19
「テストを開始してください。」
別府えにしが「今回のテストで学年一位をとる」と宣言してから、一週間がたった。いよいよ今日からテストが始まる。
オレも別府えにしに影響されて、いつもよりテスト勉強を頑張ったので、今回のテストは今までよりいい順位を狙えると思っていた。先生のテスト開始の合図とともに、最初のテストである数学のテストが始まった。オレたちはいっせいに問題用紙に目を落とし、解答用紙に鉛筆で答えを記入していく。
カリカリと解答用紙に記入する鉛筆の音が教室に響き渡る。こっそりと別府えにしのことをうかがうと、真剣に問題に取り組む姿があった。
「テスト問題について、訂正や質問はありませんか。」
途中で数学の先生が、テストの不備がないかどうか、教室を回ってきた。特に間違いは見つからず、オレたちは、誰も訂正などの指摘をしなかった。クラスの誰も手を挙げなかったので、先生は黙って教室を出ていく。
今回のテストは、オレなりに勉強した方だと思っていたが、勉強がテストに反映されることはなかった。数学では、文章題の問題も多くあった。文章を読んでも、さっぱり計算式が思いつかない。文章問題が苦手なオレはそこで苦戦していた。
何から手を付けていいのかわからないまま、時間だけが過ぎていく。オレはどうしようもなくなって、今度はくそ女の様子をこっそりうかがうことにした。くそ女も頭は悪い方ではないが、良い方でもないので、オレと同様にテストに苦戦しているようだった。
そのことになぜかほっとしているうちに、テスト時間の残りが少ないことに気づく。慌てて、何とか頭の中から絞り出した計算式を当てはめて問題を解いていく。
「解答をやめてください。一番後ろの席の人は、前の人の解答用紙を集めて前に持ってきてください。」
何とか、時間内に最後の問題まで数字を埋めることができたが、それが正解だという自信はない。
一時間目のテストが終わり、二時間目、三時間目とテストは続いていく。テストの出来は、どの教科も似たり寄ったりだった。勉強したと思っていたが、自分の努力と点数は結び付かないらしい。
テストは二日間に分けて行われた。今回は、期末テストとは違い、五教科のテストだった。一日目のテストが終わり、オレたちは、午前中で帰ることになっていた。
「やっと、一日目が終わった。勉強したと思ったのに、できなかったな。」
「そうですか。私はできましたよ。明日もテストは続きます。明日のテストに備えて、テスト勉強をしたいので、私はこれで。」
オレの独り言を拾った別府えにしが言葉をくれた。しかし、オレに興味がないのか、明日のテスト勉強のために、さっさとオレを置いて帰ってしまった。
「本当にオレのことが好きなのだろうか。」
いくらテスト勉強をしないといけないと言っても、彼氏のオレを置いて、さっさと帰るものだろうか
とはいえ、オレも明日のテストに備えて勉強をするため、急いで帰る支度をする。ちらりとくそ女の様子を見るだけ見ると、くそ女もオレと同じように、あまりテストの出来が良くなかったようで、沈んだ表情をしていた。
「おい、ちか。」
声をかける寸前で、オレは言葉を止めた。ここで声をかけて何になるというのか。昨日のくそ女との会話を思い出し、オレはそのまま言葉をかけることなく教室を出た。
二日目のテストの出来もあまりよくなかった。オレの勉強の仕方が悪かったのだろうか。
「解答をやめてください。これで最後の教科ですね。二日間、テストお疲れ様でした。」
最後の教科は国語だった。数学同様、文章を読むのが苦手なオレは、国語でも苦戦した。しかし、国語は解答を書けば、多少の部分点がもらえる可能性があるので、何とか解答欄を埋めて、提出した。
「ええと、連絡になりますが、自然学習でカメラマンさんに撮ってもらった写真が出来上がりました。廊下に張り出しましたので、欲しい人は、今から渡す用紙に番号を記入して、封筒に入れて、先生に提出してください。写真代金も忘れずに封筒に入れてくださいね。」
帰りのHRの連絡で、自然学習の写真が出来上がったという話を担任がしていた。帰りに見ようかと思ったが、テストが終わった当日から、すぐに部活は再開される。久しぶりの部活なので、写真はまた明日の休み時間にでもゆっくり見ようと思った。
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