間章2.鈴鹿大地(ドワン)の一日
2話目はドワンのリアル側方面。
タイミングとしては260話の翌々日です。
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朝、アラームの音で目を覚ます。
「……ああ、今日からは特に急いで起きる必要もなかったな」
どうにもイベント期間で染みついた行動パターンというのはすぐには抜けなさそうだ。
準備期間と決戦日、併せて12日間もあったのだから仕方が無いか。
「今日の予定は何があったかな」
スケジューラーアプリを開いて今日の予定を確認してみる。
……ああ、今日は友達とリアルで遊びに行くんだったか。
男3人でカラオケとか何が楽しいのやら。
いや、女子がいれば楽しいって訳じゃないが。
「さて、『ドワン』の方の予定はどうなってたかな」
同じくスケジューラーを起動するが、こっちは
あっちはあっちで予定がびっしり埋まることもある。
同じクランのトワが受けてる程度まで受注を減らせばいいのだが……
「俺が受注制限をしたらいろんなところから不満が来るだろうしなぁ……」
Unlimited Worldの中で、俺は『ドワン』としてトップクラスの腕前を持った鍛冶士になっている。
俺より上の腕前を持った鍛冶士なんて数える程度だろう。
もっとも、両手の指よりは多いだろうが。
それなのに、いつの間にか鍛冶スキルで装備を作る事にハマりだして、気がついたら生産職トップクラスの仲間入りだ。
そもそも、βテストで生産職をやろうって人間が少なかったのもあるが、俺の作った装備は大人気だった。
元々、俺は物作りが好きだった。
小さい頃からジグソーパズルに始まり、プラモ作りや模型作りをやっていた。
高校の頃はボトルシップなんかも作ったな。
で、トップ生産職の一員になってからは色々と面倒な事が続く日々だった。
多くのクランから勧誘を受けたのだ。
個人的には好きなものを適当に作っていたかったので全て断っていたが、いつまで経っても勧誘合戦は終わらなかった。
そんな時に出会ったのが柚月だった。
柚月に誘われて、同じように勧誘疲れを起こしているプレイヤーが集まり『ライブラリ』を結成した。
トップとして勧誘されたのは、戦闘職としてもトップクラスだったトワ。
実務面は全て柚月達が引き受けるという話だったらしいが、βの時のトワは本当にクランマスターらしい行動をしてなかったな。
何でも色々忙しかったらしいが……実際、かなり忙しなく動き回ってたから、嘘ではないんだろうな。
『ライブラリ』を結成した後は、生産職同士で気ままに生産活動を楽しんでいた。
他のメンバーは気に入ったクランを見つけるとそっちに移籍していったが、俺は結局最後まで残った。
今更どこかのクランに所属してそこの鍛冶士として活動するよりは、『ライブラリ』の鍛冶士として腕を振るっていた方が気楽だからな。
『ライブラリ』は基本的に空気がゆるいから気楽でいいんだよ。
「……うーん、明日の夜に引き渡しが3件か。午前中は暇なんだし、少しログインして1つだけでも作っておきましょうかね」
午前中のスケジュールを決めると、VRギアを装着してベッドにまた横になる。
さて、午前中は『ドワン』で行きますか。
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「でだ、大地よ。
男3人でカラオケが終わった後、居酒屋に入ってお互い最近の生活について話し合っていた。
俺の場合は、
「ああ、面白いぞ? 鍛冶とかリアルじゃできない物作り体験ができてスッゲー楽しい」
「相変わらず、物作りが好きな男だよな。最近じゃプラモデルとかは作ってないのか?」
「ああ、そうだな……。最近だと、戦艦のプラモを作ってるところかな?」
「ゲームの中でも現実でも物作り三昧かよ。本当に好きだよな」
そう言われても、子供の頃からの趣味である以上そうそう変わるわけじゃない。
「まあ、こいつの物作り三昧はガキの頃から変わんないし。他にゲームで何かないのかよ? 例えば可愛い女の子がいるとかさ?」
可愛い女の子ねぇ……
「いないとは言わないが、ゲームだからリアルでも可愛いとは限らないぞ? それに、MMOでそういったことを前面に出してるヤツって嫌われるしな」
「少しぐらい出会いを求めてもいいだろうよ。……俺のやってるゲームは8割以上がヤローばかり何だからさ」
