116.ケットシーとの邂逅 ~ケットシーの里からの帰還~
「おや、もう転移門の修理は終わってしまったのですかニャ」
「ええ、今終わったところですよ」
転移門の修理が終わったところに長老がやってきた。
「……確かに起動してますニャ。ちなみに、どうやって修理したのか教えてもらえますかニャ」
「ここの窪みに魔石を入れて魔力を貯めたんですよ。どうやら起動用の魔力が足りなかっただけのようですので」
「なるほどニャ。一度起動してしまえば後は問題なさそうですニャ」
「多分大丈夫でしょう。さすがに専門家ではないので断言できませんが」
「いえいえ、修理していただけただけで十分ですニャ。……それでそろそろおかえりですかニャ?」
そうだな。
クエストも終わったし、全員揃ったら引き上げるか。
「そうですね。まだ戻っていない仲間を待って、揃ったら引き上げることにします」
「わかりましたニャ。それでは先にこれを渡しておきますニャ」
手渡されたのは1枚のアミュレットのようなもの。
アミュレットとは言っても紙製ではなく金属のプレートだが。
「これはケットシーの里に入るための許可証のようなものですニャ。これがあれば各地のケットシーの抜け道から里へと移動できますニャ」
「各地ってことは王都以外にもケットシーの里へ向かうための場所があると?」
「はいですニャ。ただ、その護符は入ってきた抜け道にしか戻ることはできませんニャ」
「つまりこれを使って各地の抜け道とやらを移動することはできないと」
「そう言うことになりますニャ。申し訳ありませんが許してほしいですニャ」
「別に構いませんよ。それに里に来るだけなら転移門を使えばいいわけですし」
「そうですニャ。あと、転移門が開通したことで皆さんの眷属になった同胞達が皆さんのところにお邪魔することもできるようになりましたニャ」
「うん? つまりクランホームとかに眷属召喚中以外もこれると言うことですか?」
「はいですニャ。できれば『ほーむぽーたる』と言うものを設置してもらえると助かりますニャ」
ホームポータルなら設置済みだ。
問題は無いだろう。
「ホームポータルなら既に持ってますよ」
「それは好都合ですニャ。それなら同胞達の修行も捗ると言うものですニャ」
眷属の成長に補正がかかるって事かな。
横では教授が聞き耳を立てている。
「ともかく、これで同胞達もニンゲン族の里に行きやすくなりましたニャ」
「……そう言えばケットシーが人間の街に来たら目立つのでは?」
「それは大丈夫ですニャ。ケットシー秘伝の変装アイテムがありますニャ」
「秘伝のねぇ……」
「はいですニャ。これを使えば普通の猫か、猫獣人に化ける事ができますニャ。普段は猫に化けていて、必要なときは猫獣人になりますニャ」
「なるほど。それなら確かに便利そうだ」
「はいですニャ。これからは色々お金を稼いでニンゲン族の里で装備も買いそろえますニャ。これで守りもより強くできますニャ」
「……そう言えば、ケットシーってどの程度の装備までできるんですか?」
「重たいものは装備出来ませんニャ。ニンゲン族の装備ですと金属製の武器や防具はほとんどダメですニャ。一部例外はありますがそのように考えてもらえればいいですニャ。ケットシー族の戦士ならば革鎧に身を包んで軽量な武器を身につけて戦うのが一般的ですニャ」
「そう言えば、人間用の装備じゃ大きすぎるのでは?」
「そこはケットシー族の魔法でちょちょいのちょいですニャ。サイズ調整ができる魔法があるのですニャ。もっともケットシー族にしか使えず、装備を外すと元のサイズに戻ってしまう魔法ですがニャ」
まあ、そんな事だろうとは思った。
そうでもしないとケットシーサイズの装備を別に作らなきゃならないからな。
「さて、そろそろ私は先に失礼させてもらうのである。情報を掲示板に上げてはいるが、既に好感度80の条件を満たしていた者がいたらしいのであるからな」
「ああ、わかった。柚月達が戻ってきたら伝えておくよ」
「うむ、今日は楽をさせてもらったようで助かったのである。……そうそう、渡す機会が無かったので忘れていたが、長老殿、マタタビ酒の差し入れである。ケットシー族で分けて飲んでほしいのである」
教授を初めとした『インデックス』の面々がマタタビ酒を取り出す。
「ニャンと! こんなに沢山もらってしまっていいのですかニャ?」
「元よりケットシー族への手土産の予定だったのである。遠慮せずにもらってほしいのである」
「それは嬉しいですニャ。代わりに渡せるものがないのはお恥ずかしいですが、同胞達をよろしくお願いしますニャ」
「心得たのである。それでは失礼するのである」
教授達は転移門から去っていった。
入れ替わるようにして柚月とドワン、それから集会所の方からユキも現れた。
「あら、もう修理は終わってたのかしら?」
「ああ、終わったよ。教授がクランから大量の魔石を持ってきたからな」
「そう。これで帰るのもまた来るのも楽になるわね」
「ああ、それからクランホームにホームポータルがあれば、眷属召喚中以外でもケットシー達がクランホームに来れるそうだ」
「ふうん、それは便利ね。裁縫を教えるにも毎回召喚してたんじゃ大変だと思ってたのよね」
「確かにのぅ。ホームポータルなら既に設置済みじゃし問題なかろう」
