第35話
不可解な事ばかりが起こる。
古いマンションの一室。
寝室に敷かれた家主の布団に寝かされた少年を見下ろしつつ、
少年の名は
攫われていた筈の彼である。
彼を見つけたのは、
仕事の呼び出しで外出していた彼女が、ここへ来る時に道端をフラフラ歩いていた彼を発見したのだ。
その様子を見て、
しかし、再会に泣いて喜ぶ
「何かあったら呼ぶんだよ。私はリビングの方にいるからね」
袖に手を突っ込んで腕組みしてリビングに戻ると、ふと思い立って台所の方へと向かう。
目覚めた後の少年の為に、味噌汁とオニギリをこさえてあげようと思ったのだ。
「ちょっと勝手に使いますよっと……」
ここにはいない家主に断りを入れ、着物を
家主の
念の為変装して──といっても、高が知れている範囲でである。
ホームセンターにネットで調べた武器を作る為の材料と、近所のスーパーに全員分の食料の買い込みに行ったのだ。
家には、
閉められたカーテンの隙間から外の明るい光が漏れてきて、電灯を消した部屋を薄っすらと照らす。
その光に照らされた
短い前髪が額に張り付いており、気持ち悪そうだなと思った
何かされたんだろうか。
酷い事されていないだろうか。
大丈夫だったのだろうか。
少しの打ち身があった程度で、他に異常はなさそうとの事だったが、実際どうだったのかは本人に聞くしかない。
早く目覚めてくれるといいな。
その時──
ピリリリリ
スマホの着信音がどこからともなく響いてきていた。
音の発生源は何処かと
四つん這いで音を頼りに辺りを弄ると、部屋の隅に纏められた、
もしかしたら、早朝いなくなった息子を心配した両親からかもしれない。
そう思い、
手にしたはいいが、勝手に出てもいいものかと悩む。
スマホの画面には『非通知』とだけ表示され、切れずにしつこく鳴り続けていた。
その時──
ゾワリ
背後すぐ近くに、音と気配を出来るだけ消した人が立つ気配。
肩を掴まれ、そのまま床に押し付けられた。
誰?!
カーテンの隙間から漏れてくる光に半分照らされたその顔は──
目を開いてと祈っていたクラスメイト──
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