飛び降りたくなる部屋

ツヨシ

第1話

これは私が十年ほど前に体験したことです。


当時私は格安のマンションに入居を決めました。


不動産屋が言うには、前の入居者が自殺をした、いわゆる事故物件だと言うことです。


格安なのはそのためです。


でも私は幽霊とかそういったものを信じないたちなので、そんな理由でこれほどまでに安くなるのならと、その部屋と契約を結ぶことにしました。


最上階である九階の角部屋で、東と南の日辺りは最高でした。


ちなみに自殺した人は、この部屋のベランダから飛び降りたそうです。



入居初日、まだ荷物の整理が終わらないうちに夜もふけてきて、私は今日は寝ることにしました。


その夜、私はふと目覚めました。


一旦寝たら朝までぐっすり寝ることがほとんどの私によっては、珍しいことです。


時計を見ると、午前四時ちょうどでした。


私は無意識のうちにベッドから出て、歩き始めました。


そして気がつくと窓を開けて、ベランダに立っていました。


――ええっ、何でこんなところにいるの?


驚きましたが、引越しで疲れて寝ぼけたんだと思い、ベッドに戻って再び眠りにつきました。



次の日、大学から帰って荷物の整理をし、なんとか終えることが出来ました。


――これでちゃんとした生活が出来るわ。


そして眠りについたのですが、また朝を迎える前に目が覚めました。


時計を見ると午前四時。


昨日と同じ時間です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る