163.古代神殿 1

という訳でレベリング回。

今回はさっくり終わらせる予定。


**********


 錬金アクセサリーの作成も無事に終わり、その性能についても評価が出た。

 ぶっちゃけ★10ランクではコスパが微妙という結論だ。

 ただそれであっても、今装備しているアクセサリーより強力な装備であることは間違いなかったため、全員のアクセサリー装備を錬金アクセサリーに入れ替えることにした。

 なお、宝石代が自腹と言うことなのでメンバー間での金銭のやりとりは発生していない。


 さて、そんな準備に都合2日かけてやってきたのは、古代神殿ダンジョン。

 正式名称は忘れた。

 そんな全てのダンジョンの正式名称を覚えていられるほど、俺もダンジョンに詳しくはない。


「さて、白狼さん情報によるとここの敵が私達にとってはおいしいのよね?」


 柚月が念のためと言わんばかりに確認をとってくる。


「そうだな、ここのメインは墓地と同じくアンデッド系が主で、それに魔法生物が一部混ざるといったところか」

「トワくん、具体的にはどんな敵がでるの?」

「一番多い敵はリビングアーマーって言うアンデッド系のモンスターだな。その名前の通り、動く鎧だ。そのほかには、魔法生物系のモンスターでリビングドール、あとは墓地にいた霊体系モンスターの強化版と言ったところかな」

「それじゃー有効属性はー?」

「リビングドール以外は相変わらず神聖属性が有効だな。リビングドールについては……種類によって弱点が異なるが、火、水、風、土のいずれかだな」

「じゃあ要注意なのはリビングドールだけって事かしら?」

「んー、序盤だけならそんな感じだと思う。ただ、奥の方に入っていくと魔法生物系のモンスターの割合が増えるらしいけど」

「ほう。例えばどんなのがでるのじゃ?」

「まずはミニゴーレム。体高2メートル程度のゴーレムだな。それにガーゴイル。その辺に設置されている石像が急に襲ってくるらしい。あとは……神殿の守護者っていう魔法生物系のモンスターもいたかな」

「神殿の守護者ねぇ。名前だけ聞くと大層な存在のようだけど……」

「実際には神殿の守護をしていた魔法生物が暴走してモンスター化したという話らしいな」

「結局はモンスターなのね?」

「ああ、モンスターだ。ただ、レベルが60台とかなり高いから俺達が相手をすることはないだろうな」

「それもそうね。それで、今日の目標は?」

「とりあえず初日だしな。ここのモンスターとの戦闘訓練をメインでやっていこうか」

「承知した。それで今日のタンクはプロキオンかのう?」

「……そうだな。慣れていないとユキが危ないし、プロキオンに任せるか」


 ちなみにユキにはフェザーシリーズの他に、VITとMNDが上昇するアクセサリーもプレゼントしている。

 アクセサリー装備箇所を4カ所も埋めてしまうが、その代わりVITとMNDを250以上も上げてくれるそれらのアクセはタンクをするときに役立つだろう。


「それじゃあ現地に着いたらプロちゃんを喚びますね」

「ああ、頼んだ。……他に質問はあるか?」

「特にないわね。そろそろ行きましょうか」

「そうじゃのう。行くとしよう」

「さんせー。じゃあしゅっぱーつ」


 イリスが最終的に号令をかける形となり、俺達は古代神殿へと赴く事となった。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 古代神殿に行くにしても、まだ古代神殿前のポータルは開放していない。

 従って最寄りのポータル、つまりは墓地ダンジョンの最深部から古代神殿までは歩きだ。


「どうせ来る事になるなら事前にポータルだけでも開通させておけばよかったわね」


 柚月がぼやくが、そうは言っても実際に来ることになるとは考えていなかったのだからしょうがないだろう。

 そうしてあまり広くない洞穴を歩くことしばし、不意に広い空間へと道がつながっていた。


「あれが古代神殿なんだ……」


 ユキが古代神殿を眺めて感嘆している。

 確かに、地下の巨大な空間にそびえ立つ白亜の神殿は美しい光景である。

 今立っている場所が、神殿の入口よりも高い崖の上というのも全景を見渡す上で役に立っていると言えるだろう。


「確かに綺麗だけど、あの中ってモンスターがうじゃうじゃいるのよね?」

「ああ。ところ狭しという訳ではないけど、かなりの数のモンスターが生息しているな。しかも現時点では最上級クラスに匹敵するボスも3体いるしな」

「見た目にだまされると足をすくわれるという事じゃのう」

「気をつけていかないとねー」

「そもそも、神殿に降り立つまでの道も狭いし気をつけて降りないとね……」

「それじゃあ、行きましょうか」


 ここら辺はセーフティエリアなのでモンスターは出現しないはずだが、念のためと言うことで隊列を組んで降りていく。

 先頭にプロキオン、以下、ユキ、俺、柚月、イリス、ドワンだ。

 崖にジグザグに作られた道を進んでいき、30分ほどで神殿前までたどり着く。

 神殿前には数パーティほどが待機しており、これから攻略を始めようとしているパーティもあれば、今帰ってきたばかりで消耗具合や戦利品の確認を行っているパーティなどその様子は様々だ。

 やはり、実入りの少ない墓地ダンジョンとは異なり、様々なドロップが狙える上にモンスターレベルの幅も広い古代神殿はそれなりの人気があるらしい。


「おい、そこの兄ちゃん達、ポーションを買っていかないか? 中のモンスターどもは色々な状態異常を仕掛けてくる強敵揃いだぜ」


 露天商の1人がこちらに向けて、商品のアピールをしてくる。

 売っているポーションを眺めてみたが、市場価格からすると3倍程度だな。

 ……出張露店と考えるとこれでも安い方なのだろうか?


