魔法使いはじめました!

春星 アリス

0章 プロローグ

おれは魔法オタク


みんなは、魔法ってあると思いますか?

炎を出したり、ドラゴンを召喚したり、はたまた動きを止めたり。

やっぱり、空想上のものだと思うでしょうか。

でもね、おれは絶対、魔法ってあると思うんです。




「魔乃、お前、何読んでんだ?」

昼休み、読書中のおれに、クラスメイトの竹山君が話し掛けてくる。

「魔法大事典ですよ」

「………魔法?」

竹山君の質問に、おれは鼻息あらく答えた。

「そう、沢山の魔法がのっているんです!今おれが読んでるページによると、ワカメとコンブでドラゴンが召喚できるんですって!」

これは、帰ったら早速試してみなくては!

「そ、そうか……」

竹山君はなぜか少し引きぎみに相づちをうった。

「そうだ、竹山君も一緒にこの本見ませんか?」

「い、いや、それは遠慮しとく」

「そんなこと言わずに。面白いですから!」

ずいずいっと近づいていくおれに対して、竹山君は逆に二歩三歩と後ろに下がっていく。

「魔乃、やめろよ。竹山が可哀想だろー」

「相変わらずの魔法オタクだなー」

竹山君に詰め寄るおれに、意地悪そうな声がかかった。

気がつくと、六年五組の教室にいるクラスメイト達の注目が、おれに集まっている。

真ん中の席では、クラスのリーダーである原田君とその友人達が、ばかにしたように笑っていた。

「魔法なんてあるわけないのにさ」

「なー、ばっかじゃねぇの」

教室の隅でお喋りしていた女子達も、苦笑いしてこちらを見ている。

「魔乃君って、せっかく顔は格好いいのに、変だよね」

「ねー、いつも魔法のことしか言わないし」

内容はよく聞き取れないけど、きっと原田達と似たようなことを言っているんでしょう。

もー、なんでみんな魔法がないって決めつけるんでしょうか?

魔法があるって考えたほうが、ぜったいぜったい楽しいのに!



おれはゆう、小学六年生。

成績はそこそこ。運動はてんでダメ。

特に個性のないおれだけど、他の皆とは明らかに違う所があるんです。

それは、魔法を信じている所!

小さい頃から魔法が大好きで、魔法に関する本を読み漁っていました。

学校でもいつも魔法の話をしているせいで、皆からは魔法オタクっていわれてるぐらいです。

おれがこんなに魔法を好きな理由は、魔法は楽しいから!

そんな理由って思うかもしれないけど、想像してみてください。

自由に空を飛んだり、炎を出したり、魔物を召喚して友達になったり……

もしそんなことが出来たら、すっごく楽しいと思いませんか?

おれは、そんな想像をするだけで、胸がドキドキと高鳴って、思わず走り出しちゃいそうなくらい、ワクワクするんです!

だから、これがおれの魔法を好きな理由なんです。




キーンコーンカーンコーン

「おーい、みんな席につけー、授業始めるぞー」

チャイムが鳴り、担任の三田先生が入ってくる。

自分の席に戻ろうとする途中、原田君がおれの席の前で立ち止まった。

「せいぜいありもしない魔法を楽しんでろよ、魔法オタク」

意地悪く笑った原田君に向かって、おれはあっかんべーをしてみせる。

誰も魔法を信じてくれない。

みんな、おれを馬鹿にするんです。

だから、絶対いつか魔法があるって証明して、みんなをあっといわせてみせるんです!












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