第114話 すいすい
そういうわけで、特にトラブルに遭遇するわけでもなくすいすい進んで先へ行くと、比較的すぐに拠点らしき場所を見つける事が出来た。
隠蔽効果のある装備品を使用して、僕とアリッサがギリギリまで近づいて様子を窺う。
奴等は、ダンジョンの中に必ずいくつかはある安全地帯の一つに目をつけて、たむろしているようだった。
ひらけた場所の前に繋がる通路には、曲がり角がいくつかあったから、顔をちょっとだけ出して連中の様子に注意を払い続ける。
「ぎゃははは、馬鹿なプレイヤー共はまさかここを根城にしてるとは思うまい」
「バグも使い方次第ってな」
「一瞬で離れた場所に移動できるなら、もっといろんな事に使えそうだよな」
やだやだ。ああいう連中ってどうして、ばかみたいな台詞しか喋んないんだろう。
しかも、声煩いし、品もないし。
ここで活動していた某パーティーがいないもんだから、アイツら気が抜けまくってる。
くつろぎ放題だ。
ここまで辿り着ける人間がいるわけないって、タカをくくってるんだろう。
もしかしたら奴等、他のパーティーが天空の城の出現で移動するのを知ってて、ここの拠点を根城にする事を選んだのかもしれない。いや、考え過ぎかな。だってあいつらお馬鹿さんの顔してるし。
とりあえず、離れた所にいるシロナに、連中の特徴を伝えてみる。
「たぶん、その人達です。私に声をかけてきたのは」
何となく外れじゃないんじゃないかな、と思ってたらやっぱりそうだった。
「ふうん、そっか」
シロナの言葉とは別に、僕としてもやっぱりという思いがあったのだ。
目の前の顔をじっくり観察してみると、見覚えがあった。
見た事がある、知ってる顔が一つ。
連中の中にいるそいつは、もと攻略組のメンバーで、僕と一緒のパーティーだったプレイヤーだ。
僕は奴の事をよく知っているし、やつも僕の事をよく知っている。
実力やレベル、戦い方とかも。
だから、僕達に直接会って「フィールドから退け」と言わずに、らいかを攫ったんだろう。
卑怯なんだ、あいつは。
昔っから。
奴の名前は、ザンザ。
アリッサと同じ盗賊のプレイヤーだ。
あいつとは、レアアイテムの分配でもめて、背中からざっくりやられた嫌な思い出がある。
苦楽を共にしたパーティーを切り捨てて、自分だけでアイテムを横取りするために、剣を向けられたという、最悪な思い出が。
でも、あんなところでゴロツキと一緒にいるんだから、結局あれからうまくいかなかったんだろうな
因果応報って奴?
結局そんなもんなんだよ。
実際に目にして見たら、大した事がないのが分かったとか、そんな感じ。
イメージって罪だよね。
どんどん悪い方に捏造していくんだから。
あいつは記憶の中の姿よりもずっと、大した事が無くて、小心者で、雑魚っぽく見えた。
今まで何だか、すごく不毛な事を気にしてたような気がする。
何でぼく、あんなどうでもいい連中の事ずっと気にしてたんだろう。
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