クランと銀月と
20.高校初日
本話から第2章となります。
現実側の話もちょくちょく出るようになりますのでご容赦を。
ゲームパートのスタートは明日の後半部分以降になります。
申し訳ありませんが物語の進行はもう少しお待ちください。
悠達は学生なので学校に通わないといけないんです()
それではよろしくお願いします。
**********
「おはよう、悠くん」
「おっす」
「おはよう、雪音、陸斗」
高校生になっての登校初日、つまり今日は入学式と言うやつだ。
昨日までUW漬けの毎日であったが、今日からはしっかりと登校しなければならない。
と言うのに、陸斗の顔はとても眠そうだ。
「陸斗、お前さん昨日何時に寝たよ?」
「ん~……2時ぐらい?」
ダメだこいつ、日付変わるまで遊んでやがった。
完全没入型VRゲームは、基本的に連続ログイン時間制限がある。
UWの場合は現実時間で6時間だ。
だが、逆を言ってしまえば6時間は連続で遊べると言うことになる。
おそらく夕飯を食べて寝る支度をしてから、連続ログイン時間制限いっぱいまで遊んでたのだろう。
「まったく、今日から学校なんだから早く寝なさいって言っておいたのに。ちなみに遥華ちゃんは大丈夫だったの?」
「遥華は春休み中も毎朝7時には起こしてたからな。生活リズムは乱れてないよ」
まあ、俺がいなければ遥華も陸斗と同じ感じになっていた気もするが。
「こういうときは遥華ちゃんが羨ましいぜ。ちゃんと健康管理してくれる兄がいるんだからな」
「陸斗、私はあなたの健康管理なんてできないしするつもりもないよ?」
陸斗は相変わらずダメ人間のようだ。
しっかり真面目に取り組めば、できるタイプだと思うのだがなあ……。
「そんな事よりさ、2人はUWで何やって過ごしてるんだ? 第2の街に着いて以降、特に目立った話を聞かないんだけど」
「目立つ話も何もないな。ほぼ毎日、ひたすら生産活動だよ」
「悠くんに同じく生産ばっかりしてるね」
陸斗は『えー……』って顔をしてる。
生産活動だけでも十分に楽しいんだけどなぁ。
「じゃあ、お金はどうやって稼いでるんだ? たまには街の外でモンスター退治でもしないと貯まらないだろう?」
「お金は市場で売買してれば勝手に増えていくよ。ちゃんと値段を間違わなければな」
「うんうん、市場で素材を買って、加工品を売ればお金どんどん増えていくよね」
「うわー、完全に生産廃人思考だ、これ」
廃人と呼ばれるほどのめり込んではいないぞ。
……毎日、昼夜しっかりとログインして活動してたけど。
「そういう陸斗は最近どうなんだよ。結局、固定PTは組めたのか?」
「あー、そっちは何とかなったよ。今は順調にレベルを上げて第5の街を目指そうかってとこ」
「ふーん、確か今の最前線は第6と第7辺りだったな。それなりに差を広げられたんじゃないか?」
「うるせー。本当の意味での廃人プレイヤーについて行けるわけないだろ。俺のPTは全員学生か社会人だよ」
ふむ、リアルの話ができる程度には仲良くやっているって所か。
固定PTでギスギスし始めたら大変だからな。
「っていうか、生産引きこもりなのにずいぶん詳しいな、悠」
「教授が色々教えてくれるからな。こっちはアイテムを、あっちは情報をって感じでやりとりしてるんだよ」
「ああ、やっぱり続いてたんだな『インデックス』と『ライブラリ』の連携」
「もちろん。お互いに有益だからな、連携を断る理由はないさ」
『インデックス』は
ようは持ちつ持たれつな関係だな。
教授達とはこれからも良い関係を続けていきたいものだ。
「あ~あ、でもこれからは昼間は学校だからな。
「……明日は土曜日で学校休みだろうに。平日まで昼間ゲームしようと思うな、ゲーム馬鹿」
そのゲームに向ける情熱の一割でも勉強に向けることができれば、赤点取らずに済むだろうに。
本当に残念な子なんだよなぁ、陸斗って。
「そういえば、結局『ライブラリ』のクランホームってどうなってるんだ?」
「第2の街に作ってるよ。第2の街の北大通りに面した商店を改築してるとこ。完成は明後日の夜時間って所だな」
「ふーん、じゃあできたら遊びに行くわ。そのときにPTメンバーも紹介するぜ」
「はいはい。まあ、落成式みたいなのをやるつもりもないし適当に遊びに来てくれ」
「ちなみにおみやげは何がいい? やっぱり食べ物とか持っていった方がいいか?」
「食べ物なら雪音が作ってくれるからなぁ……どうせなら珍しい素材の方がありがたい」
「ホント生産廃人だな、お前……まあ、適当なボス狩ってレアドロしたらもってくわ」
「あ、レアドロップだけじゃなくても大丈夫だよ。お姉ちゃん的には、ボスのお肉とかでも大歓迎だから」
「……雪姉まで生産廃人思考に……そっちも何かよさげなのを見繕って持っていくよ」
ゲームの事をしゃべりながら、俺達は新しい
……中学校の隣りだから、あまり変わらないんだけど。
――――――――――――――――――――――――――――――
『……以上をもちまして入学式を終わります。新入生の皆さんはそれぞれの教室に移動してください』
入学式も
俺と雪音は今年も同じクラスだ。
ずっと同じクラスだったのには、もちろん
でも、それを雪音が知る必要はないのだ。
「今年も同じクラスで良かったね、悠くん」
「ああ、そうだな。……そろそろ先生が来るみたいだから席に戻れよ雪音」
「はーい。また後でね、悠くん」
廊下にいた生徒達が教室に入ってきたのを見て、雪音にも席に戻るように促す。
雪音が自分の席に戻ると、ほぼ同時に担任となる教師が教室に入ってきた。
クセの少なそうな、よく言えばおとなしそうなまだ若い女性教師だ。
……担任の自己紹介のあと、クラスメイトの自己紹介が始まった。
俺は可能な限り注意して、自己紹介の様子を伺う。
大半は中学校からの進学組だが、中には別の中学から進学してきた生徒もいる。
割合で言うと同じ中学からの進学組が7、別の中学からの入学組が3と言ったところか。
……何か問題が起きたときに、
なるべくクラスメイト達の情報を集めておく。
自己紹介の中で目立つのは、『Unlimited Worldやってます』『Unlimited World始める予定です』っていう内容だ。
そういう情報を漏らすのは良くないと思う、というかUWの参加率高いな。
初期ロットは公称5万本だったはずだから、本当にUWをやっているクラスメイトがどれだけいるかはわからないけど、人気のあるゲームなんだなとは改めて思う。
自己紹介が続いている中、雪音の番がまわってきた。
「海藤雪音と言います。この後、自己紹介する予定の都築悠くんの
……うん、自己紹介も
同じ中学から一緒に進学してきたクラスメイトにとっては、いつもの発言である。
それに対して、別の中学から進学してきたであろう(見覚えのない)クラスメイトにはかなり衝撃が大きかったようだ。
……うん、やっぱり顔見知りかどうかを調べるには、この発言が一番だな。
そして、知っているものにとっては普段通り、知らないものにとっては異常な空気の中でも自己紹介は淡々と進み、今度は俺の番になった。
「都築悠です。先ほど雪音からも言われましたが、雪音の恋人です。おそらく色々迷惑をかけることになると思いますが、これから1年間よろしくお願いします」
と、まずは無難な内容を話し、そして、
「あと、雪音にちょっかいを出す輩がいた場合、誰であっても物理的にも精神的にも叩きつぶす所存ですので御覚悟をよろしくお願いします」
うん、この発言に対する反応も知ってるか知らないかで真っ二つだな。
同じ中学だったらいつもの事だし、違う中学だったら異常だものな。
あ、担任教師も少し引いてる。
まあ、最初のイメージは大事だし、『
そういう訳で多少の波乱を含んだ自己紹介も終わり、今後の予定を担任から説明されて今日は解散となった。
……ああ、陸斗じゃないけどUWの方が居心地がいいなぁ。
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誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。
~あとがきのあとがき~
なろう様の感想欄でヤンデレ発言を受けていたヒロインちゃんの行動が始まりました()
ただし、この程度の発言は『中学時代から一貫しての行動』なため、エスカレーター方式のこの高校では周りも慣れたモノです()
中学時代を知らない人間にとってはかなりのインパクトですが……
あと、悠くんもかなり過激な発言をしていますがこちらも『いつも通り』です。
とある理由から、雪音に不特定多数の人間を近づけるのを嫌っています。
こう言ってはあれですが、悠と雪音にとってはお互いに要注意人物と認識されておいた方が日常生活に支障をきたさないのです。
もちろん、悠と雪音の理由はそれぞれ違いますが……
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