「兄ちゃん、買うのか買わないのかどっちなんだ?」


 商品の値段を眺めていたので購入予定と勘違いされたらしい。


「悪いけどポーションは間に合ってるんでね。ただの冷やかしだよ」

「そうか。それは一向に構わないが、中のモンスターどもの餌食にならないように気をつけな」

「ああ、そうさせてもらうよ」


 露天商に別れを告げて神殿前広場を改めて見渡す。

 崖の上からでは気付かなかったが、神殿前にはいくつかの露店が建ち並んでいた。

 先ほどのようにポーションなどの消耗品を販売する店や装備の修理をする店などだ。

 やはり、それなりにおいしいダンジョンと言うことなのだろう。

 出来る限り街には戻らず、経験値を稼ぎたいというプレイヤーがいて、そう言ったプレイヤー相手にこのような露店が商売をすると言ったところか。


「トワ、早くポータル登録をしてダンジョンに行くわよ」

「わかった。すぐそっちに行くよ」


 周りを眺めてる間に少し間が離れてしまった仲間達に小走りで追いつき、全員でポータル登録を済ませる。

 これで、次にこのダンジョンを訪れるときは直接ここに来ることが出来る。


 ……さて、フェンリル持ちが多少は増えてきたため目立つ機会は減ってきているが、それでも狼連れのプレイヤーって言うのは目立つものらしい。

 周囲から好奇の視線を感じてしまう。

 早いところ、ダンジョン内に入ってしまおう。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――



 神殿の門に触れれば、そこは既に神殿の中。

 まずは1階エントランスホールから攻略開始である。


 エントランスの敵は……大体4グループに分かれており、1グループは2~3体といったところか。

 敵のレベルは46から47、入口だというのにこちらのレベルを軽く超えてきている。


「トワ、敵のレベルはどんな感じなの?」

「レベル46から47だな。入口からそれなりに高いレベルの敵が出てくるらしいぞ」

「そう……それじゃあ、まずは様子見として全員で当たってみることにしましょうか」

「それが良いだろう。……よし、全員の武器にホーリーウェポンはかかったな。それじゃあ、まずは俺が一撃当てて1グループ釣り出すとしよう」


 俺は黒牙を構えて一番近くにいる敵グループの1体、イビルスケルトンに狙いを定める。

 ……イビルスケルトンって確か、レアドロップで痛んだダマスカスの剣を落とすから『骨版ダマスカス鉱脈』とか呼ばれてたよな……

 とりとめの無いことを考えつつも狙いを慎重に定めて……ハイチャージバレット発射!

 ハイチャージバレットの弾丸に撃ち抜かれたイビルスケルトンは一撃の下に塵に帰り、残りのモンスター2体がこちらに向けて突っこんでくる。

 さすがに、ライフルばかり使うわけにも行かないので、ハンドガンに持ち替えて残りの敵の迎撃準備を行う。

 まずは定石通りプロキオンがヘイトを集め、そこをアタッカー陣が攻めるのだが……さすがに2体しか残っていなかっただけもありすぐに全滅してしまう。


「さすがに少数だけあってあっけないわね。次行きましょう、次」

「ああ、わかった。それじゃあ黒牙で釣り出してっと……」


 次のグループは魔法生物のリビングドール。

 神聖属性特攻はないが、ハイチャージバレットを叩きこむとやはり一撃で倒せてしまった。

 あとは、残った1体を処理するだけなので、この戦闘もすぐに終わることに。


「……なんだかずいぶんとあっけないわね」

「……トワの攻撃力が高すぎるのじゃろう。どれ、次はわしが釣り出してみることにしよう」


 次のグループに対する戦闘では黒牙による先制攻撃はなしで、ドワンのシールドブーメランによる攻撃から開始した。

 やはりシールドブーメランは攻撃力が低いため、敵のHPはほとんど削れず3体ともこちらに向かってくる。

 今回の戦闘ではこのままドワンがタンクを務めるらしく、プロキオンは攻撃に回ることとなった。

 ドワンはリビングアーマーの攻撃を上手く盾で防ぎながら立ち回っており、ダメージ量も問題ない範囲で収まっている。

 先制攻撃で数を減らせなかった分、多少の時間はかかってしまったが、リビングアーマー3体も難なく撃破することが出来た。


「ふむ、レベルが高いとは聞いていたが……この程度じゃったか」

「まあ、まだ入口だしな。エントランスを抜けて、大聖堂の敵まではほとんど同じような構成らしいぞ」

「へぇ、そうなのね。それならタンクはドワンでも務まりそうね。ユキ、トワ。プロキオンとシリウスを交代させましょう」

「わかりました。プロキオン、送還」

「シリウス召喚! でも、入れ替えるなんてどうしてだ?」

「単純にレベルの問題よ。普段、プロキオンしか使ってなかったからプロキオンの方がレベルが高いんじゃないかしら?」

「そうですね……プロちゃんは亜成体のレベル20になってますね」

「そこまでか……シリウスはまだ亜成体のレベル8だな……フェンリルは召喚してないと経験値入らないみたいだし、大分差を付けられてるな」

「そう言う訳だから、しばらくはシリウスのレベル上げをした方がいいと思ってね。あともう少し試したいことがあるけど、それはまた後で試してみるわ」

「取り合えず了解。ここからは頼むぞ、シリウス」

「ワオン!」


 タンク役をプロキオンからドワンへと引き継ぎ、プロキオンとシリウスを入れ替えた俺達は残っていた最後の1グループも撃破。

 ひとまずはエントランスホールの制圧が完了した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る