317.ショットガンの実戦テスト
「おう、トワ。悪かったな、狩りに行くところを邪魔したみたいで」
「そう思うなら、一緒に来なくてもいいんだぞ、鉄鬼?」
俺達は転移先で鉄鬼と合流した。
鉄鬼もショットガンを使った場合の戦闘内容には興味があるらしい。
鍛冶士でもあるけどタンクでもある鉄鬼らしいと言えば鉄鬼らしいのか。
「それで、どこに狩りに行くつもりだったんだ?」
「レベル50前後のパンプキンモンスターを倒しに行くつもりだったな。俺とユキの2人で安全に倒せる範囲ってなると、その辺りのレベルが一番いいから」
「なるほどな。それなら、俺達も一緒な訳だし、もう少し強いモンスターがいる狩り場に行こうぜ」
「……どうする、ユキ?」
「いいんじゃないかな。自信があるみたいだし」
「そりゃ自信はあるさ。普段から相手にしている獲物相手だからな」
「そういうことか。それなら、そちらのレベル帯にあわせるよ」
「よっしゃ、決まりだな。次元弐、そっちの準備は大丈夫だよな?」
「もちろんだ。元々、ショットガンを手に入れたら、すぐに実戦テストをする予定だったからな」
「という事らしい。それじゃあ、俺達が普段使っている狩り場に案内するぜ。ついてきてくれ」
鉄鬼と次元弐はフェンリルを呼び出して騎乗した。
当たり前のようにフェンリルを持ってるあたり、やっぱりトップクランの上位メンバーなのだろう。
俺とユキも同様にフェンリルをそれぞれ召喚して、その背に乗り込んだ。
「準備は大丈夫だな。さて、出発だ」
先頭を鉄鬼が走り、その後を俺達がついていく。
移動中のモンスターに関しては、全て無視している。
そのまましばらく鉄鬼の後をついていくと、街道から外れた森に辿り着いた。
「ここが俺達が使ってる狩り場だ。もっとも、ここの地名なんて知らないけどな」
「レベル60前後のモンスターがメインの狩り場だ。トワさん達だけではかなりきついだろうな」
「2人でレベル60のモンスターを相手にするのはしんどいかな」
「そうだね。ちょっと厳しいよね」
さすがに、装備の質はよくても、スキルが育ってない俺達ではレベル60台のモンスターは手に余る。
だからこそ、レベル50程度のモンスターを相手にしてるんだし。
「まあ、ここなら俺と次元弐だけでどうにでもなるから、気にすんな」
「そうだな。トワさん達は、サポートだけしてもらえればそれで構わない」
「そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらうよ」
「よろしくお願いしますね」
「おう。というよりも、2人に手を出されると、俺達的にはあまり都合がよくねぇからな」
「あくまで、クランパーティでの連携確認だからな。トワさん達がいる前提では、普段と動きが変わってしまう」
「そうだな。トワみたいな長距離攻撃者は、普段はいねぇ。ユキの嬢ちゃんみたいな、広範囲バッファーもいないからな」
「そうか? となると、俺達2人は手を出さない方がいいのか?」
「出来ればそうしてくれ。ドロップはそのまま持っていってかまわねぇから」
「さすがに、ただでドロップアイテムまでもらうのは悪い気がするんですが……」
「気にすんな。どっちにしろ、ワイルドパンプキンは俺達のクランじゃあまり気味だからな……」
「そうなのか?」
「そうなんだよ。俺達のクランは料理人はいないし、提携クランでもワイルドパンプキンは自力で集めてるから、結局残っちまうんだよなぁ……」
「そうか。そういうことなら、ありがたくワイルドパンプキンはもらっていくぞ」
「おうよ。なんだったら、俺と次元弐にでたワイルドパンプキンも持っていってくれ。これ以上、持ち帰っても困るんだよ……」
「……そういうことなら、そっちももらっておくか」
「そうだね。……代わりに少し調理済みのアイテムを差し上げますね」
「そうしてもらえると助かる。さて、ここから先は歩きで行くぞ」
俺達はパーティを組んで森の中へと歩いて行く。
道中、森らしく昆虫系モンスターや蛇、トカゲといったモンスターが襲ってきた。
だが、それらのモンスターも鉄鬼が難なく抑え込み、次元弐が各個撃破するという連携が出来ていた。
……なお『手を出すな』と言われてるから、探知系スキルの反応も教えてないが、そんな事は関係なしに鉄鬼は処理していく。
鉄鬼自身も探知系スキルを覚えてるのかな?
「鉄鬼。探知系スキルって持ってるのか?」
「ああ、持ってるぞ。こういうときに便利だから覚えたんだよ」
「なるほど。他のプレイヤーから教えてもらうより早いしな」
「そういうことだ。もう少し奥まで進めば、ポータルのあるセーフティエリアがある。そこまで行ったら休憩だ」
「了解。……でも、ポータルもあるセーフティエリアなら、エリア名もわかるんじゃないのか?」
「まあ、そうなんだがな。正式名称よりも『レベル60の森』って言った方がわかりやすいんだよ、俺達のクランでは」
「……気持ちはわかるな」
「まあ、そういうことだ。サクサク進んでいくぞ」
その言葉通り、頭上からの不意打ちなども含めてサクサク倒していく鉄鬼と次元弐。
なお、次元弐が使っている武器はハンドガンのみで、まだショットガンは使っていない。
「……ここが中継地点だ。少し休憩していくぞ」
森の中に開けた広場があって、そこには転移ポータルが設置してあった。
ここに来るまでのモンスターもレベル50後半で、俺達だと手に余るから来る機会はない気がするけど。
「ポータル登録もすんだら、一休みだな。それなりに疲れたしな」
「わかった。それで、ショットガンのテストはこの森の中で行うのか?」
「いや、この先、もう少しで森は途切れるんだ。そこは平原地帯だから、そこで試すつもりだ」
「ああ。森の中だと、射線が切られることが多いからな。トワさん達もショットガンの性能を見たいなら、平原のような遮るものがない場所の方がいいだろう?」
「それは確かに。それじゃあ、そこでショットガンの性能を見させてもらうぞ」
「お願いします。……あ、これ、飲み物です。どうぞ」
「おう、ありがとうな、嬢ちゃん」
「普通に振る舞われるのが★12の飲み物だというのに、驚かないのか、鉄鬼?」
「あ? 『ライブラリ』のメンバーなんだから普通じゃないか?」
「……そうだったな。少数精鋭の精鋭クランだったな」
「そういう訳じゃないんだけど。まあ、普段からユキの作る料理は★12だけど」
「普通はそんな料理を振る舞うものじゃないと思うのだが……」
「普段から練習をかねて作ってますので、遠慮なくどうぞ」
「……そうか。では、遠慮せずにいただこう」
「都合よく、バフ内容もINT上昇ってのがいいな。俺達にはなんの意味もない」
「DEXやSTRが上がると困ると思いましたので……」
「おう。気を使ってもらって悪いな」
こうして、普段からユキの作る料理になれていない2人にも飲み物を振る舞い、目的地の平原へと辿り着いた。
「よし。ここからがテストだ。次元弐、スキルは取ったか?」
「ああ。ショットガンを受け取った時に【ショットガン】スキルが解放された。しっかり覚えたから、大丈夫だ」
「わかった。ここから先も手出しはしなくて大丈夫だからな」
「了解、そこは戦闘系トップクラスクランの実力を見せてもらうよ」
「よろしくお願いしますね」
「おう、任せろ。次元弐、まずはショートバレルショットガンから試すぞ」
「了解だ。……準備OK。いつでもいいぞ」
「わかった、行くぞ」
準備の確認が終わった2人は、モンスターを探して移動を始める。
そんな2人の後をユキと一緒に付いていく。
「次元弐、11時方向、敵2」
「了解。いつでもいい」
程なくして、最初のモンスターを見つけたようだ。
鉄鬼の示した方向には、確かにモンスターが2体いた。
レベルは61、俺とユキだけでは倒すのも苦労しそうな相手である。
「行くぞ! ウォークライ!」
他にモンスターがいないことを確認して、鉄鬼がモンスター2体を引き寄せる。
引き寄せられたモンスター達の攻撃をしっかり受け止めて、盾役をしっかり務めている。
「……それじゃあ、まず1匹目だ」
次元弐がショートバレルショットガンを構え、片方のモンスターに狙いをつけ引き金を引く。
