第103話 余計な親切
途中で珍しい事に小雨が降って来たから、雨具を取り出すことになった。
降り過ぎると地面がぬかるんでしまってフィールドの移動がしにくくなるから、初心者が行動する時には困るんだよな。
幸いにして、すぐに雨は止んだから良かったけど。
一時の不便を強いられた代わりに、空には綺麗な虹がかかっている。
「わー、すごいよお兄ちゃん。空は再限度高いよね」
「開発スタッフに天気に詳しい人間がいるって噂があるくらいだしね」
「私は聞いた事ないなぁ。やめた人とかかな」
「そういえば他の有名なゲームでも空が綺麗だって評判になってたよ。剣で戦う系の」
「ふーん」
お腹が空いたからって言ってたから、雨がやんだあとでらいかにオヤツを食べさせながら雑談してたけど、ただ無目的に喋る事に飽きたのか、この妹が余計な事を言い始めた。
その会話のターゲットはシロナだ。
のんびりぼーっとしてた彼女に、ニヤニヤ笑いで話しかける。
「シロナさんってお兄ちゃんのどこを好きになったんですか?」
「え?」
「やっぱり、ああ見えて意外と親切な所ですか? それとも寂しがり屋なところとか」
「え? え?」
いきなり何の話が始まったのかとオロオロするシロナが、こちらに助けを求める視線を送ってくるけど、僕が言ったらよい餌食になるビジョンしか見えないんだよね。「ここでシロナさんを助けるなんて、やっぱり気があるんだ」みたいにさ。
で、そんなノリノリならいかは余計な気も回し始める。
「お兄ちゃんは放っておいても自分から行動しようとしないので、こっちから積極的に行くべきです」
「はぁ……」
「そういう意味で言えば、朝ご飯を作って胃袋を掴むのは大分良いアイデアだと思いますよ。あ、お兄ちゃんって漬物が好きなんですよ。つくってあげたら喜ぶと思います」
「そうなんですか。意外です」
こらこらシロナ。
何、らいかのペースに巻き込まれてるんだよ。
やめてよ、らいかに焚きつけられた女の子の暴走ってちょっと怖いんだから。
大勢の恋愛相談にのってきた妹の姿を昔から見てきた僕が保証するよ。
方針が積極的すぎるんだよね。
いけいけどんどん、で。
当たって砕けろって感じ。
「ここは私の事は気にせず、お兄ちゃんと話してあげてくださいっ」
で、最期のそれは、本当に余計な親切だから。
シロナの背中を押して、「後はごゆっくりー」みたいに押し付けてくるのやめてくれる!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます