21
昼休みに、オレは別府えにしに、自然学習の写真について、どういうことか説明してもらうことにした。
「えにし、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
「こうたろう君。怖い顔をしてどうしたんですか。」
「自然学習の写真についてなんだけど。」
「写真ですか。ああ、廊下に貼られていましたね。私はまだ、しっかりとは見ていないのですが、何か変な写真でもあったのですか。」
別府えにしは、写真を見ていないと言っていたが、オレが自分に何を聞きたいのか、見当がつかないわけではないだろう。オレと一緒に居たグループの男子が言っていたことが本当だとするならば、あの写真は、故意に撮られたものだ。オレが気にしないわけがないことを彼女は当然わかっているはずだ。
オレの顔が相当怖かったのだろう。別府えにしは、怖いと言いながらも、オレに一つの答えをくれた。
「その顔だと、あの写真を見つけたみたいですね。それで、どういうことか説明して欲しいというところでしょうか。」
「わかっているなら、どうして、そんな写真を。」
「なになに、写真がどうしたの。こうたろうの不細工な写真でもみつかったの。」
「それでこんなにぎすぎすした雰囲気にはならないだろ。もしや、浮気写真でも見つかったか。」
「こうたろう、だから言ったでしょ。この女はやめておいた方がいいって。」
オレと別府えにしが話しているところに、クラスメイトが口をはさんできた。その中には、くそ女の姿もあった。
「おや、皆さんも、自然学習で撮られた写真が気になるのですか。こうたろう君が気になっている写真の番号は、確か『E155』だった気がします。」
自分の周りにクラスメイトが集まってきたことに、別府えにしは驚きながらも、あっさりと、オレが説明を求めていた写真の存在について、知っていると暴露した。やはり、見ていないというのは嘘で、しっかりと確認していたようだ。
「Eってことは、結構後ろの方の写真だよな。あの辺りで変な写真は……。」
「あれじゃないか。ほら、別府さんと、あいつが映ってる、ツーショットの奴。」
「なるほど、確かに付き合ってるやつが他の男子とツーショットっていうのは、説明を求めたくなるな。」
「もし、こうたろう君がその写真についての説明を求めているのなら、映っている男子に聞いた方がいいですよ。彼に伝えていたことが本当です。賭けについてもそうですけど、こうたろう君は、いつまでも私を見てくれようとはしない。それに。」
別府えにしは、その後の言葉をオレの耳もとでささやいた。他のクラスメイトには聞かれたくなかったのだろう。ささやかれた内容に、オレは一瞬、思考が停止した。
『私、もうすぐ引っ越しするの。転校するってことね。その手土産に、あなたたちの絶望した顔が見たい。それくらいの権利、私にはあるよね。」
「ひっこ。」
「それに、そんなことが続いたので、私のこうたろう君への愛は、結局、幼馴染の愛のパワーには勝てなかったと思ったのです。」
オレにささやいた言葉を無かったことにして、言葉の続きをクラスメイトに聞こえるように話し出す。それを聞いたクラスメイトは、大いに盛り上がりを見せる。
「おおお、別府さん、なんて健気なんだ。こうたろうには、やっぱりもったいないな。さっさと別れた方がいいぞ。」
「幼馴染パワーか。私もそれ、同意かも。どうにも、二人には、二人の世界があるからね。」
「別府さん、それでも私は、あなたを応援したいわ。」
「あんたとこうたろうの仲は、テストで判明する。それまでは、保留にしてあげてもいいわ。」
クラスにくそ女の声が響き渡る。別府えにしも、その言葉に異論はないようで、頷きながら、同意する。
「そうでした。テストの結果次第ですね。私とこうたろう君の関係が変わるのか、そのままなのか。結果が楽しみです。」
「ふん。」
「キーンコーン、カーンコーン。」
話は終わりとばかりに、昼休み終わりのチャイムが鳴った。オレたちはしぶしぶ席に着いて、次の授業の準備を始めた。
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