第71話 死活問題



 ともあれ、シロナの性格でそんな乱暴な連中がいるフィールドに居座るなんて無理な話だろう。


 途中でレベリングをやめなければならなくなった彼女は、こうして僕に相談しに来たというわけだ。


 こういった時普通なら、他のフィールドで活動するのが最善だ。

 無理に連中に絡むと要らないトラブルの原因になってしまう。

 それに、一ヵ所にずっととどまってレベリングするより、色んな所をまわった方が良いの言うのも理由にある。


 そういうわけで、初心者のレベリングは、慎重に行わなければならない。


 色々なフィールドで活動した方が、手に入れるアイテムの種類が豊富になるし、モンスターとの戦い方だって何パターンか考えておいた方が良い。ずっと同じ相手ばかりだと癖がついてしまうだろう。


 加えて、同じ所ばかりで活動しているとちょっと面倒な事になる、という事情もある。


 運営がそういう風に設定しているのか「はよどけや」みたいに、ちょっと高めのレベルのモンスターが湧いてくる事があるから、長時間居座り続けるのはおすすめできなかった。


 けれど……。


「素材集め、躓いちゃいましたね」


 無法者達に戦況されてしまったそのフィールドでしか手に入らないアイテムとか素材があるから困っているのだ。


 ソロでやっていくために、シロナが持っている杖を強化しようと集めていたんだけれど……。


「あの、これからどうしましょう」

「はぁー」


 困ったようなシロナの言葉に僕は大きなため息を吐く。


 大変だよね。

 死活問題だよね。


 あの時よりはちょっとはレベル上がったっていっても、中級者プレイヤーとしてシロナがソロで活動していくためには、様々な部分での強化が必須。


 参加するパーティーがない状態のシロナの、レベル上げや武器強化は至急こなさなければならない問題なのだ。


 一応、こんなハードなレベリングよりももっとマシな方法がある事にはある。

 それは僕とパーティーを組むという方法だ。


 でも、僕はそれについては乗り気じゃない。

 だって思い出してしまうから。


 過去にあのPKの事や、攻略組として動いていた時にあった事の時とか。


『何も考えず信じる方が悪いんだよ』とか、『仲間がいると足手まといになるだろ』とか。

 僕は決して忘れる事が出来ない。

 奴等の台詞の一字一句を、その声音や調子すらも未だ鮮明に思い出せるのだから。


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