第41話
子供2人の成長を目の当たりにして、
「歳をとると涙腺が緩くなっていけないねぇ」
「はい……」
コホンとワザとらしく1つ咳払いして気を取り直した。
「じゃあ、武器作成は
そう
「後遺症はなさそうだねぇ」
懐にハンカチをしまいつつ、
「何の薬かは分かりませんが、さほど強いものではなかったのかもしれませんね」
同じく
「それじゃあ改めて。全員揃ったところで、作戦でも練りますかね」
佇まいを直し、
「でもどこから……?」
「勝つには、まず敵を知り
その言葉に、姉の
「孫子の兵法だね。『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』か」
「どこでそんな言葉を……」
「週刊プロレス」
「
そう言いつつ、
「誰か武道の心得は?」
おずおずと手を挙げたのは
「大学まで柔道やってました。……強くはなかったけど」
全国大会を目指した事もあったが、太れず身体も大きくない
そして、その知識を使って今は柔術整体師の資格の勉強もしている。
少し考えてからひょいっと手を挙げたのは意外な人物──
「今健康の為に合気道の地域レッスンを受けてるよ。実践した事はないけどね。素人に毛が生えた程度サ」
肩をすくめて彼女は笑う。
「私達は柔道の授業受けてるけど……私はチビ過ぎて投げられっぱなし。
「俺、運動ダメで……」
運動は苦手という意識が働いて、授業は真剣に受けてはいたが身にはついていなかった。
「私も……微妙。受け身もうまく出来ないな」
唯一何も発言していない
「え……や、無理よ。むしろ運動不足」
視線を払いのけるかのように、
「そうなりますと、唯一戦えそうなのは私と
「……俺は、あの痩せた男と戦いたい。
膝に置いた手を、爪が掌に食い込むほど強く握りしめた。
それを見て
「私もまだあの男に借りを返し終わってない。アイツは肉体的には強くなさそうだけど、恐らく技術系の人間だろうね。私も協力するよ」
「俺は……アイツ。迷彩服の男」
彼の脳裏には、自分の事を弱いと言い放ち、マウントを取って何度も殴り、そして捕まえた迷彩服の男──
見返してやりたい。
あまり反骨心のない
「私も一緒に戦う」
そう言ったのは
彼女のその顔を見て、
「俺は強くない。だから……武器を使う。買い集めたくれた材料使って、色々と作ってみるよ。牽制用の罠も仕掛けられるようにする」
自分で出来る範囲で全力を尽くす。
体の強さでは勝てない。
なら頭を使う。
彼は、自分の持てる知識全部をつぎ込んで、手作りできる武器の事を色々と考えていた。
「……恐らく、あの女性は私と戦いたがると思います。どうやらとても恨まれているようなので」
「でも、あの女性には、アンタでも勝てないんじゃない?」
「はい。勝てません。相手を制圧するにはある程度力に開きが必要ですが、彼女は武術の達人のようで弱くありません。なので……」
「ご協力頂けますか?」
見られた
「彼女は恐らく貴女を侮っています。そこを狙うのです」
その暖かさに、
彼の手を握り返し、力強く頷いた。
「やる。やってみせる」
彼女の目には、強い闘志が灯っていた。
「私も」
「私には出来ることが少ないけど、でも──
肩に置かれた姉の手の上に、そっと自分の手を置いて、
戦う相手は決まった。
あとはその方法だ。
「私が命を狙われているのに、巻き込んでしまってごめんなさい。
でも──みんなの力が必要なの。私だけじゃ勝てない。
私も頑張る。だから……力を貸してください。お願いします」
「もう、アンタだけの戦いじゃないんだよ」
「必ず貴方を守ります。ここにいる全員で」
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