115.ケットシーとの邂逅 ~ケットシーの里の転移門~

 俺は新しく仲間になったケットシーのステータスを確認する。


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名前:オッド 種族:ケットシー(見習い) 種族Lv.1

HP:36/36 MP:34/34 ST:37/37

STR: 4 VIT: 5 DEX:10

AGI: 8 INT: 7 MND: 6

スキル

攻撃:

【爪】【剣】【盾】

魔法:

【風魔法】

補助:

【魔法攻撃上昇Ⅰ】

生産:

【調合Ⅰ】【細工Ⅱ】【生産Ⅱ】

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 これは完全に生産よりのステータスだな。

 種族に『見習い』とあるのでここが進化していくのだろう。


 ヘルプも確認してみたがまとめると、


『生産補助型の眷属。眷属召喚中以外でも生産活動をしてくれる。戦闘はあまり得意ではないが、遠距離攻撃・魔法は多少使用可能。武器・防具装備可』


 となっていた。


 ケットシーは戦闘型じゃないのがよくわかるな。


「ええと、名前はオッドでいいのか」

「はいですニャ」

「スキルに【細工】があるが、細工も出来るのか?」

「ケットシー族は大体の者が細工作業は出来ますニャ。逆にこれができないと何も出来なくなってしまいますニャ」

「……ケットシーの装備って細工で作ってたのか?」

「そう言うことですニャ。正確には、【鍛冶】や【裁縫】持ちが大枠を作って【細工】で仕上げてましたニャ。どちらにしてもボク達は力が弱いので重い装備は苦手ですニャ。【細工】で仕上げられる大きさが限界ですニャ」

「それじゃスキルに【剣】と【盾】があるが……」

「……ニンゲンで言うところのダガーやスモールシールドですニャ。あまり敵の攻撃を受け止められると思わないでほしいニャ」

「まあ、ステータスを見る限り、そっちの期待はしていないが。……ちなみに銃って装備出来るか?」

「じゅう? 『じゅう』って何ですかニャ?」

「ああ、銃を知らないか……これだが扱えそうか?」


 俺が昔使っていたハンドガンを渡してみる。


「これは……うん。練習すれば使える気がするニャ」

「そうか。なら今度試してみてくれ」

「わかりましたですニャ」


 さて、これからどうしたものか……


「もしよろしければ転移門を調べてもらえますかニャ? 転移門が使えるようになればこの者達が街に行くのも便利になりますニャ」

〈Wクエスト『ケットシーの里の転移門』を受注しますか Yes/No 〉


 これは選択式なのか。

 断る理由もないし『Yes』を選択しておこう。


「わかった、どこまで出来るかわからないが調べてみよう」

「お願いしますニャ。我々ではどうにもわからなかったのですニャ」

「とりあえず、その転移門に案内してもらえるか?」

「はいですニャ。こちらになりますニャ」


 転移門に案内してもらおうとしたとき、1通のメールが届いた。

 差出人は……ハルか。


『お兄ちゃん、そろそろお昼だけどまだゲームやってるの?』


 あ、時間か……


 慌てて時刻を確認するとゲーム内時刻で午前11時30分だった。

 ああ、確かにこれは一度ログアウトしないとまずいな。


「あ……」


 どうやらユキの方にもメールかフレチャが届いたのだろう。

 少し慌てた様子が窺える。


「うん? どうしたのよ、2人とも」

「ああ、お昼の時間だからどうしようかと思って」

「え? ああ、確かにそんな時間ね。いろいろやってたらいい時間になってたわね……」

「わしは一人暮らしだから問題ないのじゃが……」

「私もそうね。でも、トワやユキ、それにイリスはまずいんじゃない?」

「うん、ボクも一度落ちないと怒られるかな?」

「とはいえ、クランホームに帰るわけにもいかないし、どうしたものか……」

「おや、お困りごとですかニャ?」


 突然、慌てだした俺達に長老が声をかけてくる。


「ああ、ちょっと急ぎの用事が出来てね……ログアウトしなきゃいけないんだが……ってログアウトで通じるのか?」


 このゲームは変なところでフィルターがかかって住人NPCにも話が通じてしまう。

 さて、この場合はどうなるか……


「ああ、異界への帰還ですかニャ。異邦人の方々はこことは別の世界でも暮らしている事は知っていますニャ。もし、異界への帰還をするのでしたらこの建物をおつかいくださいですニャ」

