ペンギンの憧憬〜無垢なる器〜

yAchi

序章

無垢。

それは美しく汚れなき器を示す言葉。

言い換えるなら空っぽ。

そう、私は空っぽなんだ。

空は空虚で大地は灰色。

容姿だけは報われているのか褒められることが多い。

しかしそこに中身はない。

それ以上はないのだ。


「ジェンツーさん!今日も可愛いですね!」


「ジェンツーさん!どうしたらそんなに可愛くなれるんですか!?」


「どうしたらもっと早く泳げるんですか!?教えてください!」


私の周りにはフレンズが絶えない。

皆が褒めてくれる。

けどそこに私の意思はない。

たまたま生まれ持ったものを褒められているだけで、それを良しと生きている訳で。

結局の所、私の中身は悪い意味で無垢だった。


「あはは…私にも分からないかな…フレンズになる前の記憶が無いし…」


愛想笑いでみんなの反応を受け流す。

本当に空虚だ。

虚しい空っぽな私を埋めてくれる人は誰もいない。

私自身も含めて。


みんなの対応をしていると奥の方から人混みをかき分けて2人の影がこちらに向かってくるのを確認した。

そしてたどり着いた二人のうち、片方のツインテールの女の子がこう言った。


「ね、ねぇ!あなた、アイドルやってみない!?」


息を切らした彼女の頬の汗は太陽を反射した。

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