316.次元弐へのショットガン納品

 ロングバレルショットガンを色々試してみてから一夜明けて、金曜日。

 今日は次元弐にショットガンを納品する日だ。

 もっとも、納品するためのショットガン自体は既に完成している。

 次元弐にもメールを送っておいたので、後は本人が取りに来るのを待つだけである。


 待っている間は工房でポーション作りをしている事に。

 今日はユキも一緒に工房で料理を作っていた。


「トワくん、今日の予定ってどうなってるの?」


 ポーションを1セット作り終えて片付けをしていると、ユキから声をかけられた。


「そうだな……とりあえず、依頼されていた銃の納品があるからそれを終わらせなきゃだな」

「そっか。それが終わった後は?」

「特に予定はないぞ。どこか行きたい場所でもあるのか?」

「うん。ワイルドパンプキンをまた仕入れたいの。色々と試していたら、数が足りなくなってきちゃって」

「わかった。それなら、納品が終わってから一緒に狩りに行くか」

「うん、お願いね」


 これで今日の予定は埋まったかな。

 早いところ、次元弐が来ないかな。


「トワ、お客さんだよー。次元弐さんだってー」

「ああ、イリスか。わかった、すぐに行く」


 どうやら待ち人も来たようだ。

 俺は完成したショットガンを持ち、店舗の方へと向かった。


「お待たせしたかな」

「いや、そんなに待ってはいないさ。それで、頼んでいたモノはできているのか?」

「できてるから連絡したんだ。ここで話すのもなんだし、奥に行って話そうか」

「わかった。よろしく頼む」


 次元弐を伴い、談話室へと足を運ぶ。

 談話室には誰もいなかったので、ちょうどいいな。


「とりあえず適当に座ってくれ」

「ああ、わかった。それで、完成したショットガンはどんな感じになったんだ?」

「まあ、そう焦らないでくれ。今、見せるから」


 俺はインベントリからショットガンを2丁取り出す。

 頼まれていたショートバレルショットガンとロングバレルショットガンだ。


「さて、完成品はこんな感じだ。これで大丈夫か?」

「……大丈夫どころか期待以上の出来だな。ショートバレルショットガンのATKが657、ロングバレルショットガンでも403か」

「……まあ、練習用に作ったのもあるからな。いくつか作ってみて、一番攻撃力が高かったものを用意させてもらったよ」


 さすがに、一回ではこの攻撃力には出来なかった。

 なので、それぞれ5丁ずつ作ってみて、一番攻撃力が高くなったものを選んで渡している。


「そうなのか。……ちなみに、他の完成品の攻撃力はどれくらいなんだ?」

「ショートバレルショットガンで640から650、ロングバレルショットガンは390程度かな」

「……それでも十分だったんだが」

「まあ、自分でもどの程度になるのか試してなかったからな。その練習ついでだと思ってくれればいい」

「わかった。このショットガンにも強化結晶による強化をお願いしたいのだが」

「いいよ。今回はサービスって事で強化費用は銃の値段の中で発生したことにしておくよ」

「それは助かる。それでは、強化結晶はこれらなんだが、これらの中からいいものを選んで強化してもらえるか?」

「わかった。……うん、この6つで大丈夫だろう。それじゃあ、強化をするために工房に行こうか」

「ああ、了解した」


 結晶強化をするため、談話室から工房へと場所を移す。

 工房では相変わらず、ユキが料理をしていた。


「あ、トワくん。その人がお客様?」

「ああ。今回の武器の依頼人だ」

「初めまして、次元弐だ。よろしく」

「ユキです。よろしくお願いします」


 お互いに初対面だったようで、簡単に自己紹介をしていた。

 ……確かに次元弐がユキと接点を持っている可能性なんてないよな。


「それじゃあ、俺は結晶強化を始めるから」

「よろしくお願いする」

「私はお茶を用意するね」


 次元弐には適当に椅子に座って待っていてもらい、ユキは次元弐に飲み物をだしていた。

 結晶強化の方は1つあたり1分程度しかかからないので、6つ強化を終えるまでもそんなに時間はかからなかった。


「お待たせ。これが強化済みの銃だ」

「……やはり、結晶強化を施すとさらに凶悪になるな」

「凶悪というな。……強化結晶のランクも高いものばかりだし、普通のプレイヤーでは揃えられないようなものだからな。そういうものを作ってこその『ライブラリ』だ」

