に牙を向いた獲物3人組のうち、1人がいない事に気付く。それと同時に彼の後ろから声がした。
「動くな。武器を捨てろ」
盗賊の首にはマコトが持つ冷たくて鋭いナタの刃が当たっている。彼はお虎が盗賊を斬って相手がそっちに注意が向いているのを見てそのスキに後ろに回り込んだのだ。
刃は鋭く砥がれており、ナタと言えど首を斬って致命傷を負わせるには十分だろう。盗賊はしばらく考えた後……舌打ちしながら武器を手放した。
「チッ」
「お利口さんで助かる。お虎、コイツらを縛り上げろ。言っとくが、くれぐれも暴れるなよ?」
マコト一行は盗賊2名を抵抗できないように縛って持ち物検査を始める。
「フーム。10ゴールド銅貨4枚に50ゴールド銅貨2枚に100ゴールド銅貨7枚、あとは……おっ、500ゴールド銀貨が1枚か」
「なかなかの臨時収入じゃないの。宴会でもやろうよ」
「そうだな。たまにはいいだろう。今日は早めに帰るぞ」
いつものように街……都市国家シューヴァルにあるギルドからの依頼をこなしたマコトのスマホが今まで聞いたことのない着信メロディを奏でた。
「何だ?」
マコトが不思議そうにスマホを開く。そこには相変わらず無機質な、だが見たことが無いメッセージが書かれていた。
「リシア国がアレンシア国に攻め込まれ滅亡しました」
「……あのリシア国が、滅んだだと?」
「オイ、何だその四角い板は?」
「お前には関係ない事だ。街に行くぞ。とっとと歩け」
マコトはスマホを不思議そうに見た盗賊を軽くあしらいつつ、今後の予定をどうするか頭の中で考えることにした。
自分たちよりも大きな国であるリシア国が滅んだ。この流れはまずい。あまり良く無い知らせだとも思っていた。
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