23.土曜午前と新装備

 この物語はフィクションです。


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「カウンセリング結果だが、特に問題はないね」


 土曜日の午前中、俺は病院を訪れていた。

 体調が悪くなった訳ではなく、定期的なカウンセリングというやつだ。


「自分で自覚しているような症状もないのだろう? 君の方については、定期検診だけで特に問題は起こらないだろう」


 確かにここ数年は自覚症状もない。

 そういう意味では特に問題はないのだろう。


「……それで、海藤さんの事なのだが……」


 本来、医師が他人の症状について話すのは問題行為だろう。

 ただ、雪音の症状に関しては俺に対して説明するよう、双方の両親から依頼されているために教えてくれている。

 ……雪音に何かあった場合、対応する可能性が一番高いのは俺なのだから。


「どうも、最近も夢でうなされて夜中に目を覚ますことがあるようだ。それ以外は、自覚症状はないと言ってるが……正直、今までの現状維持ができていると言うぐらいで、良くも悪くもなっていないと言ったところだね」


 これもある意味では予想通りの答えである。

 いや、自覚症状で悪くなっていないだけ、まだマシな方と考えるべきか。


「それから、少々ストレスが溜まっているようだったね。それについて心当たりはあるかい?」


 あると言えばあるけど、あまり自信はない。


「おそらく、高校生になって環境が変わったことが原因でしょう。昨日も変な男子にちょっかい出されていましたし」

「そうか……ちなみにその男子はどうにかできそうなのかな?」

「はい。一応学校側には告げてあります。次に妙なまねを起こせば学校側も動くでしょう」


 俺もあまり学校が積極的に動くとは思っていないが、着実に証拠は積み重ねて行く必要はあるだろう。


「ふむ……そういう点では、君達が通っている学校はまだまともな部類だから安心できる、か」


 そうなのだろうか、俺は高校に入ってからまだ1日だし、その辺の判断はできない。


「今日のカウンセリングはこれで終わりかな。それじゃあまた」

「はい。ありがとうございました」

「お大事に」



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 診察室を出て待合室に戻ると、そこで雪音が待っていた。


「おかえり、悠くん」

「ただいま、特に問題はなかったか?」

「うん、先生にも伝えたけど、特に変わったことはないよ」

「そうか、それならよかった」


 俺達は会計をすませると、雪音に処方箋が出されていたので薬局により薬を処方してもらってから帰ることになった。


「先生も大げさだよね、夢見が悪くて起きているだけなのにわざわざ薬を出すなんて」

「そう言わずに、処方された薬はちゃんと飲むんだぞ」

「はーい。悠くんも心配性なんだから……」


 俺達は病院を後にして、ファミレスにより昼食を取ることにした。


「それで、悠くん。今日の夜の準備は大丈夫?」

「ああ、準備はとっくにできてるから安心してくれ」


 今日の夜はUWでちょっとしたイベントがある。

 【第3の街】へとクランメンバー全員で移動するのだ。

 本当はもう少し早く移動する、具体的には1週間前には移動する予定だったのだが、護衛を依頼している先方の予定が変わってしまい今週へと先送りされていた。


「柚月さん達も新しい装備ができたって言ってたし、楽しみだね」

「そうだな。俺達だけじゃ、まだロックゴーレムは厳しいから『白夜』の人達に頼らざるを得ないのが厳しいところだけどな」


 その後、昼食を食べ終わった後は、雪音につきあい色々なお店を見て回り、簡単なデートを済ませてから家に帰ることとなった。



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 午後8時半頃、俺はログインして待ち合わせ場所である第2の街北門広場へと向かった。

 そこには俺以外の「ライブラリ」メンバー達がすでに全員そろっていた。


「こんばんは、ひょっとして待たせたか?」

「いや、大丈夫じゃ。わしらも少し前についたばかりじゃからの」

「護衛依頼を出しておいて私達が遅刻するわけにはいかないものね」


 俺達は挨拶を交わし今回の移動の準備を始める。


「まずは俺の方から全員の分のポーション類を配るぞ。まだ在庫には余裕があるから足りなくなったら言ってくれ」

「ありがと、私からはトワの防具ね。頼まれたとおりボアの革で依頼の品を作っておいたわ」

「わしからも装備を渡すぞ。まったく、いくら戦闘をしないからと言って、あれから装備を一切更新していないのはいかがなものかと思うのじゃがな」


 そう言って2人から新しい装備を受け取り代金を支払う。

 新しい装備はボア素材がメインとなっていて性能は大体こんな感じだ。


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 ボアレザーのサーコート ★6


 ボアの皮を利用して作られたサーコート

 魔術的な処理もされているため

 動きやすく防御力も向上している


 装備ボーナスDEX+8


 DEF+26 MDEF+28 DEX+8 AGI+8

 耐久値:180/180


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 ボアレザーのスラックス ★6


 ボアの皮を利用して作られたスラックス

 魔術的な処理もされているため

 動きやすく防御力も向上している


 装備ボーナスDEX+8


 DEF+16 MDEF+18 DEX+8 AGI+8

 耐久値:180/180


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 銀のサークレット ★6


 銀を使用して作られたサークレット

 物理防御力は低いが魔力を高める効果がある


 装備ボーナスINT+12


 DEF+8 MDEF+20 INT+30

 耐久値:120/120


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 ボアレザーのリストガード ★6


 ボアの皮を利用して作られたリストガード

 魔術的な処理もされているため

 動きやすく防御力も向上している


 装備ボーナスDEX+12


 DEF+16 MDEF+18 DEX+12 AGI+8

 耐久値:180/180


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 ボアレザーのグリーブ ★6


 ボアの皮を利用して作られたグリーブ

 魔術的な処理もされているため

 動きやすく防御力も向上している

 また鉄板が仕込まれいるため

 格闘用にも使える


 装備ボーナスDEX+8


 ATK+14 DEF+22 MDEF+24 DEX+8 AGI+6

 耐久値:180/180


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 今回の装備もあくまでつなぎの装備のためあまり性能にはこだわっていない。

 とりあえず、ソロで熊狩りをするときに楽になればいいや、程度である。


「うん、仕上がりもバッチリだな。ありがとう2人とも」

「いいえ。それにその装備だって繋ぎなんでしょう。知ってるわよ、本気装備用の素材をちまちま買い集めてるの」

「ばれてたか。そのときはデザインもこみで装備作成をお願いするよ」

「あー……何を作りたいか大体わかったわ。了解、こっちも作れるようにスキルレベル上げておくわ」


 次の装備発注もこれで大丈夫そうだな。

 そんなことを考えていたら、ユキも新しい装備に変更したみたいだ。

 ユキの装備は、髪と同じアイスブルーの狩衣を動きやすそうにアレンジしたものに、緋色の袴、草鞋と言った巫女服に近い姿となった。

 その上から革製の胸当てをつけている。

 弓道などでつけているものをアレンジした感じ、と言った所か。


「おー、ユキの装備は和装っぽい感じに仕上げたのか」

「ええ、武器も薙刀に変更したし和服の方がにあうと思ってね」

「うん、よく似合ってるよ、ユキ」

「ありがとう、トワくん」


 見た目はただの布のようだが、おそらく今の俺の装備よりは上位の素材を使った装備だろう。

 新たにこしらえた薙刀を併せ持てば凜としたたたずまいが引き出されている。


「それじゃあ、ボクからは銃の部品のグリップを渡すよ。まだ、今日使う拳銃作ってないんでしょ?」

「わしも銃身を渡すとするかの。それで、本当に鉄製で良かったのか?」

「ありがとう2人とも。今日はまだ繋ぎ装備だからそこまで強い拳銃作る予定じゃないからね」


 受け取った素材を使って、早速拳銃を作成する。

 できた拳銃はこれだ。


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 アイアンハンドガン(ヒグマ) ★6


 鉄の銃身とヒグマの魔石からできた拳銃

 一件なんの変哲もない拳銃だが

 しっかりと魔力が込められており耐久性が高い


 装備ボーナスDEX+16


 ATK+30 DEX+16

 耐久値:180/180

 装弾数:6


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 ふむ、まあ、こんなものか。

 銃は弾丸の種類でも攻撃力を上げることができるからな。


 普段売りに出している拳銃よりも攻撃力は低いが、その分DEXを上げてるから総攻撃力は変わらないだろう。


「ほう、今のが錬金による拳銃作成か。私は初めて見るのである」


 振り向くと教授が立っていた。

 今回の移動は教授も同行することになっていたからだ。


「やあ、教授。意外と早かったな」

「うむ。同行させてもらう身分で遅れるわけにはいかないからね」

「そういえば、教授に拳銃の作成方法って教えてたっけ?」

「いや、聞いていないのである。しかし、拳銃の流通が復活したのは知っているのである。それならば、誰かが拳銃の作成方法を知っていてもおかしくはないのである」

「あー、それならガンナーギルドのことも知らないか……忘れてたな。教授、ガンナーギルドと拳銃の作成方法について教えるから、あとで掲示板に載せておいてくれないか?」

「いや、ガンナーギルドについては聞いているのである。情報も拡散済みである。というか、その情報をくれたのはトワ君であるぞ? まだ数日前の話なのに忘れたのであるか?」

「あー、すまん。そういえばガンナーギルドについては話してたな。拳銃の作成方法を伝え忘れていたのか」

「そういうことのようであるな。さあ、キリキリ白状するのである」

「ああ、それなんだが……」


 教授と話をしながら時間を潰していると、今回護衛を請け負ってくれたクランの人達が歩いてくるのが見えた。


「やあ、すまない。待たせてしまったかな?」

「そんなことありませんよ。自分達が先に来ていただけですから。今日はよろしくお願いします、白狼さん」

「ああ、よろしく頼むよ、トワ君」


 大手クラン『白夜』のクランマスター白狼さんと俺は、そう言いながら手を差し出して握手した。


 **********


 誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。



 ~あとがきのあとがき~


 患者の症状を他人に教える医者なんていない、はずです。

 悠くんが雪音の症状を聞いているのは、特例中の特例、と認識してください。

 悠くんは雪音の保護者ポジ(周囲公認)なので。

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