続編~中学校編①~

 私は「幼馴染」という言葉が大嫌いだ。本やマンガ、映画やドラマでも幼馴染という人間関係が出てくる話はたくさんある。


 そして、恋愛もので幼馴染が出てくると、大抵の物語は、幼馴染同士が結局つき合うことになるのだ。主人公に幼馴染がいる場合、少年マンガやスポーツものでも、かなりの確率で、幼馴染同士が最終的に付き合うことになるのだ。例外もあるとは思うが、私はそれがとても嫌だった。


 実際に私にも家が近くで、小さいころからずっと一緒に過ごしてきた幼馴染が存在する。顔と容姿だけはイケメンで、昔から女子からも男子からも人気が高かった。幼馴染としてそれはそれは誇らしかったのだが、いかんせん、頭の出来が最悪だった。


 そのために幼稚園や小学校低学年くらいまでは良かったのだが、それ以降はただのバカでしかなかった。バカでもイケメンの部類に入るので、女子からは中学校に入ってもいまだにモテモテで、男子からも人望が厚いと来ている。


 容姿さえよければ、何でもいいとはこのことである。


 それはさておき、バカということは、その息子の親としては、どうにかして、少しでも学力を伸ばしたいと思うだろう。そこで、目をつけられたのが、私である。



 ただ家が近かったというだけで、私はそのバカの勉強係兼世話係に任命されてしまった。確かに、私は昔から勉強は得意な方だった。社会の歴史上の人物を暗記するのも得意だったし、数学の文章題を解くのも嫌いではなかった。


 大人に頼まれてしまえば、引き受けざるをえない。仕方なく、私は勉強係兼世話係を引き受けることになった。


 世話係というのは、そいつが本当に顔だけということを証明しているようなものだった。顔以外に何も取り柄がなかったのだ。忘れ物は多いし、もはや朝も満足に起きられないと来ている。どうしようもないクズだった。


 世話係と称して、日常生活の全般も面倒を見なければならないということであった。


 それによって、まさか私たちがお似合いカップルだとうわさされることになるとは思ってもいなかった。



 私の容姿もそのバカには劣るが、そんなに悪くはなかった。不細工と言われることもなかったし、容姿のことで悪く言われたことはなかった。そのせいもあるだろう。ただでさえ、面倒を見ることになり、一緒にいることが多くなってしまったので、私とそのバカが二人でいることが多くなったのは事実だ。


 ただ一緒にいるという事実だけで、あることないことうわさは流れていく。



 面倒を引き受け始めたのは、小学校4年生くらいのことだ。それから1年くらいで、私たちは、クラス内はもちろん、学年内では知らない人はいないというほど有名な幼馴染カップルとなってしまった。先生もそのうわさを信じてしまい、ことあるごとに私たちをからかってくるようになった。



 意味がわからない。そもそも、隣に住んでいる男とは、ただ面倒を見ているだけで、例えれば、金持ちのボンボンとそれに仕えるメイドみたいなものだ。実際にそんなことは決してないのだが、イメージはそんな感じだ。


 こちらは仕事して一緒にいるのであって、バカの親に頼まなれなければ、こんな奴の面倒は見たくもないというのが本音である。


 私の男子の理想はこんなイケメンバカでは決してない。確かに顔はイケメンの方が好みだが、中身が伴っていないイケメンバカは論外である。いくらイケメンでも、バカはしょせんバカなので、内面のバカさ加減が容姿にも反映されて、どうにも好きになることができない。



 それからというもの、私は幼馴染という言葉も、それに関連する内容の話は生理的に受け付けなくなってしまった。あらすじを見るだけでも吐き気が出そうである。



 話の中で、よく転校生などのよそ者が幼馴染の仲を裂こうと出てくることがある。そして、彼らはただの、幼馴染たちのつき合うための一歩を与えるに過ぎない、かませの存在でしか扱われることはない。



 だからこそ、中学校に入って、転校生というものが私のクラスにやってきたときに願ってしまった。



「願わくば、私とイケメンバカの仲を修復不能なくらいぶっ壊してくれないか。」

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