150.『ライブラリ』にて
午前中のログインが終わって昼食等を済ませて午後のログイン。
ちょうど都合のいいことに『ライブラリ』全員がログインしていたため、『技の羅針盤』について説明することにした。
「技の羅針盤ねぇ……確かに裁縫ギルドに行ったときに何かあるようなことを仄めかされてたけど」
「そうなのか。ちなみに皆は生産系職業ギルドギルドのランクはいくつなんだ?」
「私は13よ」
「わしも13じゃな」
「ボクもー」
「私もです」
「つまり俺以外は全員13という訳か」
「そう言う事ね。もっとも、私達はそんなにギルドからのクエストを受けてるわけじゃないんだけどね」
「そうじゃの。ほとんどは生産品に対する評価からのランクアップじゃわい」
「でも、そんなシステムがあるとなるとギルドクエストもこなした方が良さそうだよね-」
「そうですね。特化型ジョブの特性を好きに使えるようになるのって、すごい恩恵ですよね」
「確かにのう。武器を作るときは武器職人に、防具を作るときは防具職人になればいいんじゃからのう」
「確かにその通りよね。ただ、そこまで便利なシステムとなると、他に何か制限がついていそうな気もするんだけど……」
「そこまで詳しい話は聞けてないな。少なくともまだ手に入らないみたいだし、準備期間だと思って生産系ギルドのランクを上げておいた方がいいだろうな」
「それもそうね。そう言えば生産ギルドのランクって皆どれくらい?」
「生産ギルド? そう言われると最近行ってないが……ランク12で止まってるな」
「わしも12じゃの」
「ボクも12だよ。ちなみに、昨日生産ギルドに行ってるから最新だと思うんだけどねー」
「私も12ですね。これって何か意味があるんでしょうか?」
「……なんとも言えないところよね。上限としては中途半端なんだけど、市場に出すときの手数料とかを考えると、これ以上上がらないって言われても納得できるし……」
そうなんだよな、もう市場の手数料はこれ以上下がる気がしないんだよな。
市場、つまりマーケットを使う時の手数料は生産ギルドのランクが上がる毎に少しずつ下がっていき、ランク12となった今は手数料が5%まで下がっていた。
さすがにこれ以上下がることはなさそうだし、生産ギルドのランクはこれで打ち止めだと言われても納得できる。
別に手数料以外の恩恵というものはない訳なのだからな。
「……まあ、何となくすっきりしないのも落ち着かないわよね。私が後で生産ギルドに行って確かめてみるわ。上限だったらそれもよし、何か特別なクエストをこなさないと上がらないならそれもまたよしな訳だし」
「じゃあ、そっちは任せた。他に何か話あっておいた方がいいことってあったっけ?」
「そうじゃのう……トワよ、確か生産系のジョブに関してのキーアイテムが技の羅針盤だったな。それは戦闘系にもあるのかの?」
「あるらしいぞ。名前は『力の羅針盤』で、こっちもギルドランク14からの予定らしい」
「ギルドランク14か……生産系ギルドとは違って戦闘系ギルドはほとんど上げていないのでのう……正直、無理じゃの」
「うーん、ボクは時々行くようにしてたけどそれでもまだ10だからねー。先が長そうだよ」
「……イリス、あなた戦闘系ギルドにも行ってたのね……私なんてまだ4よ」
「私は12まで何とか上がりました。消耗品の製作クエストがあったのでそれを利用すれば結構上がりますよ?」
「ボクもアーチャーギルドで弓の製造依頼をこなしてランク上げしてるよー。なかなか貢献度のたまり方がよくって助かるんだよねー」
「ふむ……そうなるとウォーリアーギルドにも似たようなクエストがあるかもしれんのう」
「魔術士ギルドにもあるかも知れないけど……正直、私は生産系しか余り上げる気がないしそっちはパスでいいわ」
「多分だけど、SPは上げた分だけ多めにもらえるぞ?」
「うっ…………わかったわよ。とりあえずどんなクエストがあるかだけ確認してくるわ」
「まあ、それがいいじゃろう。他には何かあったかのう?」
他の議題か……
どうせならあれを聞いてみようかな。
「なあ、柚月。店の方で売るポーション類のランクを9まで上げたいんだけど」
「……それについてはもうしばらく様子を見ましょう。はっきり言って『
「そうは言われてもな……ポーションの品質を下げるのがだんだん難しくなってきてるんだよ」
「それってどういうこと?」
「多分、スキルレベルの上昇の他に武闘大会の時の称号や【調合の極意】スキルの影響があると思う。普通に作っても★11が出来たりするからな。はっきり言って、★7から8に抑えるのはかなりきついぞ」
