第68話 第二区へのカギ(下)


 第二区での人探しは明日にして、この日は屋敷でゆっくり過ごした。第二区へ入るときは、きちんとした身なりが求められるので、俺はあらかじめ仕立てておいた服を着ることになる。それが屋敷に届いたのは夕方だった。


「おや、思ったより素敵だね」


 俺の着つけを手伝ってくれたリーシャばあちゃんが、感心したように俺の姿を見ている。


「そうね。

 マサムネ、なかなかイカスわよ」


 ニーニャが褒めてくれるが、「イカス」っていつの言葉だよ。まあ、言語理解の魔術で翻訳された言葉だから、元がこの世界のどういう言葉かは分からないが。

 なぜか、俺の貴族っぽい姿を見て、ルチアの呼吸が早くなっている。彼女は貴族服に興奮するタイプかもしれない。

 俺は窮屈な貴族服を脱ぐと、いつも通りの服に戻った。


 マーサさんが腕によりをかけた夕食の後、明日からの六日間に備えて早めに寝ることにした。通行証には有効期限があり、それが一週間、つまりこの国では六日間になる。


 ◇


 その夜のニーニャは、明日からの事に興奮しているのか、いつになく積極的だった。

 いつもなら俺からの愛撫を一方的に受けるだけなのに、俺の身体中に優しく手をすべらす。途中から俺が我慢できなくなり、いつものパターンに戻ったが、ニーニャは軽く触れられるだけで、身体を震わせていた。どうやら、最初に俺の身体に触れたことで、いつもより敏感になっているようだ。


 手と舌でニーニャを翻弄していると、いつものように覗き穴の向こうに人の気配が生まれた。

 今日は、なぜか三人もいる。ルチア、セリカはいつもの事だが、もう一つの気配はなんとシュテインのものだった。王位継承権がある若者がそんなことしていいのかね。


 俺は、覗いている三人に聞こえないように、ニーニャの耳元でそれを囁く。


「ニーニャ、今日はシュテインも俺たちの事、見てるようだよ」


 その言葉を聞いた途端、彼女の身体が弓なりに反った。俺は、いつもより反応が強いニーニャの身体を隅々まで味わいつくした。


「もうらめ。

 マサムニェ、もうらめぇ……」


 ニーニャは、舌が上手く回らなくなる。最後に彼女の身体がガクガクと震える。


「い……」


 彼女は、気を失ったようだ。異性から恥ずかしい姿を見られているという事でいつもより興奮したのだろう。

 彼女の身体に優しく毛布を掛けてやる。

 そして、いつの間にか、俺も眠りに落ちていた。

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