魔女の森編
序章 What’s your name?
草木が鬱葱と生い茂る森林地帯。遠くからは、野鳥のものらしき鳴き声が響いてくる。
道なき道を走り抜ける度、足許から聞こえるのは、草を踏み付ける音。立ち止まる暇もなく走り続ける俺のすぐ横を、その時、一陣の風が通り過ぎた。
ただの風じゃない。心地良い風でもない。
突風と呼ぶべき鋭いその風は、自らの行く手を阻む木々を、次々に切断していく。
これは自然現象として生まれた
俺に向けられた殺意の一撃は、辺り一面の草や木を根こそぎ削り取っていく。
隠れる事は、恐らく無意味だろう。なぜなら俺の髪は、炎のような紅い色をしている。普段でもかなり目立つこの髪は、周囲に緑が多い森の中では、余計に目立ってしまう。
と、その景色の中に、俺は一人の少女の姿を見つけた。
殺傷するための風を生み出し、敵愾心を向けてくるその少女の正体を、俺はよく知っている。
彼女は俺と同じで、『魔術』を操る者。
人は俺達のような存在を、総じてこう呼ぶ。
『魔術師』、と。
「お前、一体何者だ?」
少女の正体を理解した上で、それでも俺は問い掛けた。俺が知りたいと思った部分はそこじゃない。
「あんたこそ、どこの誰よ?」
少女は怪訝な顔付きで、静かに問い返してくる。
俺達の出会いは、そんな会話から始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます