221.エピローグ ~祭の終わり~

 白竜帝への装備の納品も終わり一段落した後、俺達はまた別行動をとる事になった。

 とは言っても、メインとして請け負っている仕事はやはりイベントレイドボスの装備作成らしい。

 イベントボスのドロップ品は要求レベルがとても高く、一般プレイヤーの手に負える代物ではないからだ。


 かく言う俺も銃製作の依頼を引き受ける事になり、それなりに忙しい日々を送る事になった。


 ちなみに、俺達がクエストとして作成した装備品類は、他の竜帝シリーズとともにイベントポイントでの入手が可能になる事が翌日の運営からのお知らせでわかった。

 他の竜帝シリーズも俺達が作った装備品と負けず劣らずの性能をしており、その差は特殊効果の違いがメインと言ったところである。

 白竜帝装備は物理・魔法の両方で攻撃出来る事に加えて追加で貫通ダメージがはいるといった特徴がある。

 それ以外の竜帝装備も、それぞれの竜帝毎の特色が現れた装備品ばかりで戦闘系プレイヤーは色々と目移りすることだろう。

 なお、竜帝装備の交換レートは10万ポイント以上が基本であり、高いものになると30万ポイントを超える事になる。

 そのため、プレイヤー達は確実にイベント限定装備を手に入れるためにポイントを稼ぐか、それともスキルチケットを目指すのか選択を迫られる事となっていた。

 なお、装備品の品質は★10~12で統一されており、今までのレイド産装備と比較しても遜色ない性能だったためかなりのプレイヤーがイベント装備の入手に駆け回る事になったらしい。

 情報元はうちの妹様。

 彼女達も普段は聖霊武器で戦っていたが、それとは別にサブウェポンとしていくつか武器がほしかったらしい。


 なお、各竜帝討伐時のドロップ素材を使った装備品作成は、基本的に各竜帝装備と同じ物が出来る。

 複数の竜帝素材を混ぜ合わせて作った場合のみ特殊装備が出来る事になるが、この装備品が中途半端な性能になる事が多く製作者サイドとしては頭を抱える事態になった。


 そして、レイドボスである五竜帝だが、夏休みが終わった後でも戦えるようになるらしい。

 9月以降の毎週土日のみの開放ではあるが、五竜帝と戦えるようにすると運営からお知らせが発表された。

 五竜帝装備がユーザーから好評らしく、夏休みイベント後も手に入るようにしてほしい、という要望に応える形となったのだ。

 ただし、イベント期間中のようにポイントは手に入らず、装備の直接ドロップか素材を集めて装備を生産するかのいずれかになるとのことだ。


 そんな夏休みイベント前半のラストスパートが行われている中、俺がどう過ごしていたかというと、先程述べたとおりに竜帝素材の持ち込みから装備を作る他、ドラゴニュートの里に出かけてツキカゲ流刀術の修練を行ったり、イベントポイントを稼ぐために各種ポーション類を販売したりしていた。

 なぜイベントポイントを稼いでいたかというとイニアブレイクを手に入れたかったからだ。

 イニアブレイクをそのまま使うのではなく、聖霊武器に融合させて出来ればダメージ貫通効果を入手できないかと考えたためである。

 とはいえ、イニアブレイクの交換に必要なイベントポイントは28万だったわけで……それなりに苦労する事となった。

 もっとも、苦労とは言っても俺の場合はポーションを販売すれば良かった訳なのだが。

 普段は店売りしない高品質ポーションやらカラーポーションを放出すれば、割と簡単に集まった。

 高品質ポーションやカラーポーションの作り方を聞いてくる輩もかなりの数がいたが、面倒なので『弟子入りクエストを進行させればわかる』とだけ伝えて追い払った。


 そんなわけで無事イニアブレイクの交換も完了して建御雷に合成してみた。

 すると追加貫通ダメージ2%と攻撃属性に光と神聖が追加された。

 強力な装備を聖霊武器に合成すると攻撃属性も追加されるのかと考え、氷鬼素材で★12のマギマグナムを追加作成して建御雷と融合してみたが、こちらでは攻撃属性は追加されなかった。