「……仕方が無いわね。それなら中級調合セットを別口で買いましょう。そうすれば上限が★8になるから問題ないでしょう?」
「……確かにそれは考えたが、もったいなくないか?」
「たかだか10万程度の出費でしょう、たいした問題じゃないわ。ただ、そうなると設置場所を別の部屋にしないといけなくなるわよね」
「まあ、そうだな。工房における生産セットの数は最高で3つっていう制限があるからな」
「それならば空き部屋になっている1部屋を工房に改築してしまって、そこに置けば問題ないじゃろう。どうせクラン資金は山のようにあるわけじゃからな。たまには使わんとどうしようもない」
「……そういえば今のクラン資金ってどれくらい貯まってるんだ? 5月中に柚月から指示された通り、クラン口座への振り分け額を5%まで下げたけど」
「……普通に数十メガ単位で貯まってるわよ。このままじゃそのうち百メガに到達するから振り分け額を下げたのよ」
「……それはまた貯まっているな」
「それだけ『ライブラリ』として見た場合の売上額は多いのよ。という訳だから、空き部屋の改装と中級調合セットの購入は決定ね。他の皆は大丈夫かしら?」
「まあ、問題ないのう」
「そんな贅沢な悩みなんて普通でないしねー」
「私も普通に品質は抑えられますから大丈夫です」
「それじゃあ、決定ね。他に何もなければ、ホーム屋と生産ギルドに行ってくるけど何かあるかしら?」
「俺からはもうないな」
「わしもない」
「ボクもないよー」
「私からもありません」
「それじゃあ今回の話し合いはこれで終了ね。それじゃ、私は出かけてくるわ」
「うむ、気をつけての」
「気をつける要素がないんだけどね。それじゃあ、また夜に」
「ばいばーい」
話し合いがまとまったため、柚月は出かけていった。
さて、手持ち無沙汰になってしまったが俺はどうしようか……
「そう言えばトワ。例のライフルの件、どうするのじゃ?」
「ライフル? ……ああ、オーダーの件か。さて、どうしたものか」
レイド攻略なんて予定が入ってしまったからな。
早く終わらせられるものについては、早めに終わらせてしまいたい。
とはいえ、材料がないことには作れないしなぁ……
「銃身用のダマスカスがまだ手に入ってないんだろう? ならまだ先でいいんじゃないのか? 期限にしている日付だってまだ先なんだし」
「とはいえ、この先もレイドアタックは続けるのじゃろう? そちらの装備を作る事も考えれば、そうのんびりしている訳にもいくまいて」
「確かにそうだがな……無駄に高い物を市場で買う必要もないだろう? とりあえず『白夜』でどれくらい時間がかかるかだけ確認を取ってみよう」
「それもそうじゃの。今晩にでも確認してみるとしよう」
確か、装備の発注には参加しない予定らしいけど今晩も白狼さんは来る予定だったからな。
そのときで問題ないだろう。
「さて、それではわしはそれ以外のオーダーを処理してくるとしよう」
「ん、わかった。俺は……少し特殊ポーションを作ってからリアルの用事でも片付けてくるかな」
商品在庫の補充は柚月が戻ってからの方が効率がいいだろう。
なら、俺はリアルに戻ってやれることを前倒しにしてやってしまった方がいいか。
「了解した。柚月に何か聞かれたらそう答えておこう。それではの」
「ああ、また夜に」
「今日は私も落ちますね。少しリアルの方で片付けて置きたいことがありますので……」
「そちらも了解した。夜はまた来るのかの?」
「はい。来られそうだったら来るようにします」
「わかった。まあ、無理することはない。出来る範囲でな」
「はいわかりました。それでは失礼します」
ユキは一足先にログアウトしていった。
さて、俺もやることを済ませてログアウトしてしまおう。
俺はマーケットボードで素材を買い集めてから自分の工房へと戻り、各種特殊ポーションの作成に取りかかる。
特殊ポーションの類いは素材が安い割に経験値が高いから地味においしいんだよな。
とりあえず練習の間は数を最小数にして、品質が安定してきたら作成量を増やすか……
特殊ポーションの作成も称号とスキルの効果があってか、すぐに品質が安定しはじめる。
……うん、1時間ほどで★9まで到達して安定するようになったな。
我ながら早すぎるとは思うけど、DEXポーションやアンチマジックポーション、レジストマジックポーションを散々作ってきたからな、その分が考慮されてるんだろうと思いたい。
サンプルとして渡せるよう、攻撃力に直接影響があるSTRポーションとINTポーションをある程度作り置きして終了だな。
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