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「仕方ないから、私たちが組んであげようか。」


 残っていた女子二つのグループの内、オレたちに声をかけてきたのは、くそ女たちだった。くそ女と、くそ女と一番仲がいい女子一人がまだグループを決めず残っていた。くそ女の取り巻きをしているくらいなので、この女子も性格は悪いといってもいい。そんな奴らと、せっかくの自然学習を一緒に行動したくはない。


 そんなオレの心中を知らず、ましてやオレが別府えにしとつき合っていることを知っているはずなのに、オレと一緒に組もうとしている男子が余計なことを言ってくれた。


「いいじゃないか、こうたろう。せっかくちかげが誘っていくれてるのに、断るのはもったいないだろ。それに、あと残っているのは、あそこの女子二人のチームだぞ。」


 ちらと残っている女子二人のグループを見ると、なるほど、男子たちが言うことも一理ある。残っていたのは、いわゆるスクールカースト底辺にいる、暗くて地味な女子二人。それと比べると、確かにくそ女と一緒の方がましという意見もうなずける。そして、もうひとつ残っている男子三人の集まりに視線を向けると、そちらも地味系男子の集まりだった。


 あえてくそ女は、オレと一緒のグループになりたいがために、最後までグループを決めずに残っていたのだろうか。いつもなら、真っ先にグループ決めを終え、班長を率先してやろうとするのに、それをしていないということはそういうことだろう。



 しかし、オレはくそ女が嫌いで嫌いでたまらない。いくら、地味で性格が暗くてスクールカースト底辺の女子たちでも、くそ女よりは一緒にいて楽しめるだろう。くそ女はオレが自分たちではなく、スクールカースト底辺の女子と組むとは思っていないのだろうが、おあいにく様である。


「お、こ、と、わ、り、だ。」


 オレは声に出して否定する。絶対にくそ女と一緒のグループにはなりたくない。もしそうなった場合、自然学習は欠席してやる。だからこそ、それをしないために、残ったもうひとつの女子たちの方に歩み寄ろうとした。





「もし、グループ決めでもめているのなら、手を貸しましょうか。皆さん、あなたたちがグループを決めるのを待っていますよ。」


 オレがくそ女の誘いを断っていたら、別府えにしが突然会話に割り込んできた。いったい、今度は何を企んでいるのか。すでに彼女はグループを決めて、座っていたはずである。周りを見ると、確かにクラスの大半がグループ決めを終えて、その場に座っている。それを見かねての発言だろうか。


「何よ。別府さんはすでにグループが決まっているはずでしょう。それなのに、私たちのグループ決めに口を挟まないでくれる。」


「でも、話を聞いていると、このままだと、それぞれが納得いかないグループ決めになると思います。私にいい考えがあるのですが、聞いてもらえますか。」


 くそ女の発言にひるむことなく、別府えにしは話を再開する。ただし、会話の矛先はオレとくそ女ではなく、オレと一緒に組もうとした男子たちに向けられていた。


 別府えにしは、自分とちかげ、ちかげと一緒に組んでいる女子で三人、オレと、オレと一緒に組んでいた男子二人の三人で一緒にグループを作ろうと言い出した。


「私のグループは六人なので、一人減っても問題はありません。」


 突然の話に、オレは戸惑いを隠せなかった。一度決まったグループを抜け出し、オレと一緒にグループになりたいということか。しかし、それにしては、ここでちかげを一緒のグループに呼ぶのはおかしな話だ。彼女とくそ女は敵対しているはずだ。




「僕たちはどっちでも構わない。ちかげが誘ってくれたから、ちかげと組もうと思っていたし。」


「俺もちかげがいるグループなら文句はない。」


「なっ。」


 どうやら、オレ以外は、別府えにしとくそ女が一緒のグループになることに違和感を覚えないようだ。オレは別府えにしと一緒のグループになれるという誘惑に負けず、くそ女とは別のグループに入ろうとした。


「だったら、オレはお前たちとは違うぐるー。」


「それは嫌。私はこうたろうがいるグループに入りたかったんだから、それ以外はお断り。」


 くそ女も男子たちに同調するように意見して、話は一向に進まなくなってしまった。



「なんだからもめているな。決まらないようなら、先生が決めてもいいんだぞ。」


もめているのを見かねた担任が話に参加してきた。なかなかグループ決めが決まらないことにしびれを切らしたのだろう。面倒なことになりかけてきた。

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