 試しにイベントポイントでさらに別の竜帝装備を入手して合成してみたが、結果としては属性も追加効果も増えなかった。

 条件がわからないため教授に情報を渡して実験してもらったが、属性の追加に成功したりしなかったりとイマイチはっきりしない内容になったらしい。

 2種類のイベント装備から属性や追加効果を引き継げたプレイヤーもいれば、1種類しか引き継げなかったプレイヤーもいたらしい。

 とりあえず、検証出来た限りでは1種類の属性および追加効果を引き継ぐ事には成功していたらしいので、その情報を売りに出したところ、かなりの額を稼ぐ事に成功したらしい。

 相変わらずちゃっかりしていると言ったところか。


 ツキカゲ流刀術については地道に修行を重ねてようやくスキルレベル4まで到達した。

 スキルレベル0から始まったから何かあるんだろうなとは思っていたが、スキルレベルが1上がるごとにスキルを1つ覚えるというシステムらしい。

 教授に聞いてみると、他にも似たようなスキルは存在しており、スキルレベルが1または2上がるごとに新しいスキルを覚えるというのが一般的らしい。

 そう言う意味では『上級魔術を超えた先にある超級魔術系のスキルが1種類しかスキルを覚えられない』のも気になるらしいが、そちらについての情報はまだ出回っていないらしい。

 魔法王国かエルフの国が怪しいという事ではあったが、そちらの調査は一向に進んでいないとか。

 教授達も最近は夏休みイベントの方に時間をかけていたらしい。


 他にこの一週間ちょっとで進んだイベントと言えば、ジパンでのガンナーギルドイベントが無事に終了したという事か。

 ユニークシークレットチェインクエストという事で続きがあるのか楽しみにしていたが、そちらの方は続きがなかった。

 ただ、『状況が落ち着いたらまた何か頼むかも』とは言われたのでそちらがクエストの続きになるのだろう。


 また、魔法錬金術士のクエストも終了させてジョブレベルもカンストしており、さらに中級錬金術士のジョブレベルもカンストしていた。

 これらは輝竜装備を作っていた間に終わらせたことだったが、やっぱり輝竜装備の経験値は群を抜いて多かったという事らしい。


 それから、サザンさんが王都へとやってきた。

 元々は王都にいたらしいし『帰ってきた』と言うべきかもしれない。

 サザンさんが王都に到着した事でマギマグナムのNPC販売が開放された。

 ★5以上の物しか売っていないのでNPC売りにしては割高だが、まだまだ入手経路に乏しいマギマグナムの販売は一般プレイヤーにとっては嬉しい事だろう。


 さて、そんなこんなでやるべき事はおおよそ片付けてしまった俺であるが、何をしているかというとジパンにあるマイホームでセイメイ殿からもらった陰陽術の巻物を解読しているところだ。

