第32話
金属同士がぶつかる激しい音が、何度も響き渡る。
一度大きく距離を取って着地した
「何故本気で来ない! 舐めているのか!!」
人間の致命的な急所を避けて攻撃してくる
「舐める? 舐めません。私には味覚が──」
「そういう意味じゃないから」
ムッキムキの僧帽筋やら上腕二頭筋が露わになっている。ここに
動いた事により体温度が上がった為、熱を逃がす為に脱いだのだ。
「相手を
「学習しました。舐めておりません。私は油断するということもありません。よって、常に本気です」
「ならなんでっ……」
自分を殺そうとするなら絶対に見逃さないであろう隙に、
その為フェイントが空振りすることもあり、思ったように攻撃が出来ない
「私は
肩の可動範囲を確認し、自分の損傷具合を確かめた
「致命傷を与えず制圧だ……?」
地面を抉るほど強く爪を立てた。
「それが舐めてるっていうんだッ……」
途端、彼女の手足のグローブやブーツから蒸気が立ち上る。
水蒸気が消える前に、その壁を突き破って
が──
それを読んでいた
「こうすれば! そんな甘い考えは吹き飛ぶだろうよ!」
彼女の体重に振り回されて
しかし、それが彼女の狙いだった。
ゴギンっと鈍い音がする。
「あっ……」
突然制御を失った左腕。
自分の左腕を掴んだままの
後ろに大きく飛びのいた
関節部を壊されて引きちぎられた
彼は
「返していただけますか?」
馬鹿正直に、右手を
手にした
「やめろ……」
小刻みに震えつつ、差し出された
「やめろッ……」
次第に
地面に落ちた自分の腕を拾い上げようと、
「私にっ……」
もう少しで左腕に手が届く──
「私に触るなァ!!」
拾い上げようと屈んでいた
横によろけた
そこへ
「やめなさい!!」
我に帰った
そして、先程から煩く何かを喚くインカムの声に気がついた。
『
インカムから聞こえてきたのは、筋肉量を増やす事を生き甲斐にする脳筋男の声だった。
「ちっ……」
真っ直ぐに
「運が良かったなスクラップ。次は本当に廃棄ゴミにしてやるよ」
そう
右手をついてなんとか立ち上がる
よろよろと歩き、落ちた自分の左腕を拾い上げた。
「大丈夫なの?」
距離を取っていた
「損傷率41.68%。かなり深刻なダメージですが、通常通りに稼働するだけなら問題ありません」
「いや、あるでしょ。腕取れてるんだよ?」
「中央処理装置及び記憶媒体部に、致命的な問題は今のところありません。腕は、関節部を直せれば再度繋ぐ事は可能だと思われます。ただし、その場合でも左腕の再稼働は難しいですが、右腕がありますので」
「何その無駄ポジティブ」
そこへ、トボトボとした足取りの
「
「健康の為に早朝散歩してたら、この先生に会ったんだよ」
ふふっと笑ってそう言う
ガッツリ外出用の着物を着込んでおり、肩には大きめの鞄を抱えていたからだ。
恐らく、
容易にそれは想像ができた。
しかし、分からない事が一つ。
「あれ? あの女性のオートマトンは?」
いつも
「ああ……ちょっとね……」
「それに……
一緒に逃げた筈の妹の姿もない事を姉が言及すると、
「その……」
「それは私から後で説明するよ」
ここまで来る道すがら、事情を聞いていたのだ。
「しかしまぁ……先生の話だけでは信じられなかったけど……」
そう言いつつ、
「……まさか本当に……」
目の前に、本当に、未来から来た──しかも
信じられない事だったが、信じずにはいられなかった。
目の前の大男は、左腕を
長生きはするもんだね。
「お姉ちゃん……」
そこへ、
「
「大丈夫だった?」
「お怪我は?」
2人が交互に
「
喉から絞り出したかのような掠れた声の
その様子を見て、
反射的に
「
今まで我慢していたのか、大粒の涙が
「私のせいだ! 私のせいなんだよ!! どうしよう!
わんわんと泣き叫ぶ
「いえ。貴女のせいではありません。貴女のせいではないんです」
低く落ち着いた声で
自分の胸に顔を埋めて泣きじゃくる
彼女が落ち着くまで、何度も何度も背中をさすった。
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