麦茶、ぬるくなったから冷やした
夜久 晶
第1話
僕の耳はポンコツになったみたいだ。
朝起きると耳が聞こえなくなった。
驚きはしない。なぜならこうなるであろう、と読んでいたからだ。
最近、やけに耳鳴りが続いていた。
頭を掻き、寝ぐせでぐしゃぐしゃになっているであろう髪を、自然体に戻してやる。
あくびをしながら、腹にかかっていた薄い毛布を剥ぎ、僕はキッチンのすぐ近くに飾ってある時計を見た。
太い針は十一と十二の間を指している。
やってしまった、その言葉が押し寄せ、口に出しては見たものの、案の定なんの音も聞こえはしなかった。
寝返りを打ちながら、ドンキで買った安い枕とウォーターベッドの間に挟まっていたスマホを取り出す。スマホのアラームは、いつも朝8時に設定し、毎日必ず鳴るようにしている。画面に表示された指示に従い、パスワードを入れ、目覚ましのアプリを開く。
僕は普段、大手弁当チェーン店で主に配達をやっている。
九時の開店と共に、配達と受取予約の電話注文が殺到する。配達用の電話注文は、十一時に止める。そこから配達をするのだが、今から行ったとしても明らかに間に合わない。
だがこの場合、誰も悪くは無い。
スマホのアラームは、鳴っていたと思われる履歴があり、ちゃんと機能していた。
店長からの電話が十件以上入っている。
いや、これは出たとして、何も聞こえないのだからどうしようもない。
とりあえず、店長には僕の今の状況を文に起こし、メールで送信した。
果たしてこれは、信じる事が出来る事実になるのか、はたまた寝坊した一従業員が怒られないように考えた嘘になるのか。
僕は、真実にするために病院に向かうことにした。
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