「……確かにそうなのかも知れないな。鉄鬼も最近はかなり強力な防具を作っている。それを考えればおかしくはないのか」

「そういうことだな。それじゃ、納品はこれで完了ということになるが構わないな」

「ああ、助かった。これが代金だ」

「……うん、確かに受け取った。メンテナンスが必要だったら、また声をかけてくれ。もっとも、修理だけならどうにでもなるだろうが」

「わかった。また何かあったらよろしく頼む」

「ああ。それじゃ、またな」

「あ、話は終わった?」


 俺達の会話が終わったのをユキが横で聞いていたらしい。


「ああ、これで受け渡し終了だ。そっちの準備は?」

「私の方も大丈夫だよ。早速だけど、行こう」

「うん? トワさん達はどこかに出かけるのか?」


 俺達の会話を聞いていた次元弐が俺に問いかけてくる。


「ああ、この後ワイルドパンプキンを集めに行くことになってるんだ」

「なるほど。何かアイテムと交換するのか?」

「いいや、アイテム交換はしないよ。料理用の食材として集めているからな」

「……そういえば、鉄鬼もパンプキンシールドとか言う謎の盾を作っていたな」

「……ああ、そういえば鍛冶の素材にもなるんだっけ。ワイルドパンプキン」

「そうらしいな。俺は生産職ではないから詳しくはわからないが……」

「俺も詳しくは調べてないな。少なくとも、ポーション素材には使えるようだけど」

「ますます謎が深まっていくな。ワイルドパンプキンは……」

「ゲームのアイテムだから深く考えたら負けだろうがな。……そういう訳だから、この後は狩りに行くんだよ」

「……そうか。もし邪魔ではなければ、その狩りに俺も同行して構わないか?」


 うん?

 いきなり何を言い出すんだろうか?


「……ユキ、どうする?」

「ええと……どうして一緒に来たいんですか?」


 確かにそこが一番重要だろうな。

 なんの理由も無しに、他人の狩りへと同行したいなんて言い出さないだろうし。


「もしよければ、新しい武器の性能試験をトワさんにも見てもらいたい。何か改善点も見つかるかも知れないしな」


 ……なるほど、実戦での性能テストか。

 確かにそれはやってみたいところだな。


「……ユキ、どうする?」

「それって、トワくんとしてはどうしたいの?」

「俺としては性能試験をしているところを見学したいかな。昨日、ロングバレルショットガンも色々と検証してみたけど、ショートバレルショットガンも含めて実戦では試した事がないから」

「……トワさんは自分のショットガンを持ってないのか?」

「俺の場合は接近戦でもハンドガンとかで対応出来るからな。それに、刀も扱えるから近接専用の銃を用意する意味が薄くて」

「なるほどな。俺の場合、近接戦闘は【格闘】スキルと【体術】スキル頼みだからショートバレルショットガンはありがたいんだが」

「そこは個人差だろう。ともかく、現時点ではショットガンを積極的に取りに行く意味がないのさ」

「そうか。そういうことなら、実際に使っているところを見てみたいんじゃないのか?」


 確かに、実戦でどういう使い方をするのかは見てみたいかな。

 そうなると、次元弐にも同行してもらった方がありがたい。


「……うん、俺としては、次元弐がどういう風にショットガンを使うのかを見てみたいかな」

「わかった。それじゃあ、次元弐さんにも一緒に来てもらおう」

「済まないな、二人で出かけるところを邪魔をしてしまったみたいで」

「気にしなくても大丈夫ですよ。デートというわけじゃありませんし」

「そう言ってもらえると助かる。俺は元々すぐに実戦テストをする予定だったから、いつでも出発できる準備は出来ている」

「わかった。それじゃ、行くとしようか」


 同行者が増えることになったカボチャ狩り。

 実戦でのショットガンを使った立ち回りは、見たことがないからワクワクするな。

 俺の方でも片付けを終えて出発準備を終えたとき、次元弐から申し訳なさそうな声がかかった。


「済まない、トワさん。もう一人、同行者を増やして構わないだろうか?」

「……誰が増えるんだ?」

「鉄鬼だ。鉄鬼から実際にショットガンで戦う様子を確認してみたいと、今連絡があった」

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