「そうだねー。あとは帰ってから生産セットの使い方の説明かな?」
「なんだか賑やかになりそうだね」
「そうだな。一気に5人増える訳だものな」
「それもそうね。ところで教授達の姿が見えないのだけれどもう帰ったのかしら?」
「ああ、入れ違いになったな。何か用事があるならメールを送ればいいと思うぞ。これから情報を売り始めるみたいだし」
「ああ、用事って訳じゃないわ。いないから気になっただけ」
「そうか。それじゃあ、俺達も帰るか」
「そうね、そろそろ引き上げましょう」
「皆さんもお帰りですかニャ? でしたらこれをお持ちくださいニャ」
長老は先ほど俺に渡したのと同じアミュレットを全員に配っていく。
そして、俺にしたときと同じ説明を皆にもしていた。
「まあ、私達がこの里に来るときは転移門経由でしょうけど。ありがたくもらっておくわ」
「そうしてくださいニャ」
「ああ、それと忘れないうちに俺達の持ってきたマタタビ酒も渡さないとな」
「ええ、そうね。……はい、長老、これ私達からね」
「先ほどの方々と言い本当にありがたいですニャ。大事に飲ませていただきますニャ」
「まあ、また必要なら言って。そのときは買ってくるから」
「お心遣い痛み入りますニャ。ですが転移門も使えるようになりましたし、自分達で買いに行くことにしますニャ」
「そう? まあ、たいした買い物でもないから必要になったら教えてね」
「はいですニャ。そのときはよろしくお願いしますニャ」
「それじゃ、帰りましょうか。それじゃあ、またね長老さん」
「はいですニャ。同胞達をよろしくお願いしますニャ」
こうして長老に見送られて、俺達はクランホームへと帰ることになった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「さて、帰ってきたけど、あのケットシー達はどうやってここに来るのかしら?」
クランホームに戻って開口一番、柚月がそんな疑問を口にする。
「そう言えば聞いてなかったな」
「どうする? 一度ケットシーの里に戻って聞いてみる?」
「そうだな。それが……」
それがいいか、と言おうとしたそのとき、ホームポータルが輝きケットシー達が姿を見せた。
全て俺達が契約したケットシーだ。
「おお、ここがご主人様達の家ですかニャ」
「ああ、そうだが。……お前達、どうやってここに?」
「転移門を使ってですニャ。それがどうかしましたかニャ?」
「いや、転移門もそうだが、ホームポータルも登録しないと使えないはずだが……」
「それは眷属契約の効果ですニャ。今のボク達は魂の一部がご主人様達とつながっていますニャ。なのでご主人様達の使える転移門などには行くことができるのですニャ」
「……そういえば、気にしてなかったけどトワ達のフェンリルも普通にポータル移動してたわね。そう考えるとおかしくないのかしら」
「……まあ、そこはゲームだし深く考えるのはよそう。迎えに行く手間が省けたと思っておけばいいさ」
「それもそうね。それじゃ、早速で悪いけど私達の作業場所に案内するわ。着いてきて」
「はいですニャ。今日からよろしくお願いしますニャ」
メンバー各員、それぞれが契約したケットシーを引き連れて自分の工房へと向かう。
俺とユキも自分のケットシーを連れて工房に入った。
「おお、ここがご主人様の工房ですかニャ。立派な設備がおいてありますニャ」
「一応上級だしな。……ちなみにこれを扱う事は出来そうか?」
「……練習すれば何とかなると思いますのニャ。すみませんが使い方を教えてほしいですニャ」
「わかった。とりあえずはメインで使うだろう調合セットから教えるぞ」
「わかりましたニャ。よろしくお願いしますニャ」
ユキの方を見ればあちらでも説明が始まっていた。
こっちは2つだし、勝手のわからない錬金セットもあるんだ。
説明をしっかりしないとな。
**********
~あとがきのあとがき~
ケットシーの育成について。
ケットシーは生産修行に来ていると言う側面があるので、一定条件を満たしていれば戦闘などで呼び出さずに放置状態でもレベルが上がっていきます。
一定条件とは以下の通りです。
1.ホームを所有している。(個人ホームでもクランホームでもよし)
2.ホームポータルが設置してあり『ケットシーの里』との転移が可能になっている(基本的に開通済みだと思います)
3.ケットシーが所有している生産スキルに適した生産セットがホームに設置してある(工房化まではしてある必要はないです)
以上の3つの条件を揃えていればケットシーは自分達で修行をしてレベルが上がっていきます。
時々でいいので指導をしてあげたり、マタタビ酒を差し入れしたりすると成長速度が上がります。
ただ、ある程度まで生産スキルが成長すると成長が止まりますので、そのタイミングでの指導は必須となります。
(生産スキルが成長しないため生産では種族レベルも上がらなくなる)
なお、指導自体は召喚主がする必要はありません。
また、戦闘で種族レベルを上げる場合はこの制限はありません。
ケットシー、戦闘面ではあまり強くないですが。
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