河童と猫はお知り合い
またたび
河童と猫はお知り合い
「ねえ、猫さん?」
「なんだ若造」
「私って可愛い?」
猫は口に含んでいたミルクをつい吹き出してしまった。
「な、何を言ってるんだ若造」
「私たち結構長い付き合いじゃん?」
「まあ、そうだな。かれこれ5年くらいか?」
「うん、そんぐらい。で、私思ったのよ・・猫さん、私って可愛い?」
「脈絡がないのだが」
「ほらさ、私も乙女じゃん?そういうの気になるのよ。こんなに長く関わってるのに、もしも私を恋愛対象としてすら見てくれていなかったら、私きっと泣いてしまうわ」
「・・い、いやさ、」
猫は複雑な表情になる。
「ま、まさか図星⁉︎」
猫はますます複雑な表情になる。
「・・すまんな。でも正直に言おう。わしはお前を恋愛対象として見たことは一度もない。言うべきかどうか悩んだが、嘘はつきたくなかったのでな」
「ね、猫さん・・」
河童ちゃんは少し険しい表情。でもすぐいつものフワァッとした感じに戻った。
「正直に言ってくれてありがとう、猫さん。おかげであんまり傷つかなかったよ」
「そっか・・なら良かった」
猫はホッとした。そしてまだ少しだけ喋る。
「確かにわしはお前を恋愛対象として見たことはない。しかしわしはお前のことを唯一無二の親友だと思っている。大切な人には変わらない」
河童ちゃんの目には少し水滴が垂れていた。
「・・ありがとう、猫さん。なんかとても嬉しいや。私たちは親友か」
「ああ、親友だ」
この初代の猫と河童の友情は次の世代にも続いた。そしてそのまた次の世代にも。また、河童ちゃんの恋心も世代を通して確かに受け継がれていった。毎回河童側が猫側に恋をしていた。しかししばらくして、大規模な自然破壊により川は汚れ、河童の姿は見なくなってしまった。猫も人間のペットとして別の道を歩んでいった。
猫はきゅうりを見ると驚くと言う。
それはきゅうりを見ると自分の唯一無二の親友が近くにいるかもと思うからかもしれない。ただ時を超えて、世代を超えて、それはもう無意識の行動となった。現在の猫たちはなぜ自分たちがきゅうりを見ると驚くのかを知らない。しかしルーツとして、そんな些細で素敵なストーリーがあったことはここに綴らせてもらおう。
ちなみに遠いどこかの湖で過ごしてる河童たちは、人間が抱えてる猫を見ると、なぜか切ない気持ちになるらしい。
河童と猫はお知り合い またたび @Ryuto52
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