「ここでログアウト出来るのか……それは助かるな」

「ふむ。トワ君達はログアウトであるか」

「ああ、悪いけどそうなるな。戻りは……現実時間で2時ぐらいになりそうだ」

「ボクもそんな感じかなー」

「私はもう少し遅いかも知れません」

「それならば私達だけで先に調べてみるのである。何かわかればメールで知らせるのである」

「そうか、それじゃ頼んだ」

「うむ。頼まれたのである」


 俺達はこうしてログアウト組と調査続行組とに分かれることになった。



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「お兄ちゃん、さっきのワールドアナウンスってやっぱりお兄ちゃんが絡んでる?」

「ああ、さっきのってケットシーのか? ああ、絡んでるな」


 今日の昼食は生ラーメンだった。

 ラーメンを茹でてスープを準備して、別に炒めてあったもやしを乗せるだけの簡単メニューだ。

 ちなみに作ったのは遥華だ。


「お兄ちゃん、そんなに眷属集めてどうするの?」

「別に仲間にするつもりで行ったんじゃないんだけどな。なんだかんだで気がついたら眷属が増えてた」


 実際そうだからそれ以外に言いようがない。


「ふーん。ちなみに実物を手に入れてどうだった? 強そう?」

「いいや、あれは完全に補助要員だな。少なくともプレイヤーレベルまで強くはならないと思うぞ」

「ヘルプ通りって事か……ちなみに入手方法とかは?」

「『インデックス』も一緒だったからな。後でまとめて教授が動くだろ」

「うーん、戦闘用じゃないならいらないか……でも一人ぐらいは眷属いてもいい気がするし……」

「まあ、その辺は自分で考えて決めてくれ。ただ、1つだけ言わせてもらうと、フェンリルとは別方面でめんどくさいぞ」

「そうなの? まあ、教授待ちって事でいいや」

「ああ、そうしとけ。……後片付けは俺がやっておくから任せろ。ただ、夕飯の支度を代わってくれないか?」

「いいけど何かあったの?」

「ちょっとめんどくさそうなクエストを受けてな。そっちに時間がかかるかもってところだ」

「了解。まあ、私達はそんなやることもないし構わないよ」

「悪いけど任せた」

「うん、後片付けはお願いね」


 よし、夕飯の支度も遥華に任せることができた。

 これで、Wクエストに時間をとられても大丈夫だろう。


 さて、後片付けとかやることすませたら早いところログインしなきゃな。



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 再ログインすると、確かにログアウトした場所だった。

 街中以外の場所だからどこに出るのかわからなかったけど、セーフティエリア扱いのようだな。


 新着メールのお知らせが来ているので確認すると教授からだった。

 内容は以下の通りだ。


『転移門が使えないのは魔力不足が原因である。解決方法は合流したときに説明するのである』


 簡潔だが解決方法も教えてくれてもいい気がするんだが。


 メールを確認しているとイリスもログインしてきた。

 ユキは遅くなるかもと言っていたので待たなくともいいだろう。


「教授からメールが来てるねー。どういう解決方法だったんだろう?」

「それは教授に聞いてみないとな。それよりも転移門に移動しよう」

「そうだね-。でも場所はわかる?」

「知ってるヤツに聞けば早いだろう。眷属召喚・オッド」


「お呼びですかニャ」

「ああ、すまないがケットシーの里の転移門まで案内してもらえるか?」

「わかりましたニャ。こちらですニャ」


 オッドの案内で俺達は転移門へと着いた。

 そこには教授や『インデックス』のメンバー数名が待っていた。


「お待たせ。教授、昼食は?」

「簡単にすませてきたのである。それでトワ君、解決方法なのであるが、魔石を使うことなのである」

