80.GW4日目 ~トワの本気装備 準備編 1 ~
さて、これからどうしようか。
まだ、マイスタークラスの制限レベルまでレベルは上がっていないし新装備も作らなければいけない。
それに、錬金セットや調合セットが新しくなったため、その使い勝手も確かめなきゃならない。
今までの設備をアップグレードしただけだから、これまでの作業をするだけなら多少使えば勘はつかめるだろう。
だが、上級生産セットでは生産品の品質が★12まで開放されるのだ。
せっかくなら武闘大会用の新装備は★10以上で揃えたいというのが本音だ。
★10以上になると生産時につけられる装備ボーナスが2種類までに増える。
ヘルプページを読む限りだと、さらに多くのボーナスをつけられるとにおわせていたので、さらに高品質になれば3つ目の装備ボーナスも狙えるのだろうが、おそらく上級生産セットよりも上の生産セットがあるのだろう。
今後の計画を考えていると、柚月から声をかけられた。
「そう言えば、トワ。あなた、上級錬金セットの支払いはどうしたの? クラン口座から引き落とされた形跡がないんだけど」
ああ、説明してなかったな。
「自分の手持ち資金から出したよ。急な話だったし、自分で使うものなんだから自分で出した方がいいと思って」
正直に自分の考えを告げると、柚月が怒ったように言ってきた。
「あのねぇ、トワ。『クランで使う設備の更新費用はクラン資金から出す』ってルールがあるでしょうが。当然、各種生産セットもクラン設備の対象範囲よ」
「そう言われてもな。俺だけ2種類あってその分クランに負担をかけては不公平だし……」
「不公平だなんて誰も思わないから心配しなくていいわよ。それよりも、自分のお金で買ったことの方が不公平になるわ」
「そんなことないだろ? 別に自分のお金で買う分にはクランに影響があるわけでないし」
「ダメよ。こういうルールはしっかり守ってこそ意味があるの。……まあ、私達の上級セットは予定外の方法で手に入ってしまったけど。とにかくあなただけに上級生産セットの代金を負担させるわけにはいかないわ」
「でもなぁ……」
「それに上級セットになれば、単価も上げられてクランに入ってくるお金も増えるんだから、大人しくクラン資金から購入したことにしなさい。クラン資金も使い切れないほどにプールされてるんだし」
「……そう言えば、今のクラン資金は上級セットを買うために貯めてたんだっけ。……わかったよ、クラン資金から購入したことにするよ」
「それでよし。ちなみにいくらだったのかしら、上級錬金セットは」
「本体価格が50万E、それに王都からの輸送費が10万Eの合計60万Eだ」
「ふーん、じゃあ、本体価格の50万Eは渡すわ。輸送費はトワの事情があったんでしょうからトワ持ちでよろしく」
「わかってるよ。それじゃあ、そういうことで」
柚月からクラン資金としてプールされていたお金のうち50万Eを渡される。
なお、俺はクラン資金が口座にどれだけ貯まっているのか知らない。
その辺の管理は柚月に丸投げしてる。
それが、クランを作ったときの取り決めでもあったし、正直、帳簿のようなものを見るのもめんどくさい。
「ああ、そう言えば、トワの装備の件だけど明日まで待ってもらえるかしら」
俺の装備の件に話が変わった。
俺としても、いい加減話をつめないといけなかったから助かるのだが。
「構わないけどどうしてだ?」
「上級の裁縫セットが手に入ったでしょう。あれがまだ使いこなせきれてないのよ。あと少しで勘をつかめるから、トワの本気装備は明日の午後に作るわ」
「わしもそれでいいか? ミスリル金を作る事で、大分スキルレベルが上がったが鍛冶セットの勘をつかむまでもう少し粘りたい。わしも明日の午後には、銃の部品もサークレットも完成させるようにしよう」
「うん、それで構わないよ。ところでドワン、練習用で作ったミスリル金なんだけど……」
「言われずとも銃の部品に加工して共有倉庫に入れてあるわい」
「あ、あとボクの部品も明日の午後に作るねー。で、練習用の部品はトレント素材でドワンの部品の数に合わせて作ってあるから安心してね」
「あ、トワくん。私の方も生産時のバフ用料理を大量に作っておいてあるから、それを使ってね。他の皆も使ってくれて構いませんのでどうぞ。あと、数が足りなくなりそうだったら教えてください。追加しますので」
「アリガト、助かるわ。最高品質品を作ろうと思えば、今でもDEXが足りていない気がするのよね」
「わしもじゃ。できればDEXとSTRが上がるとなお嬉しいんじゃがのう」
「大丈夫ですよ。DEXとSTR、DEXとINT、それにDEXとMNDの組み合わせで上昇する料理を揃えてますので」
「さっすがユキちゃん。ボク達がほしいものを心得てるねー」
「皆の話を聞いていれば、生産するときにほしいステータスも何となく理解できるようになったから」
うんうん、ユキもだいぶクランになじんできたな。
それにしても生産バフ用の料理はありがたい。
最高品質品を作ろうと思えば、必須ステータスはいくらあっても困るものじゃないからな。
「それじゃあ、私は店売り用の料理に行きますね」
「わしも注文品の仕上げ作業にはいろうかの」
「ボクもー」
「私だってそうね。トワはどうするの? 最後のレベル上げ?」
「いや、俺も生産活動だな。上級錬金セットの感覚をつかまないと本気装備が作れない」
「じゃあ、今日は皆生産活動ね。それじゃあがんばりましょうか」
「あ、柚月ちょっと待って。これ、この前に白狼さんからもらった最新エリアの素材。俺の装備作るときに使って」
「……これまたすごいものを持ち込んでくれるわね。……このアイテムとかはドワンの作るサークレットにも使えるんじゃないかしら?」
「うむ、それではそれはいくつかわしが預かろう。それではの」
そして俺達はそれぞれの工房へと足を運んでいた。
――――――――――――――――――――――――――――――
まずは、ライフルの生産に慣れることにした。
何丁か作っているうちに安定し始めて、できたのがこれだ。
―――――――――――――――――――――――
アイアンライフル+(ヒグマ) ★9
鉄の銃身とヒグマの魔石からできたライフル銃
精密な魔力操作によって製造され、
素材の性能を限界まで引き出した逸品
装備ボーナスDEX+50
ATK+140 DEX+50
耐久値:170/170
装弾数:3
―――――――――――――――――――――――
ライフルについては、★9で安定するようになった。
できたライフルは、まだ試射してないので個人用の倉庫に詰め込まれているが、試射が終われば店に並べるつもりだ。
だが、安定して★9を作れるようになってからもう20丁は作っているのに★10以上にならない。
魔石を合成して★6まで上げてもダメだった。
元になっている銃身やグリップの性能がすでに★10である以上、おそらく
しかしフレーバーテキストには『素材の性能を限界まで引き出した逸品』とまで書かれているし……
もしかして、素材のランクが低いせいで限界がここまでなのか?
そんな事を思いついた俺はドワンとイリスに連絡。
ミスリル合金と魔鉄の銃身にトレントウッドのグリップを20個ずつ発注……しようとしたら50個単位にしてほしい、と言われたので50個発注した。
そして俺自身は、訓練所に行ってライフルの試射を行う。
手ブレはまったく発生しなかったが、代わりに撃った後の反動で体がぶれてしまった。
……試しに幻狼の腕輪を装備から外すと、反動もより強く感じたので、やはりライフルを扱う際にはDEXとSTRが必要になるらしい。
もし、2つ目の装備ボーナスが開放されたらSTRに振ろう。
しばらくライフルの感触を確認していると、ドワンとイリスから発注していた部品ができたと連絡が来た。
なので、ライフルの試射を切り上げて、工房に戻りライフルの製造練習を再開する。
さすがにミスリル合金や魔鉄で作った銃身にヒグマはもったいないので、もっと上質な魔石を用意した。
それで試した結果がこれだった。
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ミスリルライフル+(森猫) ★10
ミスリル銀の銃身とフォレストキャットの魔石からできたライフル銃
精密な魔力操作によって製造され、
素材の性能を限界まで引き出した逸品
装備ボーナスDEX+70
STR+30
ATK+180 STR+30 DEX+70
耐久値:180/180
装弾数:4
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マギアイアンライフル+(牙狼) ★10
魔鉄の銃身とファングウルフの魔石からできたライフル銃
精密な魔力操作によって製造され、
素材の性能を限界まで引き出した逸品
装備ボーナスDEX+80
STR+35
ATK+200 STR+35 DEX+80
耐久値:180/180
装弾数:4
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できた。
★10以上の装備がついにできた!
