16

 事件の後日談を話すとしよう。クラスの上履きだが、さすがにゴミ箱に捨ててしまうのはもったいなかったので、無難な隠し場所として、クラスの隣にある今は使われていない空き教室のロッカーに入れておくことにした。


 隠すだけでは物足りないと思ったので、ご丁寧に一人一人の上靴に画びょうを一つずつ仕込むことにした。見つかってすぐに履いてしまったら痛いだろうが、確認すればすぐにわかるので、構わないだろう。


 作品についてだが、それは当日前から準備していた。さすがに一気に作品を外して破いていくのは重労働である。少しずつ抜いていって、最後にはずして破くことにした。


 ボイスレコーダーを回収したので、犯人はきっと私だとわからないだろう。それに、クラスのスクールカースト上位の女が自分の幼馴染を犯人だと言い張る限り、私が犯人になることはないだろう。



 しかし、予想は甘かった。予想外に男のことを好きだった女子がいたようだ。逆恨みのように、私が告白を断ったせいで、男は犯人になってしまった。告白されたのにどうして断ったのか。女子の数人に取り囲まれてしまった。場所は玄関前の廊下である。


「そもそも、私は告白はしていません。告白したのはのぞむくんですよ。れいさんがのぞむくんを好きなことは知っていたので、れいさんのためにも告白を断るしかなかった。」


 理由を説明して、さらに重要なことを私は彼女たちに告げた。彼女たちの行動が読めてしまったからだ。


「別に断った理由はどうだっていいでしょう。さて、私に怪我でも負わせたら、やばいことくらいわかっているでしょう。」


「そんなの関係ない。だって、のぞむとれいがかわいそすぎる。」


 さて、どうしたらいいだろうか。大声を出して助けを呼ぶか。このままおとなしく、暴力を受けてしまおうか。痛いのはまっぴらごめんであるのだが。



「ピー。ピー。火災が発生しました。火災が発生しました。」


 私はためらうことなく、非常ボタンをたたき割った。ちょうどそこにあったので、押すことにした。そもそも、私が今更この学校で何をしようが、問題はない。どうせ転校してしまうので、多少変な行動をとってもいいだろう。



 突然の音に驚いた女子たちはちりちりにその場から離れていった。最後に一人取り残された私も、何食わぬ顔で家に帰ることにした。




 私は無事に転校することができた。その後の話だが、どうやらあの幼馴染のバカップルは完全に別れたようだ。


 お別れ会の後に男が女に強く問い詰めて、女が素直に私にやられたと白状したしたようだ。しかし、私は普段の態度からそのようなことができるような女ではないと思い込んでいたようだ。


 お前が俺とえにしが仲が良かったから嫉妬したのだろう、といって信じてもらえなかったようだ。それにブチ切れた女はつい男にカッターを向けてしまった。


 カッターを男に刺したようだ。男の腹に刺さり、男は重傷。傷害事件沙汰で警察の介入があると思うのだが、事件は隠ぺいされて、ニュースになることはなかった。


 男は女性恐怖症になり、女は精神を病んでしまったようだ。ざまあみろである。担任もこんなことが起こればとばっちりを食っているに違いない。


「そういうことになっているみたい。」


 事件の概要を話してくれたのは、女の取り巻きの一人だった。なぜか、私のことが気に入ったようで、仲良くなった。転校してからもこうして電話で話すような仲である。



 私を馬鹿にするからである。ざまあみろである。




 この時のやり返した感じがすごい達成感にあふれるものだったので、つい癖になってしまった。


 幼馴染という長年の関係がこうも簡単に壊れてしまうなんて、興味深いことだ。それ以来、手を変え品を変えて、幼馴染が壊れていくさまを見ては楽しむことにしている。


 その途中で、むかついた先生や児童には何かしらの報復をしている。


 そして、今日も私はターゲットを見つけて壊すだけである。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る