Re:C∀LL 〜少し先の未来で幼馴染が死ぬことを文字化け電話で伝えられた件〜
森川 蓮二
プロローグ 疾走の果テ
「はぁ、はぁ、はぁ……」
息を切らしながら彼は閑静な住宅街を走っていた。
蜃気楼が揺らめくアスファルトを踏みしめて制服姿の少年はただ走りつづけている。
ときおり大通りを抜けつつ、信号の少ない裏道を縫うようにして走る彼にすれちがった通行人たちは驚いていたが、そんなことはおかまいなしだ。
走りつづけて息もあがっているし、胸も苦しくて本音をいえばすぐにでもその場にへたれこみたかったが、そんな本音を押さえこんで足を動かす。
大通りを駆け抜ける。遠くからパトカーのサイレン音が聞こえてきて、少年は一瞬そちらのほうに目を向ける。
自分を追っているのかもしれないと考えながらも彼は止まらなかった。
止まらない。
止まってはならない。
いまの自分にはやるべきことが、そうしなければならない理由があるのだ。
そんな思いを胸に彼は走りつづけ、その果てに一件のマンション前にたどり着く。
黒いタイルに覆われた七階建てのどこにでもありそうなマンション。
外からマンション全体をじっくりと観察しながら、携帯を取り出して番号を入力する。
「頼む。なにか反応してくれッ」
呼び出し音を聞きながら少年は切羽詰まった様子でつぶやく。
すると視界の片隅でなにかが動き、見ると三階の廊下を制服姿の女生徒が走っているのが見えた。
「……いたッ!」
思わず少年はマンションへ入ろうとするが、一瞬だけ立ち止まった。
だがすぐに迷いを断ち切るように頭をふる。
いまは行ってどうにかなるならないを考えている場合ではない。
自分に言い聞かせるように少年は持ち前の足の速さで階段を駆け上がっていった。
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