第18話「拝啓、脳内に語り掛けてくる者」
その日の夜、僕はいつの間にか寝ていたみたいだ。起きると明かりの消えた真っ暗な部屋。隣にはアミュさんのおっぱいが……。へ?なんで?どうして?こんな間近に柔らかいものがあるのか。横には「スースー」と天使のような寝息が聞こえてくる。クンクンと匂うとシャンプーをした後だろうか、柑橘系の非常に甘い香りが漂っていた。
「うひょーーーーー。まじですか。まじですか。まじですか」
僕自身、こんな展開は人間時代の前世ではなかったことだ。これはアスナが以前言っていた小さな幸運ってことなのだろうか。胸が張り裂けそうだ。
ニヤニヤが止まらない。僕は必死で口を押さえるのだけど、はたから見たら変態おやじだぜまったく。
次第に、全身の毛が立ってきた。これぞ、おっぱい効果。素晴らしい世界に来たものだぜ、こんちきしょうめ。
アミュさんのおっぱいが当たっていて、喜んでいる僕がいた。だけど突如、何かの殺気に気付き、入口のドアを見る。
なんだろう、誰かが僕を見て怒りを感じているかのようなプレッシャーすら感じる。
「まあ気のせいだろう。気にするだけ無駄だ。気にして見に行ったら死にかけるこの異世界、安易に首をつっこまない方がいいだろう」
僕はアミュさんの寝ている寝顔を確認すると、ニコリと微笑む、手に当たっているおっぱいをつんつんした。
ビンビンと感じる殺気を気にしないことにした僕だったので、アミュさんの布団にもぐりこんだ。
ここなら安全地帯だ、誰も来られない。安心感、そうだ、この安心感だよ。この異世界にやってきて一番感じたかったものだった。第一、前世でもこんな母性が感じられるような安心感なんて学生、社会人時代になって感じることがなかったからよ。本当、今実感しております。前世の父、母へ。僕は幸せをかみしめております。目の前に見える豊潤なおっぱいと共に。今夢に帰還します。
僕はゆっくりと布団の中で、瞳を閉じた。すると夢を見ているのだろうか。脳内から誰かが話しかけてくる。
『気安く触るな、おい、聞いているのか?この変態め』
突如、最近聞いた覚えのある声が脳内に響き渡る。
僕は瞬時に、目を開けた。そして、幸せそうな笑みをしながら眠っている顔をよそに、入口のドアを見た。
「だ、誰だ?」
奇妙な雰囲気を感じる。誰だよ。僕の幸せの邪魔をする奴は。だいたい、この異世界にやってきてからというものの、邪魔する奴らばっかりな気がする。
『あなたを見て、ピンと着てからというものの、来てよかったわ』
また脳内で会話してきやがった。くそったれ、テレパシーとかこの世界は何でもありかよ。
ただ、向こうが脳内で会話してくるからこっちも脳内で会話してやろう。
「…………」
どうだろうか、脳内で話しかけるぐらいだし、このぐらいは伝わるだろう。僕は再び、アミュさんが居る布団の中に入る。脳内で会話出来るんだったら、僕も脳内で会話だ。声を出すとアミュさんを起こしかねないし。なんせ、今は夜、体調も悪いからな。それにまだ寝たいのも理由にもあるが、いや、幸せを深く眺めたいって願望の願望の方が強いと思う。くっそ、手の毛が立ってきてるぜ。体中が興奮冷めやらぬだぜ。
しばらく間があってから、脳内から再び、話しかけてくる。
『おい、なんか喋りなさいよ、聞いてる?寝てるんじゃないわよ』
脳内から話しかけてくる何者かには、僕からのテレパシーは聞こえなかったようだ。
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