 こちらについても、もらってから地道に解読作業を続けてはいるのだが一向に終わりが見えない。

【言語学】スキルがじりじり上がっているあたり、かなり難解な書物である事は間違いないのだが。

 ここまでで読み取れた内容は全体の6割前後と言ったところか。


「トワくん、そろそろ休憩にしない? あまり根を詰めすぎ過ぎても疲れちゃうだけだよ?」

「うん? そんなに時間が経ってたのか」


 時計を確認すると、巻物の解読を始めてから2時間ちょっと経過していた。

 確かにこれは疲れもたまってくるだろうな。


「トワくんも休憩してこっちで遊ぼうよ。モフモフが沢山だよ」

「……まあ沢山ではあるがな」


 そう、今現在、ジパンのマイホームはモフモフ天国と言ってもいいほどモフモフ、つまりは大量のペットにあふれていた。

 俺もユキも消耗品でのポイント交換でイベントポイントが余っていたのだが、それらのポイントを使ってホーム用のペットを手に入れていた。

 ペットの種類も豆柴やらイエネコ、玉兎に小狐、フクロウなどなど色々種類がいるところに色違いバージョンなども取りそろえられていた。

 そして、先程も言っていた通り、俺とユキはポイントを余らせていた。

 何が言いたいかというと、余っていたポイントをフル活用してペットをフルコンプしたのである。

 それも2人揃って別々のペットを手に入れるなどと言った事はせずに、2人ともフルコンプしたのだ。

 ペットはプレイヤーがホームにいない間は配置可能数が限られている。

 それにプレイヤー不在時の配置可能数は眷属が優先的に消費してしまうので、普段の数はそれほどでもない。

 だが、ホームにプレイヤーがいるときは別の話で、簡単に言ってしまえばホーム滞在時には無制限にペットを出す事が出来る。

 同じペットは1種類しか持てないという制限はあるが、逆を言えば2人であれば2匹ずつ手に入れる事が出来るという事で……

 何が言いたいかというと、2人でそれぞれが持っているペットを全て出してしまえば現在のようなモフモフの山を築くことが可能になるわけだ。

 なお、余ったイベントポイントは家具などのホームオブジェクトに交換し、それでも余った分については後半戦に持ち越しである。


「うーん、いいよね、モフモフ。家じゃ簡単にペットなんて飼えないからとっても癒やされるよ」

「それは良かった。……ただ、流石に出し過ぎじゃないのか?」


 ユキに求められるままに俺も全てのペットを呼び出しているんだから強くは言えないが、犬に猫、兎、狐などなど様々なペットに囲まれているユキはトロンとした表情を浮かべている。


「……ユキ、何か疲れた事でもあったのか?」

「疲れた事? あえて言うならリクの宿題かな?」

「……あいつ、まだ終わってなかったのか」

「大丈夫だよ、昨日までに全部終わらせてたから」

「それなら構わないが、大変だったんじゃないか?」

「うん、大変だったよ。だからモフモフに癒やされてるんだよ」

「……そっか、ならこれ以上は何も言わないが、ほどほどにな」

「うん、わかった。……それで、陰陽術の巻物の方はどれくらい進んだの?」

「うーん、良くて6割と言ったところか。想像以上に難解な書物だよ」

「そっか。覚える事が出来ればトワくんの戦力アップにつながると思ったのに」

「そこまで簡単に進まないって。それに俺は戦闘系プレイヤーじゃないから、そこまで攻撃スキルを増やしてもな」

「トワくんの強さは戦闘系プレイヤーとしても十分に通用すると思うんだけどね。……それよりも明日のイベントには本当に参加しないの?」

「ああ、する予定はないな」


 明日のイベント。

 夏休み前半イベントの最終日に大規模レイドイベントが発生するという、運営からのお知らせがあったのだ。

 夏休み前半のイベントはこれで最後になるため、ラストスパートとしてイベントポイントを稼ごうというプレイヤーはやる気に満ちあふれている。

 このレイドイベント中はデスペナルティも一切存在しないという事から、最後の大逆転に挑む者、単純にお祭り騒ぎを楽しみたい者など参加目的もそれぞれでバラバラだ。


「俺の場合は墓参りもあるからな。夜の部なら参加出来なくもないが……正直、明日はログインする予定はあまりないな」

「うーん、ログインもしないの?」

「夜にはログインするかもしれないけど昼間は無理だな。夜も疲れていたらログインするつもりはないし」

「そっか。それなら仕方が無いよね」

「別に俺に遠慮せずにユキとリクだけでも参加してきて構わないぞ?」

「うーん、私もあまり興味ないかな。リクもなんだか不参加って言ってた気がするし」

「そうか。まあ、気が向いたらやって見るといいさ」

「気が向いたらね。今はこのモフモフが離れがたい」

「……程々にな」


 またモフモフ天国の住人となったユキから目をそらし、屋敷の畑の様子を眺める。

 今は畑の一部に水田を用意してお米を育てている。

 ゲーム内時間6日で収穫出来るそれは、黄金色の稲穂をしていた。

 もうすぐ収穫可能だろう。


 夏休みの終わりも間近に近づく中、俺達の夏休み前半イベントは終わりを迎えるのだった。



**********


~あとがきのあとがき~



これにて夏休みイベント前半をメインとした第6章も終了となります。

竜帝装備完成後のあれこれを書くべきか、それともサクッとスキップして終わらせるのか。

非常に悩んだ結果、1ヶ月以上筆が進まないという状況に陥ったりもしましたが何とか6章を終了させる事が出来ました。


この後は断章を挟み第7章へと進んでいきます。


最後にいつものトワのステータス公開をします。

今回の章では一部スキル以外はあまり伸びてないかも。


名前:トワ 種族:狐獣人 種族Lv.57

職業:メイン:ハイマギガンナーLv.29

    サブ:中級錬金術士Lv.30 MAX

HP:336/336 MP:651/651 ST:322/322

STR:18 VIT: 48 DEX:78

AGI:48 INT:102 MND:62

BP: 8 SP:163

スキル

戦闘:

【剣Lv30 MAX】【刀Lv24】【斧Lv30 MAX】【片手斧Lv8】【銃Lv30 MAX】

【ハンドガンLv41】【ライフルLv44】【マナカノンLv39】【マギマグナムLv45】

【格闘Lv30 MAX】【体術Lv10】【テンペストショットLv29】【エコースペルLv15】

【ツキカゲ流刀術Lv4】【マジックブレイクLv3】

魔法:

【炎魔術Lv25】【海魔術Lv26】【嵐魔術Lv28】【雷鳴魔術Lv44】【氷雪魔術Lv25】

【神聖魔術Lv45】【魔導の真理Lv50】

生産:

【上級錬金術Lv18】【上級調合術Lv5】【料理Lv24】【生産ⅡLv70】

【道具作成Lv32】【家具作成Lv31】【魔石強化Lv69】

【生産製造数増加Lv38】【調合の極意Lv41】【錬金術の極意Lv50 MAX】

その他:

【気配察知ⅡLv26】【魔力感知ⅡLv26】【夜目Lv51】【隠蔽Lv65】【看破Lv65】

【罠発見Lv47】【罠解除Lv47】【罠作成Lv1】【奇襲ⅡLv31】【隠密ⅡLv18】

【採取Lv46】【伐採ⅡLv8】【採掘ⅡLv7】【言語学Lv37】【集中ⅡLv40】

【アーマーチェンジLv2】【聖霊開放Lv11】【ウェポンチェンジLv9】

【器用さ上昇ⅢLv22】【敏捷性上昇ⅡLv8】【知力上昇ⅡLv17】【精神力上昇ⅡLv25】

【ホークアイLv40】【ダッシュLv20】【ハイジャンプLv10】【空中動作Lv10】

特殊

【AGI上昇効果・小】【INT上昇効果・小】【INT上昇効果・中】

【雷属性効果上昇・中】【風属性効果上昇・微】【火属性効果上昇・微】

【雷属性耐性・中】【風属性耐性・微】【火属性耐性・微】

【二刀流】【眷属召喚】【魔石鑑定】【聖霊石合成】【聖霊武器修理】【聖霊武器強化】

【魔力操作】【気力操作】【アクセサリー錬成】

眷属

【神狼・フェンリル(亜成体)Lv30】【猫妖精・ケットシー(一般)Lv18】【雷鳴の中級精霊Lv22】

称号

【初心者講習免許皆伝】【雷精霊の祝福】【かつての英雄に連なる者】

【上級錬金術士】【上級調合士】【魔導を求める者】

【眷属を従える者】【神狼に打ち勝ちし者】【妖精郷の解放者】

【神狼の導き手】【猫妖精の導き手】【精霊の導き手】【聖霊と共に歩むもの】

【妖精郷の来訪者】【星見の開門者】【第1回武闘大会マイスタークラス優勝者】

ギルドランク

 ガンナーギルド:14 生産ギルド:12 錬金術ギルド:15 調合ギルド:14

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