今回は特にスキルを使った攻撃ではなく、通常攻撃のようだ。
「……想像してたよりも攻撃力が高いじゃねぇか」
「そのようだ。やっぱり、最高級品は訳が違うな」
想定以上のダメージを与えているようだが、そんな事はお構いなしに2人は戦闘を続ける。
わざと距離を開けて撃ってみたり、スキルを使ってみる、わざと鉄鬼を巻き込むように撃ちこむなど、色々と試しているようだ。
その様子を見ていた感想だが……
「思ったよりも撃った後の反動が強いみたいだな」
「そうだね。次元弐さん、かなり振り回されている感じだね」
俺も試しているからわかるが、ショットガンは反動がとにかく大きい。
攻撃力が高くなるほど反動も強くなるから、あの武器の反動の強さは半端なものじゃないのだろう。
数回の戦闘で様々な検証を終えた2人は、俺達の方へ歩いてきた。
「どうだ、トワ。後ろから見てての感想は?」
「想像以上に反動が強そうだ。あとは……ヒットストップがかなり強かったように思える。ノックバック系スキルの効果も高そうだったな」
「そうか、俺達も同じような感想だ。攻撃力が想像以上だった事以外はな」
「ああ、俺も同じ感想だ。反動が強いことは、慣れるしかないだろうな」
「ちなみに、ショートバレルショットガンは【二刀流】スキルがあれば、二丁拳銃が出来るのか?」
「……俺は試してないな。出来たとしても、反動が強いから扱うのは大変だと思うぞ」
「一応聞いてみただけだ。次元弐、次はロングバレルショットガンだ」
「了解。事前に知っていたが、こっちは両手武器になるんだな」
「その辺はどっちにしろ変わらねぇだろ。あんな暴れん坊の銃を二丁拳銃にするのか?」
「……確かに。さて、装備の交換も済んだ。次に行くぞ」
「おうよ。トワ達ものんびり観戦しててくれや」
次元弐がロングバレルショットガンに装備を変えて、索敵を始めた。
そんな2人の後を歩きながら、2人の戦闘の様子を確認する。
さて、ロングバレルショットガンの使う様子だが……
「トワくん、ロングバレルショットガンも運用は大して変わらないのかな?」
「さて、何とも言えないな。次元弐が接近戦もできるみたいだから、参考にするのは難しい気がする」
「そうだよね。銃って遠距離武器だよね」
次元弐は最精鋭クランの一員だけあって、接近戦も難なくこなしている。
普通のガンナーじゃああいう戦い方は難しいから、参考にしていいものか。
こちらも数戦してから、鉄鬼達が戻ってきた。
「トワ、今度はどう思う?」
「次元弐のリアルスキルが高すぎて判断に困る。普通のガンナーじゃ、あんな近接戦闘は無理だろ?」
「……まあ、そうだよな。俺達としてはあの程度の立ち回りは普通なんだが」
「さすがに最上位クラスのクランメンバーを基準にするのはな……」
「だろうな。次元弐は使っていてどうだった?」
「やはり、ショートバレルショットガンよりも射程距離が長いというのは便利だな。そこ以外はショートバレルショットガンと同じように扱っていけばいいだろう。あとは、攻撃範囲の差も気にしなければいけないか」
「まあ、そんなところだろうな。それじゃあ、もうしばらく戦闘を続けるぞ」
「わかった。トワさん達は退屈かも知れないが、もうしばらく付き合ってくれ」
こうして、俺とユキは鉄鬼と次元弐の戦闘の様子を観戦する事になった。
初めて扱う武器でも数戦した後は難なく使いこなしているのは、さすがと言うしかないだろう。
1時間ほど観戦を続けた結果、俺達の手元に高品質なワイルドパンプキンはかなりの量が貯まっていた。
あっちの訓練が終わったら、お礼をしておかないとかな。
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