第24話 竜がいるらしい場所



 ゴンドラに乗りながら、水路の上を移動していった僕は、ウィークローネの町の中の、ある場所に立ち寄った。


 それは、町の外周近く、さびれた工場が立ち並ぶ場所だ。


 まったく人気がない場所で、歩いていても誰も声をかけてはこない。

 たまに人影が遠くに見えたりもするが、数はそんなに多くなかった。


「見えないと思ったら、こんな場所にいたのか……」


 遠くからそっと眺めると、視線の先には青い皮膚に青いうろこを纏った水龍ラピスの姿が。


 爬虫類の姿をベースにした巨体は、一般的なプレイヤーとは比べ物にならないほどの大きさ。

 体についている申しわけ程度の羽をパタパタ動かして宙を移動する速度は自転車並だけど、頭上を取られるとやっかいなだというのは、この姿を見ての通りの事実だ。


 ブレスなんかで一方的な攻撃を加えられると手出しできないから、攻略するならまずは魔法攻撃なんかで地に落としたり、ヘイトをかせいで相手の注意を引いたりする事が大事になってくる。


 引き続いて観察しているが巨大モンスターは巣の中からまったく動こうとしない。


 水龍の下には集めた枝や植物なんかで巣が作られているようだ。


「卵があるのかな」


 ここからでは確認できないので分からないが、龍が巣から動こうとしない理由は大抵は卵を守るためだ。


 普段の龍も、どちらかと言えば引きこもりみたいな生活を送っていて、まともに動こうとしない生き物だけど、産卵した後なら特にだ。


 船頭のおっさんに聞いた通り、やはりここでじっとしてるんだろう。


 好奇心とか冒険心とか、無謀な挑戦心を発揮した誰かが、留守中の龍の巣をうっかり荒らしてしまったんだろうか。


「何にしても町中に龍とか、どうなのさ」


 仕様なのだろうか、それともデスゲームになった際の変更点なのだろうか。


 このファンタジー・オンラインは、正式サービスに入る前に、数十人の人間を対象にしたテストプレイが行われたとか聞くけど、その時はそもそも龍の存在すら、話題に出なかったらしい。


 幸いな事に龍は、むやみやたらに生物を殺戮するような生物ではないのだが、こんな大層な生き物が自分達の生活圏内にいるとなったらこのウィークローネの住人達は、気が休まらないだろう。


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