王国戦記~不死鳥の乙女は蒼空を舞う~ 物語の終着編

薄紅 サクラ

第三部

Third story.

? ? ?



 ――――これは幼い頃から何度も見ている夢。




 いや、夢というよりも小さい頃に合ったおぼろげな出来事、が近いかもしれない。


 虚空そらへと伸ばした手は起きているときよりもすごく小さくて、フニャフニャで力なくて。いつも誰かを探しているように彷徨わせていて。


 首を動かすことはできないけれど、近くからはスゥスゥと赤子の―――小さい妹の、顔のよく似た姉の寝息が聞こえてる。


 


 それを聞くたびに思うのだ。あぁ、これは夢なんだ―――と。

 一番最初に見えていた、憶えている自分の記憶なんだ、と。




 しばらくすれば遠いところからバタバタと音が聞こえてくる。扉の開く音、その奥から漏れている歓声、呼びつける声、それから………かすかに、泣きたくなるような温かいぬくもりと匂い。


 弱々しく目を開けて聞こえた方に向くけれど、朧気で何も見ることができず。誰が自分のそばにいるのか、どんな人がここにいるのかいつもわからない。





「……んさない……さんは、ここか…………けれど、あなたたち………ものなのよ? ………をみられ……………くて、ごめ………?」


「―――、アレン。あたしはあなたたちを――――――――」


 ほら、この声だって最後まで聞こえない。











 そうしていつも。女の人の声を最後に、夢はここで終わりを告げるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る