第47話 怒ってないったら



 ファーストアックでしくじったのか、そいつらのパーティーはやや押され気味だ。


 それを見たシロナが駆け寄ろうとするけど、当然引き留めた。


「あっ」

「無視、無視!」


 彼等には悪いけど、同じような事は町中で起こってるんだ。

 いちいち顔を突っ込んでなんていられない。


「でも……」

「君は友達と見ず知らずの人間、どっちを選ぶわけ?」

「それは……」


 口ごもるシロナをみて、わずかに罪悪感。

 まあ、今のはちょっと卑怯な良い方だったかな。

 迷うって分かってて聞いたんだから。


「アイツらの一人、リーダーの装備品はレア装備で自動回復効果が付いてる。それに、状況は不利だけどきちんと冷静に仲間に指示飛ばしてたし、そのうち持ち直すでしょ。ちょっとやそっとの事じゃ死にはしないよ」

「それなら良いんですけど。ニルバさん、ありがとうございます」

「何が? 意味分かんない」


 まったく。

 今は自分一人じゃなくって、僕もいる事覚えててほしいよ。

 人の尻拭いさせられる事ほど面倒な事は他にないんだから。


 そんなにあちこち心配してて身が持たなくならないの?


「シロナ、手間のかかる妹とか弟とかいる? 親戚とかは?」

「え? はい、よく分かりましたね。いますよ。年の離れた弟が。ちっちゃくて可愛いんですけど、そう言うといつも怒ってしまうんです」

「あー」


 なんかシロナがこんな性格になったの、納得。

 きっとそういう事なんだろうな。

 さっきのアレだって、別に僕の事を特別に気にかけて、ああしたわけじゃなくって、家族にするような事の延長線上でアレしたわけなんだって。


「……」

「あれ、ニルバさん。何だか怒ってます?」

「別に、怒ってないってば」

「そうですか。でも、怒ってますよね」

「怒ってないったら」


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