61.ロックンロール!! 2

「柚月?」


 柚月が提案を持ちかけてくる。

 柚月も俺達のクランメンバー、サブマスターだ。


 検証も何もしていない、作ったことすらない装備を売ることの意味を知らないはずがない。


「だって彼だって子供の使いじゃないんだし。せっかくツチノコを見つけられたんだから、お願いしたくもなるわよ」


 はっきりツチノコって言い切りおった。


「とりあえず作ってあげて、ノークレームノーリターンって事にすればいいんじゃない。それで文句つけてくるなら、クラン『シューティングスター』ごとブラックリストに入れてしまえばいいんだし」

「いや、でもなぁ……自分に責任があるのにクレーム言うなっていうのは……」

「相変わらずそういうところ、頭固いわね。その歳でそんなんじゃやってられなくなるわよ。……って訳で、ノークレームノーリターンでなら作ってあげるように説得してあげるわ。それでいいわね?」

「はい! それで構いません!! ありがとうございます姐御! ……あ……」


 柚月が『姐御』って呼ばれてら。

 確か柚月の二つ名、と言うか呼び名の1つだな。


 だが、柚月は気にしてないのか笑ったままだ。


「私は姐御って呼ばれてるの知ってるから気にしないでいいわよ。……って訳でトワもここで折れなさい。いつまでもユキを待たせるわけにはいかないでしょう?」

「…………わかったよ。ノークレームノーリターンな。それでどれくらい欲しいんだ?」

「可能であれば出来る限りほしいです」


 可能な限りって言われてもなぁ……

 本当に可能な限りだと10丁になるんだが……


「……クエスト以降、一度も作ってない状態でも構わないなら10丁まで作れるぞ。それ以上はパーツが足りないから無理だ」


 クランの共有倉庫を確認しながら告げる。

 グリップは余裕があるが、銃身は10個しか頼んでないから10個しかない。

 今からドワンに頼んで増産するほどの義理はないだろう。


「それでは10丁全部買います! いくらになりますか? それと魔石はやっぱり持ち込みですか?」

「……魔石は持ち込みの方がありがたいな。値段は……技術料と素材代で……1丁30k、10丁で30万Eでどうだ?」

「そんなに安くていいんですか!? それじゃあ魔石は俺が準備します。……アイアン素材だとアカヒグマが限界でしたよね? あと、魔石って10個でいいんですか?」

「拳銃だとアカヒグマが限界だが、ライフルは拳銃より耐久性が低いらしいから、アカヒグマだと銃身が持たない可能性があるが……試しでいいならアカヒグマ魔石、安全圏を取るならヒグマ魔石だな。あと、魔石は1丁につき2つ必要だ。それから魔石の品質もペアで合わせてくれ」

「わかりました! 半分をヒグマ、残り半分をアカヒグマでお願いします!」

「わかったから、早く魔石を用意してくれ。こっちも素材を用意するから」


 勢いよく注文を告げてくるロックンロールおとこをなだめながら共有倉庫からライフルの銃身とグリップを取り出す。

 ……奥に戻るのも面倒だし、携帯錬金セットでいいか。

 最大品質★7になってしまうけど、最大品質は出せないと思うし。


「あら、この場で錬金するの? 工房の設備じゃなく?」

「多分、最大品質は作れないから一緒だろ。それに今から奥に引っ込んで錬金するのも面倒だ」


 そんな事を柚月と話してたらロックンロールの準備も終わったらしい。


「魔石全部で20個買いました! これでよろしくお願いします!!」

「はいはい、わかったから落ち着け」


 ロックンロールから魔石20個を受け取る。

 ……きちんとペアで揃えてあるな。


「それじゃあヒグマ分から作るから。黙ってみててくれよ」

「はい! お願いします!!」


 ……やっぱり熱いな。

 苦手なタイプだ。


「そういえば装備ボーナスはどうする? DEXで構わないか?」

「はい、お任せします!」


 それならDEX一択だろうな。

 どう考えても『手ぶれ』って、DEX足りてないんだから。


 とりあえずまずは一つ目っと。


 ―――――――――――――――――――――――


 アイアンライフル(ヒグマ) ★5


 鉄の銃身とヒグマの魔石からできたライフル銃

 一見なんの変哲もない銃だが

 しっかりと魔力が込められており耐久性が高い


 装備ボーナスDEX+30


 ATK+70 DEX+30

 耐久値:160/160

 装弾数:3


 ―――――――――――――――――――――――


 うん、まずまずだな。


 この調子で作ってしまおう。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 ―――――――――――――――――――――――


 アイアンライフル(ヒグマ) ★6


 鉄の銃身とヒグマの魔石からできたライフル銃

 一見なんの変哲もない銃だが

 しっかりと魔力が込められており耐久性が高い


 装備ボーナスDEX+35


 ATK+80 DEX+35

 耐久値:170/170

 装弾数:3


 ―――――――――――――――――――――――


 とりあえずヒグマ分終わり。


 最後2丁は★6になってよかった。


 まあ、魔石の品質があまりよくなかったから、★7は無理だったんだが。


 次はアカヒグマのライフルか……

 鉄の銃身でもつかな……


 まあ、手始めに1丁作ってみよう。


 ―――――――――――――――――――――――


 アイアンライフル(アカヒグマ) ★5


 鉄の銃身とアカヒグマの魔石からできたライフル銃

 一見なんの変哲もない銃だが

 しっかりと魔力が込められており耐久性が高い


 装備ボーナスDEX+30


 ATK+100 DEX+30

 耐久値:150/150

 装弾数:3


 ―――――――――――――――――――――――


 ……★5で出来たけど攻撃力高すぎるな。

 これは実戦投入するとき気をつけないとやばい気がする。


 さて、残りの4丁分は……

 アカヒグマの魔石、全部★3以上か……


 ★6狙えるけど作っていいものかどうか。

 ……まあ、ノークレームノーリターンだし作ってしまうか。


 ―――――――――――――――――――――――


 アイアンライフル(アカヒグマ) ★6


 鉄の銃身とアカヒグマの魔石からできたライフル銃

 一見なんの変哲もない銃だが

 しっかりと魔力が込められており耐久性が高い


 装備ボーナスDEX+35


 ATK+120 DEX+35

 耐久値:155/155

 装弾数:3


 ―――――――――――――――――――――――


 ……★6出来たけど、耐久値の伸びがない……

 これは火力過剰になってる気がするな……


 ……その後、残り3丁分のうち2丁を★6で揃えた。


 ……どうせなら、最後の1丁はこれ以上のピーキー装備にしてしまうか?


「なあ、ロックンロールさん」

「……はい、なんでしょうか!」

「とりあえずアカヒグマは耐久性が危険そうだ」

「そうですか……いえ、もしすぐ壊れても、文句は言いませんよ」

「……そこで相談なんだが、攻撃力を今以上にする方法があるんだが、試してみてもいいか?」

「え? 攻撃力を上げることが出来るんですか?」

「ああ、ちょっと改造してやれば出来る。ただし、間違いなく1発撃つごとに耐久値がガリガリ下がる。それで文句言わないならカスタム銃を作ってやるよ。いやなら、普通に★6ライフルがもう1丁増えるだけだな」

「わかりました。カスタム銃でお願いします! こんなチャンスは2度とないかもしれないので!」

「わかった。準備するからちょっと待ってて」


 許可も下りた事だし、【魔石鑑定】と【魔石強化】の出番だな。


 まずは魔石鑑定と。


 ―――――――――――――――――――――――


 アカヒグマの魔石 ★4


 アカヒグマの体より取り出された魔石


 属性:火属性

 魔力値:46


 ―――――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――――


 アカヒグマの魔石 ★4


 アカヒグマの体より取り出された魔石


 属性:火属性

 魔力値:49


 ―――――――――――――――――――――――


 魔力値は46と49ね。


 魔導銃作りで試したときは、壊れる前に一瞬強い抵抗を感じたんだよな。


 ……1個ウルフの魔石を潰して試してみるか。


 ―――――――――――――――――――――――


 ウルフの魔石 ★4


 ウルフの体より取り出された魔石


 属性:無属性

 魔力値:9


 ―――――――――――――――――――――――


 これにゆっくり魔石強化で魔力を加えてっと……


 ―――――――――――――――――――――――


 ウルフの魔石 ★4


 ウルフの体より取り出された魔石


 属性:無属性

 魔力値:26


 ―――――――――――――――――――――――


 一瞬抵抗を感じた気がするところで止めたら、こうなった。


 およそ魔力値は3倍前後まで入るのかな?


 そうなるとさっきのアカヒグマの上限値は、140をちょっと下回る程度だけど、いきなりそれを試すのは恐いな。

 魔力値120程度で同じになるようにやってみるか。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 できた。

 結果はこんな感じになった。


 ―――――――――――――――――――――――


 アカヒグマの魔石 ★4


 アカヒグマの体より取り出された魔石


 属性:火属性

 魔力値:126


 ―――――――――――――――――――――――


 微調整を続けた結果、126で2つの魔石の魔力値が同一値になった。

 ゆっくりと、かつ細かい調整をした結果、【魔石強化】のスキルレベルが12まで上がってしまった。

 ……そういえば、スキルレベルも上がりやすくなってるんだっけ。


 さあ、過負荷状態になるのは目に見えてるけど、これでライフルを作ってみるか。


 ―――――――――――――――――――――――


 アイアンライフル+(アカヒグマ) ★6


 鉄の銃身とアカヒグマの魔石からできたライフル銃

 強化された魔石を使って作られた

 魔石に込められた大量の魔力のせいで

 非常に脆くなっている


 装備ボーナスDEX+35


 ATK+300 DEX+35

 耐久値:75/75

 装弾数:3


 ―――――――――――――――――――――――


 できた。

 なんだか名前も変わってるし、耐久値が半分近くになってるけど、攻撃力はおよそ2.5倍だ。


 ……これ、本当に渡していいんだろうか?


 ……出来てしまったものはしょうがないので、まとめて渡すことにする。


「おーい、出来たぞロックンロールさん」

「……ああ、出来たんですね。なんだか魔石がやばい感じに光ってましたが……」

「……これを見てもらえればわかる」


 俺は『アイアンライフル+』を手渡す。


「……これは……本当に売っていただいてもよろしいのでしょうか?」

「ノークレームノーリターンならな。修理はドワンがいればリペアしてくれるかもだが」

「いえいえ! リペアだけでしたら俺達のクランにも使える人間はいますので……」

「じゃあ残りのライフルも全部渡すぞ」


 俺は残りの9丁もロックンロールに引き渡す。


「……本当にこれらを30万で譲っていただいて大丈夫なんですか?」

「正直、適正価格がわからないからな。今度買うときはもっと高くなってると思ってくれ」

「はい、わかりました! これ代金です!」


 ロックンロールから30万Eを受け取る。


「ああ、それから。ライフルの特徴なんだが……」


 ついでなので、アメリアさんから聞いたライフルの特徴について、ロックンロールに説明する。

 あと、おまけで、ガンナーギルドの拳銃製造依頼についても説明しておいた。

 錬金術ギルドからの紹介状があれば、ガンナー以外の錬金術士でも受けられる可能性がある、と。


 正直、俺があの依頼に関わるのはもう卒業するべきだと思うんだ。


「……こんな詳しい説明までしていただけるなんて……本当にありがとうございます!!」

「気にするな。アフターサービス出来ない代わりと思っておいてくれ。それから、『アイアンライフル+』は実戦で使う前にどこかのザコで試し撃ちして、1発でどれだけ耐久値減るか確認するようにな。いきなりボス戦とかに持ち込んで壊れても補償は出来ないからな!」

「はい、わかりました! これからクラメンと試射会をやるのでそこで試してきます!! 本当にありがとうございました!!」


 それだけ言い残すと、ロックンロールは足早に去って行った。

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