15話(少々覚悟のいる表現あり)


 そこからはトントン拍子に物事が進んでいく。



 引き寄せの魔法陣と狂化の魔法陣を使った破壊工作は思いのほか成功を収めた。

 最初は王都周辺の小さな村や町といった場所から始まったこの工作。この時の規模は最小限であったし魔法陣によっておびき出されたモンスターたちは狂化の魔法陣による影響もあったが、こちらの思惑通りに見境なく全てを破壊し尽くしたのだ。そこに建っていた家も道も畑も―――人も何もかも。

 また、互いに互いを傷つけて最後には自滅するというなんとも嬉しい作用もついてきたのである。


 悲鳴こそ少なかったものの、満足できるほどのものになったとグレンが確信した瞬間であった。




 王都周辺が終われば次は王都内の城壁近くが次の標的となった。

 ただ、このあたりは慎重にことを進めなければならない部分であった。王族とそれらを崇める貴族たちをあの日に根絶やしにしたとはいえ、未だに志高い者や信心深い者は多いらしく―――自警団と称して王都を守る者たちがいたためである。

 その者たちに関してはリディアナの作り上げた魔法生物の一種・暗殺型の人造人間ホムンクルスを使って一人ずつ確実に闇に葬り去ることで解決。そのあとで王都周辺と同じように、しかしじわじわと真綿で首を絞めるようにしてぐるりと囲むように街を崩壊こわしていった。ついでとばかりに城壁も王城の周りを残して完全に消滅させた。

 結果として治安は一気に改悪化され、王都は外からの犯罪者が日常的に何度も出没し殺人やら強盗やらが発生する魔窟と成り果てた。



 この時の悲鳴や叫喚もグレンのなかで満足のいくものだった。それは自身のなかで最も満たされた瞬間だったからだ。

 故に、自身のなかにとあるものが浮上してくることにも気づかない。すなわち―――奥底に秘められていた際限なき渇望。その大きさを。















 そうして最期に起こしたあの襲撃は。規模が巨大になればという欲から生まれたあの惨劇というべき"モンスターによる王都襲来スタンピード実験"は。

 ―――グレンのなかにある渇きを増長させるといった結果で幕を閉じたのである。

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