HF-F(N)01-002

 陽炎のように揺らめく視界をジッと見つめながら、

 私は過去の思い出を振り返る。


 決して平坦ではなかったその道のりが、間違った道ではなかったと思いたい。

 思いたいが──それでも、もっと上手く物事を進める手段があったのではないか、そんな思いに常に蝕まれていた。


 大人になってから友人を作るのは大層大変だった。

 大人になると、その人の性格が丸みを帯びるタイプと顕著に尖るタイプの両極端な人が多かった。

 丸みを帯びても裏切られる事もあったし、

 尖っていても利害抜きで心を砕いてくれる人もいた。

 人を見抜くという事は、本当にとても大変だった。

 結局、生涯私はそれが上手く出来なかったように思う。


 それでも、私は多数の心優しい友人に恵まれた。


 しかし、私には味方も多かったが、敵も多かった。


 足を引っ張る政治家、研究者、企業人、女だからと侮る輩から、同じ同性であっても私の活動を面白く思わない人もいた。


 私がひとえにここまで来れたのは、

 友人たちが私の目標に賛同して協力してくれたおかげだ。


 そう思うと、本当に恵まれた人生であったと思う。



 しかし、こんな状況になった時に、頭に浮かんだのは協力してくれた友人たちでもなければ、四六時中そばにいれくれた人でもなく、先に逝った愛する伴侶でもなく──


 子供の頃の、友人の顔。


 友人を傷つけ、奈落へと叩き込み、最悪の道を歩かせてしまったのは、


 他でもない私。



 それに気がついた時には、時間が経ち過ぎていた。

 もう、取り返しがつかない状態だったように思う。


 だから私は、思ったのだ。

 あの友人のような子供を、1人でも減らせればと。

 愚かだった私のような子供が、1人でも減って同じ間違いを犯さないようにと。



 例え私が憎くても、私はあなたを救いたい。


 だって、あなたは大好きな友達だったのだから。

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