もちろん【魔石強化】スキルを使い、魔力値もデフォルトから2倍程度まで引き上げて作っている。
それでも耐久値が損なわれることなく高い攻撃力を維持できている。
訓練所で耐久値減少シミュレーションも試してみたが、10発撃って耐久値1減少程度だったので十分に実用範囲だろう。
工房に戻った俺は、感覚を忘れないうちにライフル製造を続け、合計70丁ほどの★10ライフルを作成した。
……うん、やり過ぎた自覚はある。
後悔もちょっとしている
これ、売り出すときの売り方考えないと大混乱起こすだろうなぁ。
店の販売方法のアップデートも考えるか。
機能拡張すれば在庫の時間指定追加とかできたはずだから。
さて、次は魔導銃の方だな。
こっちはミスリル金だし、いきなり魔力値2.5倍から試してみるか。
何丁か★6や★7を挟んだ後、これが完成した。
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ミスリルゴールドマギマグナム+(刃狼) ★8
ミスリルキ金の銃身とブレードウルフの魔石からできた魔導銃
精密な魔力操作によって製造され、
素材の性能を引き出した逸品
攻撃属性:風
風属性攻撃ボーナス中
装備ボーナスINT+50
MATK+150 INT+50
耐久値:150/150
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……普通に耐久性で耐えおった。
それに品質もいきなり★8になった。
元の部品の品質も★8だった(ドワンがいい仕事してくれてた)から、完成品の品質も★8まで届いたのだろう。
しかし、そうなるとミスリル金の限界値ってどれぐらいまで行くんだろう。
試したいけどこれ以上の魔石は結構高くつくんだよなぁ……
うん、とりあえず検証は諦めよう。
俺はまた訓練所に行って耐久値減少シミュレーションを行ってみたが、耐久値の減少量は通常の銃より少しばかり多い、その程度だった。
これなら普通に実戦で使えるだろう。
あと、気になる1発ごとのMP消費だったが、この威力で1発あたりMP3しか減っていなかった。
この消費量なら俺だと、MPポーションのお世話にならずに使えるだろう。
このことにすっかり気をよくした俺は、素材のある限り魔導銃を作り続けた。
おかげで魔導銃の作り方には精通したと言えるぐらいに魔導銃を作る事になれてしまった。
また、銃を作る度に使用されている【魔石強化】スキルのレベルもぐんぐん上がり、今ではレベル30まで上がってしまった。
【中級錬金術】もいつの間にかレベル13まで上がっていた。
そして、拳銃作りの際にもそれらのスキルレベル上昇の恩恵があらわれ、プラス付き、つまり製造クリティカル装備がいくつか混じるようになっていた。
そんな感じで一心不乱に銃を作成していると柚月からフレチャが入った。
『店のポーションの在庫が尽きそうだから早く補充して』とのこと。
ポーション補充の事をすっかり忘れていた俺は、慌ててポーション作成を始めた。
あと、ついでに何か変わったレシピがないか錬金術ギルドにも顔を出しておこう。
なお、このとき手加減を忘れていたため、生産されたポーションの品質が★9や★10となり、柚月からお叱りの言葉を受けたのは余談だ。
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