第1話
神崎修哉。
僕の幼馴染でありこのクラスの学級委員である。
キラキラと日に反射する赤髪は染めすぎて痛んでいるかと思いきや
ふわふわと風に時折揺れていて触り心地が良さそうである。
爽やかイケメン、そう言われるのが一番あっているであろう彼は、色白の肌に、すらっとしたスタイル。
それなりに高身長でもあり性格もいい彼は、クラスでも人気者である。
まぁ、『 誰よりも正義感の強い自己犠牲馬鹿。』
誰もが憧れる彼、神崎修哉という存在は、幼馴染の僕からすればその程度の評価だ。
誰かを守ることに必死で、自分の犠牲を厭わない。あいつはそういうやつである。
轢かれそうになった少女を助けて轢かれたり、強盗にあったときは自ら人質になることを選んだり、火災現場に遭遇すれば命を顧みず飛び込んで助けに行ったり、、、まだまだたくさんあるが。
自分の命なんてどうでもいいから誰かを助けたい。それが、あいつの口癖である。
なんせ未だに、将来の夢を問われたり、進路希望を聞かれるたびに
「正義のヒーローになる」だなんて大真面目にいうやつである。
また、怪我をさせたという後悔。
また、止められなかったという自己嫌悪。
修哉がいなくなるかもしれないという恐怖。
何もしなかった自分への怒り。
あいつが自己を犠牲にして、誰かを救うたびに、僕がこんな気持ちでいることなんて、きっとあいつは知らないのだろう。
そしておそらく知ったところであいつは
「それでも俺は誰かを助けたいんだ。俺の夢だからさ、」
なんて申し訳なさそうに笑うのだろう。
それでも、そばにいる僕はもしかしたら修哉以上の馬鹿なのかもしれないけれど。
授業の終わりのチャイムが耳に飛び込み、学食へと向かう学生を眺めながら教科書などを片付ける。
「ハル!!」
噂をすればなんとやら、だ。
こちらに向かって満面の笑みで手をブンブンと振っているのが、神崎修哉である。
ハル、というのは僕のあだ名のようなもので春樹からとってハル、なんとも単純であるが嫌な気はしないのでそのままにしている。
「相変わらず元気だね、」
「いや、お前が暗いんだよハル」
「暗いって言い切ったなお前、、、」
なかなかに失礼なやつであるが悪気はないのだ。
ただ、馬鹿真面目で素直なだけである。
むしろよくこの歳まで大きな問題もなくやってこれたなと思うくらいには、こいつはおしゃべりである。思ったことをすぐに口に出すのだから困ったもんだ。
口は災いの元ということわざを知らないのだろうか。
「まぁいいや、行こーぜ!腹減ったw」
「はいはい。わかったからもう少し声のボリュームを下げて」
こいつはどこまでも明るい。
明るくて優しくて、太陽のような人間だ。
だからこの時、僕は、修哉が抱える大きな闇に気づくことはなかったんだ。
気づくことが、できなかったんだ。
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