6
週が明けて、いよいよ中学校最初のテストが始まった。テストは2日間にわたって行われた。中学校一年生の初めてのテストで、みな、私と同じように準備をしっかり行ってきたのだろう。テストの最中に周りをちらっと確認すると、机の上のテスト用紙にかじりついて問題を解いていた。シャープペンの筆記音がカリカリと静かな教室に鳴り響く。
ふと、一人気になる生徒を見かけた。テストが始まって20分くらいたっただろうか。時計を見て時間を確認しながら問題を解いていた私は、思わず二度見してしまった。
それは、一限目の数学の試験だった。その生徒は、すでに問題を解き終えたのか、問題用紙を裏返しにして、何とそこに絵を描いていたのだ。周りはまだ問題を解いている生徒が多い中で、その行為は目立っていた。
別府えにしだった。彼女は勉強が得意なのだろうか。まあ、それでなければ、わざわざあのイケメンバカに勉強を教えようと言い出さない。
彼女を見つめていたのは数秒くらいだっただろうか。私の視線に気づいたのか、目があってしまった。慌てて、机の上の問題用紙に目を下ろす。なぜか、見てはいけないものを見たような気がして、その後の数学のテストは集中できなかった。とはいえ、普段から勉強と、中学校最初の問題が、正と負の簡単な計算とそれに関する文章題であり、そこまで考える問題もなかったので、テストの点数に影響は出ないだろう。
それからのテストも、彼女は決まって、テスト開始から20分ほどでテストの問題用紙を裏返し、そこに絵を描いていた。その様子をいちいち確認していた私もどうかと思うが、気になって仕方がなかったのだ。
こうして、テスト二日間は無事に終了した。ちなみに彼女と一緒に勉強したあのイケメンバカの様子も確認してみたが、彼もどうやら少しは勉強をしていたようだ。問題用紙に向かって、真剣に悩む姿を見ることができた。
月曜日と火曜日にテストが行われて、水曜日にはもう、一日目に行った教科のテストが授業で返却された。最初に返却されたのは、数学のテストだった。名簿順にテストが返却されていき、呼ばれた生徒は教壇にいる先生のところに解答用紙を受け取りに行く。
「武田。」
「はい。」
私の名前が呼ばれたので、席を立ち、解答用紙を受け取りに行く。解答用紙を渡す際に、先生にほめられた。
「すごいぞ。これからも頑張るように。」
全員分の答案用紙が各自に返却され、先生が今回のテストの最高得点と、クラスの平均点、学年の平均点を黒板に書いていく。最高得点は100点。どうやら、ほめてくれたのは満点だったからのようだ。
「今回のテストは、みな、よくできていた。100点も数人ほどいた。素晴らしいできだ。これからも頑張って勉強していくように。」
私以外にも100点がいるということだ。さて、いったい誰が100点を取ったのだろうか。気になるが、わざわざ人の点数を聞くのは気が引ける。まあ、人のことなど気にすることもないだろう。
その後も、テストは次々と返却された。5教科すべて返却され終わったのは、金曜日のことだった。
私は5教科の結果は満足のいくものだった。国語100点、数学100点。英語95点。社会98点。理科95点だった。惜しいミスを何箇所かしたせいで、オール100点は無理だったが、まずまずの出来だったと思う。それに周りの反応から、私のように結構点数を採れた人は多いらしい。
テストの間違いがないかの確認が行われた。間違いがあった生徒は速やかに先生に報告するように言われた。私は特になかったが、数人が先生に間違いを訂正していた。
テストの順位は、来週の月曜日に発表されるようだ。私自身の順位も気になるが、別府えにしや、あのイケメンバカの順位も気になるところである。来週が楽しみである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます