落語の軽妙さと、心中物のような狂気

読み終えた時、思わず「うわぁ、うまい!」と声が出そうになりました。
軽妙な語り口に相応しい前半部と、転がり落ちていくような後半部。
なのにテンポが変わらず、さらりと読める。
さらりと読めるのに、心を離してはくれません。
特に美しいシキナミに吸い寄せられるカンナの狂気が、明朗なのに不気味でたまりませんでした。
シキナミの、数奇な運命に相応しい欠落した感情もよかったです。
この後2人はどこへ向かったのか…そんな風に想像させてくれるのは、作者様のとんでもない文才のおかげです。

星が3つしか付けられないのが悔しいくらい、おすすめです。