「魔石を? どういう意味だ?」

「まずはクエストの詳細を見てほしいのである」


 教授の指示に従いクエスト詳細を確認する。


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 Wクエスト『ケットシーの里の転移門』


 クエスト目標:

  ケットシーの里の転移門を調査する

  ケットシーの里の転移門に魔力を注ぐ

   達成率 1%

   

 クエスト報酬:

  ケットシーの里の転移門開通


 ―――――――――――――――――――――――


 クエストが進行している。


「教授、転移門ってどうやって調べたんだ?」

「通常の鑑定ではわからなかったので【考古学鑑定】で調べたのである。その結果が『起動のための魔力不足』だったのである」

「なるほど。それで魔石を使うってどういう意味だ?」

「魔石に込められた魔力を引き出して補給するようなのである。ここにあるくぼみに魔石を入れると魔力が吸収されるのである。ちなみに。吸収された魔石は塵になって消えるのである」

「……つまり大量の魔石が必要だと?」

「普通であればそうなるのである。ただ、トワ君は魔石に込められた魔力を調整するスキルを持っていると聞いたのである。それを使えば必要数が少なくてすむ可能性があるのである」

「なるほど。それで、今1%何だがどれくらいの魔石を使ったんだ?」

「とりあえず手元にあったブレードウルフの魔石1個である」

「ふーん、それじゃ俺も【魔石強化】を使ってから試してみますか」


 幸い、俺の手元にもブレードウルフの魔石がある。

 これに【魔石強化】をかけて……よし、準備完了。


「それじゃ、準備できたから試してみるぞ」

「頼んだのである」


 魔力を限界ギリギリまで込めた魔石をセットしてっと。

 ……おお、魔石の光が転移門に吸い込まれていってる。


 やがて全ての光が転移門に吸い込まれると魔石は塵になって消えた。

 さて、進行率は……うん、『3%』になってるな。

 普通に魔石を吸収させるよりは早く進行できそうだ。


「どうやら私の推測は正しかったようであるな」

「そう言うことらしい。でも、今の進行率でもあと50個近い魔石が必要になるぞ?」

「そちらは大丈夫である。『インデックス』の倉庫に王都近辺のウルフ種の魔石はゴロゴロ眠っているのである。それを使って在庫処分である」

「つまり、それを運んでくるから、俺に魔力を注げと」

「そう言うことである。頼んだのである」

「まあ、断らないけどさ。どうやって運んでくるんだ?」

「ケットシーの里を出ようとしたときに、ここへの立ち入りが自由になるキーアイテムをもらえるのである。それがあれば出入り自由なのである」

「なるほど。それなら後は魔石を集めて転移門を開通させるだけと」

「そう言うことである。そろそろ魔石を取りに行った者達が戻ってくるのである。よろしく頼むのである」

「まあ、任された。やれるだけやってみるさ」


 その後、『インデックス』から持ち込まれた大量の魔石を【魔石強化】で強化しながら転移門に魔力を注ぎ込んだ。

 さすがにMPポーションを飲みながらの作業となったため時間がかかったが、無事進行率100%にすることができた。


〈Wクエスト『ケットシーの里の転移門』をクリアしました〉

《とあるプレイヤーによりケットシーの里の転移門が開放されました。これ以降、ケットシーの里の転移門をポータル登録可能になります》


 さて、これで里と街との間で行き来が楽になるわけだ。

 試しに転移門を起動してみたら、通常通りポータル登録ができた。

 転移先も表示できるし問題なく使えるようになったみたいだな。

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