352.マイスタークラス決勝トーナメント準決勝終了後
「うーん、負けちゃったよ」
試合結果が出たため、行動不能状態が解除されて動けるようになった。
もしかしたら可能性があるかも? と思っていたけど、やっぱり鉄鬼には敵わなかったね。
「おう、お疲れだ、イリス」
「お疲れ、鉄鬼。やっぱり強いねー」
「まあな。伊達に戦闘系クランで前線張ってねーよ」
鉄鬼は得意げにしてる。
まあ、実際、それだけの実力はあるし。
「しかし、あんな大量のポーション、よく用意しやがったな。トワのヤツだろうが」
「だね。トワがこの試合が始まる直前にくれたんだよ」
「……ああ、なるほど。だから前の試合まで、使うそぶりすらなかったのか」
「そういうこと。いきなり渡されたから、少し戸惑ったよ」
本当、いきなり渡されたから、どう使おうか悩んだ。
結局、戦闘開始直後に可能な限り使い切るって戦法しか思いつかなかったけど。
「そういうな。前の試合までに用意されてたら、そっちに気をやって上手く戦えなかったかも知れねーしよ」
「……そういうものかな?」
「だと思うぜ。……アイツがどれだけ考えてたかは謎だが」
鉄鬼が肩をすくめながら、そう答えてくれた。
そっちから見ても、トワってそういうイメージなんだね。
「ともかく、いい試合だったぜ。リベンジエッジまで使うことになると思ってなかったからな」
「そーいえば、リベンジエッジってどういう技なの?」
「ん? スペリオルスキルのひとつだな。前段階として『ダメージチャージ』で貯めて、『リベンジエッジ』でカウンターを与える、そういうスキルだ」
やっぱり、スペリオルスキルかー。
それにしても、強すぎじゃないかな。
「あんな遠距離でも当たるんだね」
「つーか、距離無視・回避不能のダメージ技だ。物理ダメージ軽減以外は、すべて関係ないってスキルだ」
「そっか。でも、どうしていままで使ってなかったの?」
「使う必要がなかった、ってのもあるが、一番の理由は『ダメージチャージ』が一撃分しか吸収できないってこったな。連続ダメージタイプの攻撃には滅法弱いんだよ。あとは、ダメージ軽減効果もないから、直撃したのと同じダメージももらっちまうし」
使いどころは難しいみたい。
単発高ダメージのロケットアローじゃなくて、貫通連続ダメージのスパイラルアローのほうがよかったかな?
……そっちの場合、スキルを使ったあとで躱された気しかしないけど。
「そっちこそ、スペリオルスキルのひとつやふたつ持ってるんじゃないか? まったく覚えてないわけじゃないんだろ?」
「あるにはあるけど……テンペストアロー以外は、補助スキルかなぁ」
スペリオルスキルが手に入るのはレイドが中心だし、封印鬼以外のレイドは行かないから、手に入れる機会がない。
テンペストアローは……隙が大きいから、使いどころが難しいんだよね。
「それじゃ、聖霊開放はどうだ? 使ってなかったが」
「そっちは最後に使う予定だったんだよー。防御無視のスキルだから、詰めにいいかなと思って」
「なるほどなぁ。……だが、結果としては、ロケットアローじゃなくてそっちのがよかったみたいだな」
「だねぇ。次の試合は出し惜しみしないようにするよ」
「おう。それじゃ、そろそろ戻るぜ。またな」
「まったねー」
鉄鬼もいなくなったし、ボクも戻ろう。
でも、聖霊開放を使っても、鉄鬼には勝てなかった気がするなー。
トワといい鉄鬼といい、あと一歩が遠いよ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「イリス、おつかれー。フライドポテト食べる?」
「ただいま、曼珠沙華。たべるー」
試合が終わったから、観戦スペースに戻ってきた。
曼珠沙華からフライドポテトをもらったけど、美味しいね。
「これ、どこかで買ってきたの?」
「ううん。ユキがおいていったの。ユキから伝言だけど、お疲れ様、だって」
「そっかー。ユキちゃんは?」
「出かけるからって、ログアウトしたよ」
そういえば、トワと出かけるんだったっけ。
時間は大丈夫だったのかな?
「お疲れ様。残念だったわね」
「うむ。鉄鬼相手によく戦ったぞ」
「柚月もドワンもありがとー。でもやっぱり強かったよー」
「まあ、仕方がないわね。トワと鉄鬼は別格だもの」
そうなんだけど、あとちょっとで届きそうな気もするんだよ。
……その、あとちょっとがきついんだけど。
「準決勝で負けたってことは、三位決定戦にまわるんだよね? イリス、このあとどうする?」
曼珠沙華に聞かれたけど、まだ晩ご飯には早い。
「次の試合も見てからログアウトするよ。対戦相手を確認したいし」
「そうね。そのほうがいいでしょう」
「次は、前回四位のきこりーやとシンクというプレイヤーの戦いじゃの」
「きこりーやさんなら知ってるよー。斧使いのひとでしょ」
「じゃな。今回もそこは変わっとらん。相手のシンクは……なんというか、つかみ所のないプレイヤーじゃの」
あれ、ドワンがこういうなんて珍しい。
いつもなら、はっきり言い切ってくれるのに。
「なんというか、さまざまな武器や魔法を使い分けるのじゃよ。特化型ではなく汎用型というべきか」
「そうね。でも、プレイヤースキルは高いから、面白い戦いになりそうよ」
柚月がそういうなら、きっと楽しい試合になるんだろうね。
次のボクの相手がきまる試合だし、しっかり確認しておかないと。
―――――――――――――――――――――――――――――――
準決勝第二試合は、なかなか白熱した戦いになった。
ボクと鉄鬼の試合のように、短期決戦を狙うのではなく、長期戦も想定した戦い方だね。
きこりーやさんはブーメラントマホークを主体とした遠距離戦と、振り回しやすい手斧を使った接近戦をしている。
対して、シンクという選手は……いま使っているのは細剣と魔法強化用のオーブかな。
魔法を使って牽制し、チャンスの瞬間に間合いを詰めて剣で攻撃してる。
接近戦になったら、片手剣に持ち直して攻撃しているね。
そして離れるときには、剣から杖に武器が変わってる。
確かにこれはやりにくいかも。
そのあと、きこりーやさんも頑張ったんだけど、シンクさんの多彩な攻め方に対応しきれず負けてしまった。
これで、夜に行われる三位決定戦と決勝戦のカードが決定。
ボクはきこりーやさんとの勝負だね。
斧使いとの戦いは初めてだから慎重にいかないと。
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