「VRFPSとか女子にはハードル高すぎんだろ。俺はVRMMORPGだけど、それなりに女子がいるぞ。まあ、大地の言うとおり出会い厨は嫌われるけどな」
「はぁ。俺もVRMMOにすればよかったかな。研究テーマとしてVRMMORPG以外もあってもいいかと思ってVRFPS選んだけど、完全実力主義な世界でつらいわー」
「まあ、頑張れよ。秋の文化祭でレポート発表すれば、次のテーマとして別ゲー選ぶ事も可能なんだしよ」
「……ようやくそれなりに戦えるようになってきたのに、今から別ゲーに乗り換えるのもなぁ」
「……なら、好きにしろよ。大地、レポートはどうなってる?」
「もう大体まとまってるぞ。まあ、あの教授のお眼鏡にかなうかはわからんけど」
そう、俺達3人が所属しているゼミの研究テーマはVRゲームだ。
各員、好きなゲームをプレイしてみてその感想や体感したこと、改善できそうな点などをまとめてレポートにするのがテーマだったりする。
VRゲームであれば何でもいいので好きなゲームを選ぶ事ができるのだが……ゼミの単位がかかっていると思うと手を抜けないのがな。
「確か、大地はそっちのゲームでトッププレイヤーの一人だったか? それなら色々と書くこともあるだろ?」
「まあな。レポートとしてはかなり大量になったぞ。……もっとも、レポートの量が多ければ簡単に通るって訳でもないらしいがな」
「先輩方の話だと、レポートの量より質を重視してるらしいからな。俺も色々やってるけど一発で通る自信ないわ」
「だよなぁ。最近だとVRゲームなんて五感全部が再現されてて当たり前、その上でどこまでリアルに近づけるか、あるいはリアルからかけ離れた体験ができるかだからな」
「そうそう。結局は、トッププレイヤーだからっていいレポートが書けるわけじゃないんだよ」
「だなぁ。このゼミに入れたときはゲームで単位がもらえてラッキーって思ってたけど、実際にレポートを書く側になってみるときっついわ」
「それでも、書き上げなきゃ単位をもらえないからな。頑張って書き上げるしかないだろうよ」
「結局はそうなるよなぁ。もっと気楽なゼミだと思ってたんだがなー」
「ぼやいていても結論は変わらないぞ。ともかく、レポートは第一回目の提出期限までにしっかりと作っておくことだな」
「うーい。でも、その前にイベントがあるからそっちにも気合入れんとなんだよな」
「こっちもイベントが終わったばかりだからあまり強いことは言えないが、イベントに時間をかけすぎてレポートを落とすなよ」
「わーってるって。ともかく、今日は飲んで食うぞ」
「はいはい。それじゃ、次は何を頼む?」
「うーむ、悩ましいな」
まあ、そんな感じで男3人の飲み会は進んでいった。
結局、発表が終わったら
まあ、知り合いなんだし、多少は手を貸してもいいだろうよ。
――――――――――――――――――――――――――――――
男3人でそれなりに飲んだ後、帰ってきてシャワーを浴びたら、ゲームの方のメッセージが届いてないかチェックだ。
急ぎの用事が入っていれば柚月あたりが連絡をくれるはずだしな。
幸い、今日は特に急ぎの用事はなかったようだ。
お酒を飲んだ後の没入型VR利用は非推奨行為だからな。
俺はそこまで飲んでないけど、急ぎの用事もないようだし今日はログインしないでおくか。
明日はスケジュール的にゲームとレポートに一日費やすことになりそうだけど、仕方が無いだろう。
さて、今日のところはこれで寝るとしよう。
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~あとがきのあとがき~
ドワンサイドのリアル側でした。
ドワンも『ライブラリ』初期メンバーの一人です。
と言うか、今のβ時からいる『ライブラリ』メンバーで初期メンバーじゃないのはイリスだけなんだよなぁ。
とりあえず、ドワンのパーソナルデータも公開します。
リアル名
大学のゲーム学科に通う大学3年生。
ゼミはVRゲームについての研究をする事が目的となっている
身長184センチで割とガッチリした体型。
ゼミのレポートを書く目的もあるためUnlimited Worldをプレイすることは、半分遊び、半分研究である。
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