三題噺ランナー
新吉
第1話 雪 花畑 寝起き(朝禁止)
「おはよー」
おはようじゃねえよ、夕方だ。こんにちはもおかしい時間。この地方には丁度いい方言があるが、俺は使わない、使えない。夜通し帰ってこない日はいつもそうだ。死んだように眠る。それはそれは眠そうで。猫のようにゆっくりとそして体全体を使って思いっきり伸びをしていく。
外には雪がちらついていた。それを窓際へ確認しにいくのか。立ち上がって窓へ向かうその仕草があまりにフラフラで心配になった。
「どうした?」
「いや」
キュキュ
「やっぱり雪だね。あんまり静かだったから」
「寒かった?」
「ううん。あったかくて、寝てるうちに春が来たのかと思ったよ?」
「なにそれ」
「毛布、いい匂いだ」
「ああうん」
「あったかくて、いい香りで。花に囲まれて寝そべってるのかと思った。だから寝すぎて季節またいじゃったのかと」
ほんとは喜ぶべき言葉なのに。花に囲まれて、あんなに揺すっても騒いでも起きないアンタを想像したら俺が死にそうだ。
「俺が起こさなきゃ本当にそうなるかもな」
「うそ、起こしてね」
「俺はそこまで面倒見ないからな!」
「はいはい、あー腹減った」
「飯、下降りてこい」
「やったー!」
春になる頃には俺はもうここにはいない。そのつもりだ。
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