17
「おはようございます。あら、朝から騒がしいわね。」
先生がやってきてしまった。
「キーンコーンカンコーン。」
無情にも始業のチャイムが鳴り響く。みな、私たち3人の様子が気になるが、クラスメイトはおとなしく席に着いた。
「さて、向田君の顔はどうしたのかしら。それと、どうして別府さんは泣いているのか説明できる人はいる。」
たまたま今日は終業式であるが、その前に学活の授業が設けられていた。本来は成績表などを渡す時間なのだが、この教室の有様だったので、急きょ、話し合いとなってしまった。
話し合いの結果、双方悪いという結果に落ち着いた。そして、なぜか私も今回の騒動に関係があるとして、放課後残ることになってしまった。
私と別府えにし、イケメンバカの三人は、終業式が終わって、帰りのHRが終わり次第、教室に残るように言われてしまった。
それからはひどい有様だった。別府えにしは泣いて話もできない状態に自ら作り出していて、イケメンバカは興奮してまともに話をする気配がない。
私がこの3人の中で、唯一まともに話ができる状態だったが、すでに面倒くさくなっていた。だから、私も二人と同じように話をするのをやめた。そのために、先生は今回の騒動がどのようなものかわからないようだった。
そのまま、話があいまいなまま、結局、夏休みを迎えてしまったのだった。
余談だが、別府えにしは、イケメンバカに頬をはたかれたと親に伝えたようだ。それに激怒した両親が、イケメンバカの家に乗り込んだとか、こっぴどくイケメンバカの家族はやられたとかいううわさが流れてきた。
私は別に可哀想などと思わなかった。ただ、自業自得だとしか思えなかった。
こうしてみると、私はいかにクズな男に振り回されていたかがわかる。しかし、それもこの一学期で終わりだ。
二学期以降は、私はイケメンバカとは縁を切ろう。どうせなら、彼がもう二度と学校に来られないくらいの出来事が起こればいいとさえ思っていた。
今まで、勇気がなくてできなかったが、別府えにしのおかげで踏ん切りをつけることができた。
変な奴だったが、それでも私は彼女に感謝している。
私は夏休みの最終日、イケメンバカ、向田俊哉の家にわざわざ出向いて、両親も呼びだしていってやったのだ。
「金輪際、私に近づかないでください。近づいたら、お前ら家族をぶっ潰してやる。」
彼も彼の両親も、私の言葉を真に受けることはなかったが、私は本気だった。とはいえ、ぶっ潰すといっても、殺害とか傷害事件を起こしてしまっては、その後の私の人生がダメになる。
もっといい方法がある。それは私が自殺未遂をすることだ。そうだ、遺書をかこう。遺書にあいつのことを書いてやれば、あの家族はさぞダメージを受けるだろう。
その時の私は正気ではなかった。そのまま、勢いのまま、遺書を書き、自分の部屋で首を吊った。
そのまま死んでしまえば話は終わりだが、死にはしなかった。死ぬ前に母親が見つけて命はとりとめた。最初から死ぬ予定はなかったので、あらかじめ母親がいる時間帯を見計らっての行動だった。
そして、遺書は見つかったが、私は記憶を失った。隣の彼のことは全く覚えていなかった。
ただ、一つだけ覚えていることがある。
「幼馴染なんてくそくらえ。」
その一言しか、隣の家に住んでいる男に対しての感情はなかった。
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